恋人やめにせんか?


「もう、恋人はやめにせんか?」


突然の言葉に、私は理解できなかった。何度も何度も雅治が言った言葉を頭の中でぐるぐると反芻させた。え?恋人をやめる?


「え、別れるってこと?」


暫くの沈黙の後、絞り出した自分の声が震えていて情けなかった。私の問いかけに対しての返事はなく、雅治が珍しく真剣な表情でこっちを見ていた。それを見た私は、雅治が冗談ではなく本気で言っているのを感じた。切なくなって、すぐに雅治から視線を外す。ふと、私に距離を詰めて雅治が自分の頬をぽりぽりと掻いた。


「なまえ、左手出してくれんか?」


雅治の意図が全くわからなかったけど、とりあえず左手を雅治の前に出してみた。暫くして、雅治の手と冷たい硬い感触がした。よくよく見ると左手の薬指にはキラキラと光るダイヤモンドのついたシルバーのリング。急な展開に頭が追い付けず、光り続けるそれを見つめていた。


「なまえ、この先からは夫婦として隣におってくれんか?」

「えっ、えっ、これって、えっ?」


思わず、自分の左手と雅治の顔を交互に見る。あれ?さっきまで別れ話してたんじゃなかったっけと困惑した。


「仁王なまえになってほしいんじゃ。」


思いもしなかった言葉に目頭が熱くなる。鼻の奥もつーんと痛む。長い時間かけて、やっと情報処理が終わったところだった。


「こちらこそ、お願いします。」


と笑えば、雅治はいつもどおりプリッと鳴いた。それが可笑しくて、つい雅治と笑い合った。




「何で、今日なの?今日は雅治の誕生日だから、お祝いしよって言ってたのに。あ、お祝いはもちろんするけど。」

「俺の誕生日だからこそじゃよ。」

「雅治の誕生日だから?」

「俺がいちばん欲しかったプレゼントはなまえってことじゃ。」


雅治の誕生日に私が幸せになって、どうするんだと思った。止めようとしても溢れ出てくる涙を雅治は優しく拭き取ってくれた。雅治といて毎日幸せだけど、12月4日の今日は本当にいちばん幸せを感じた。

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