ドアを開ける前、少しだけ、躊躇った。この話をすればきっと母は泣き出してしまうような気がして、ふと、私は母の泣き顔が苦手だったことを思い出したのだ。手を伸ばして慰めるのが最善なのか、見て見ぬふりをするのが最善なのか、何もわからなくなってしまう。
昔から、そうだった。そう一度思うと、何で今までそれを忘れていたのかが分からなくなってしまって、余計に、躊躇った。
それでも結局私がドアを開けたのは、さっき別れた父さんと兄さんの言葉があったからだった。

『どれだけ時間がかかったっていいんだ、今晩は二人で、母さんと二人で、話をしてきなさい。』

『多分時間はかかるだろうけど、難しいだろうけど、母さんにも話してやれよ。ちゃんとお前の言葉で、全部話してこい。俺と父さんに話せたんだからもう大丈夫だろ?』

ひとしきり、30分近くあの後は泣き続けて、結局目を冷やしてからすぐに病院を出た。涙を目尻に残したまま私に向き合って、母との対面を避けるなと言った二人は結局のところ、私がここで葛藤することまで分かっていたのだろう。
別に母さんが嫌いなわけでも、苦手な訳でもないのに、私がこうやって躊躇って逡巡するのを分かっていたのだ。

父さんは絶対に私生活で個性を使わないし、兄さんは自分の個性を信じていないから仕事は最ものこと家族間でのことにも自らの個性を持ち込みたがらない。だから父さんたちが私の迷いを知っていたのは、個性云々の話ではないということになる。
やっぱり私は、わかりやすいのかもしれないとぼんやりと考えてから結局ゆっくりと、ドアを開けた。

「ただいま、母さん。」

逃げる道を消したのも、逃げないことを選んだのも、進むべきだと思ったのも、全部私だ。私が私で選んで、決めて、ここまで来たのだ。だからもう、このドアを開かないだなんて選択肢は無い。
響香と話して、先生に言われて、ここにいる。響香が泣きながら言ってくれた『頑張って』を、先生が優しい声で言ってくれた『頑張れ』を信じたいのだ。だからもう私は、何があってもここから逃げない。母に向き合う。
響香、先生、私『頑張る』から、だから、

「おかえり、三毛。」

だから今だけは、笑顔でいさせて。
微笑んでくれた母は、ずっと変わることの無い私の母だった。
うまく笑えているかは分からないけれど私も母に笑顔を返して、ただいまともう一度言う。これが最後のただいまになるかもしれないことを覚悟して、父さんから言われた絶対に帰ってこいと言う言葉を忘れずに、後ろ手にドアを締めながら家に入った。


「学校はどう?早いわね、もうすぐ卒業でしょう。」

通されたリビングで、寮で生活するようになる前は毎日腰掛けていた椅子に座って、他人行儀に母の入れてくれた紅茶を飲む。父の診察室と一緒でここも何も変わっていないから、懐かしさがこみ上げてくるのはもうしょうがない事だ。カレンダーに大きく赤でマルを付けられたその日付を意味もなく見つめ、それからまた向かいに座る母に目を移して笑う。

「皆と仲良くやってるし、楽しいよ。ヒーローとしての実力も、ついたし。」

「…ねぇ、三毛。」

「ごめんね母さん。私は、卒業してもこっちには帰ってこれない、帰ってこないよ。」

母の言葉を無理に遮ったのは、自分の決意をこれ以上揺らがせないためだ。母は泣く、きっと泣く。でも、それでこの気持ちが揺らいでしまうようならダメなのだ。そんなことは私が一番わかっている。だって私は、こんなことよりももっと大きなことを母に伝えなくてはならないから。
琥珀色の瞳が悲しそうに揺らいで、伏せられて、遠くを見つめて、それから泣きそうに潤んだまま笑った。その一連の動作から目をそらすことができなかったのは多分、罪悪感のせいなのだろう。
ここまで育ててくれた恩を、果たせないまま、私は全てを、終わりにするかもしれない。

「知ってたわ。うん、貴女が雄英に合格した時点でもう、覚悟は決めてたの。…貴女が今日、どんな話をしに帰ってきてくれたのかも、分かってるのよ。ずっと前から、わかってたのよ。」

「わかってた、の?」

自分に言い聞かせるみたいに、納得させるみたいに母さんは囁いて、それからまた泣きそうな顔で笑う。
これまで見たこともないその顔を見ながら、胸がキリキリと痛むのを感じながら、今日は家族の見たことの無い表情をよく見る日だとどこか現実逃避じみたことをしてみる。父さんの辛そうな泣き顔も、兄さんの静かな泣き顔も、この人の泣きそうな笑顔も、これまでに見たことがなかった。
もしも私たちが、どこにでもいるような普通の家族だったら、そんは表情はとっくに見飽きるぐらい、見れていたのだろうか。
そんな意味の無い「もしも」を想像して、鼻の奥がツンとした。だって普通じゃない原因は、ほとんど私みたいなものだ。

「分かってたわ。もちろん、ずっと前からわかってた。だけど今は私の話を聞いて。…貴女に、話さなければならないことだから。」

その時、ぼんやりと、靄がかかったような頭で考えた。
もしかしたら私と母さんって、向き合って話すの、初めてなんじゃないのかな。私たちは今までずっと、他でもないお互いから目をそらしあって過ごしてきたんじゃないのかな。
だったらそれってすごく、すごく、

「多分もう、とっくのとうに気づいてたと思うんだけどね……私は、私はずっと、貴女がヒーローになることに反対だったの。ヒーローは医者よりもずっとずっと忙しいし、危険な仕事だわ。それに三毛は単純な理由だけでヒーローを目指したわけじゃなかったでしょう?」

「…うん。ヒーローを目指して雄英に入れば私は先生と一緒にいれるし、それに…先生を助けるためには私は、ヒーロー科を目指すしかなかった。」

すごく、悲しいことだ。

だって夢の中の私は、家業を継ぐようにして医者になった私は、結局間に合わなかったから。それを知ったのだって、駆けつけられたのだって、もう全部が手遅れになったあとだったから。
でもヒーロー科を目指して励めば、最低でも3年間は一緒にいれるし、もしもの時はこの身を呈して庇うことだって、出来てしまう。無力なよりかはその方が百倍はマシだ。絶対に、その方がいいに決まってる。助けられないのと、助けられるのとじゃ、たとえどれだけ辛かろうと私は絶対に、助けられるほうを選んだだろう。
助けられるほうを、何度だって選んだだろう。

それは言葉にせずとも伝わったのか、母さんはまた辛そうな顔をする。

「そんな理由で耐えられるほど、ヒーロー科が甘くないのは私も、彼処の生徒だったから分かってたわ。それに私は、ヒーローが、大っ嫌いだったの。知ってたでしょ?露骨に態度に出してたでしょうから。」

「うん。」

特定のヒーローが少しでも画面に映る度にぶつ切りにされるテレビ、避けられる街中の広告、家の中ではタブーと化したその名前。そんな露骨に反応されて、気付けないほど私も鈍感ではない。父も兄もいない二人きりの家で、母がアルバムを抱き抱えて何度も泣いていたのを、この目でしっかりと見ていたから。
そんな母が、大嫌いな、大嫌いと言うしかなかったヒーローが教鞭をとると噂になった学校に私を入れたいと思うはずがない。たとえ自らの母校であったとしても、その場にいる教師陣が親しい面子だったとしても、嫌がり、拒絶されるに決まっていたのだ。

「私のヒーローは結局、私じゃなくてこの世界を選んだわ。私一人じゃなく、彼を待つ皆を選んだの。確かに私と一緒にいた時からもう彼はトップヒーローとしての階段を登り始めていたし、どんな見方をしたって私は彼のお荷物に過ぎなかった。…だけど、それでも、隣に居たかったのよ。たとえお荷物にしかなれなくても、彼に負荷をかける結果になってしまったとしても、私は、隣に居たかった。それだけで、いいと思ってた。」

琥珀色の瞳が歪んで、戦慄いて、結局堪えきれずに大粒の涙が零れ落ちていく。伏せられた瞳から零れ落ちるそれはキラキラと光って、でもそれを1番拭って欲しかったはずの人に気づいてもらえることはなく、消えていくのだ。
ボロボロと涙を溢して声もあげずにただただ泣き続ける母さんは今きっと、過去を思い出している。幸せだったはずの過去に浸って、失くしたものに思いを馳せている。
そしてその記憶の中の、思い出の中の母さんを置いていったヒーローは、私もよく知るその人なのだ。密な繋がりのあるクラスメイトだっているけれど、私だって彼に教えを乞うたうちの一人だ。彼に憧れたうちの一人だ。いつだって眩しくて、トップとしてのその堂々としたあり方から私は、一体どれだけ多くのものを学んだんだろう。
私に対しては他の生徒に接するよりも少しだけ優しくて、不器用で、わかりやすい、そんなヒーロー。今だって、引退して2年が経ってしまった今だって、誰からも憧れを抱かれ、好かれる、あの。

「父さんと結婚して、貴女たちが生まれて、…でも私は、まだ、もう何十年もたったのに、あの人を忘れられないでいる。この先もずっと、忘れられそうにもないでいる。……ヒーローになんて、なって欲しくなかった。私はただ、三毛に、幸せになってもらいたかった……それだけで、良かったのよ。」

「母さん。」

その震えた声を遮ったのは、どうしても、言わなければならないと思ったからだ。今ここで、どうしても、これだけは、母さんに伝えなきゃいけない。だってこれを知らなくちゃならないのは私じゃなくて、母さんだ。母さんが知らなくちゃいけないことで、母さんがそれを知らなくちゃ、誰も、報われはしないのだ。
私しか知らない、私だけが知っている、あの人の、秘密。誰もが憧れるヒーローが最後の最後まで隠し続けたたった一つの、秘密。

「母さんの言うヒーローも、忘れられてなんて、ないんだよ。」

「……え?」

見開かれた瞳から、数滴の涙が溢れ落ちた。
これまでに何度も流されてきた、たって1人の人を思った、涙。この涙を見ている時だけは、きっとあの人だってヒーローじゃなくなってしまっていたはずなのだ。たった一人の人間として、母さんに向き合おうとしていたはずなのだ。

「忘れられてなんて、ない。あの人は多分今もずっと、ずっと後悔し続けてる。母さんと一緒に生きられる道があったんじゃないかって、もっと他にも自分にしか出来ないことがあったんじゃないかって…泣かせる以外にも、選択肢があったんじゃないかって。」

全部が全部、言葉にして伝えられた訳では無い。それでもあの人はわかりやすい人だから、どんなことを考えているかなんて簡単にわかってしまうのだ。長い年月がたった今でも母さんにどんな感情を抱いているかなんて、簡単に、手に取るようにして分かってしまったのだ。
母さんが、口元に手を当てて、眉根を寄せて、息を吐き出す。今にも声を上げて泣き出す準備にしか見えないそれに、追い打ちをかけるようにして言葉を連ねることしか出来なかった。

「でもね、それと同じぐらい、母さんの幸せを、今でも願ってる。この先もずっと、あの人は母さんの幸せを願い続けてる。いろんなことを後悔して、父さんを羨んで、それでもやっぱり、母さんが幸せになる道を選べばいいって、今でもずっと思ってるの。」

そうでないのなら、あんなに優しい目で私を見たりしないだろう。あんなに楽しそうに母さんとの思い出を私に話してくれるはずがない。心底愛おしそうに、娘の前で、母さんの名前を呼んだりするはずがないのだ。懐かしむみたいに、慈しむみたいに、あんなに幸せそうに名前を呼んだりするはずがないのだ。そんなの私にだって分かってしまう。だから、あの人はやっぱり、わかりやすい。
娘である私がこんなことを言うのはやっぱりどうかと思うんだけれども、これだけは断言できてしまう。

「あの人はまだ、母さんのことを愛してる。」

きっとこの先も、永遠に。
母さんはとうとう、両手で顔を覆って声を上げて泣き出してしまった。何度も何度もあの人の名前を呼んで、それこそまるで、昔に戻ったみたいに。
結局今だって泣き出してしまった母を見て、何をするのが最善なのかは分からないままだ。手を伸ばすのがいいのか、見て見ぬふりをしてしまうのがいいのか。それでも数時間前、この家の前で考えた苦手だという感情はすっかり無くなってしまっている。本当にすっかり、綺麗に。
きっと私はこの先もずっと、最善を見つけられないままなのだろう思う。最善を見つけられないまま、それでも母が泣く度に、きっと、隣に居たいと思う。一人で泣かせたりせずに、出来れば、同じ空間にいたい。
今は多分、それが最善だろう。


「あのね、母さん。」

「……えぇ。」

「私は、もう今更、母さんが何を言ってくれてもあの人を忘れたり、出来ない。この先の人生であの人、消太さん以上に好きになれる人なんて多分、現れないと思う。でもね、母さん…私多分、ヒーロー科に入ってなくても、ヒーローになることを選ばなくても、同じことを言ったと思うの。」

ようやく落ち着いた母さんに話を切り出して、真っ直ぐにその目を見ながら話をする。誠意を持って、感謝を、今までのそれを全て伝えようと思わなければならない。伝えられない可能性の全てを加味した上で、今、言えることは言ってしまわなければならないのだ。
言えるうちに、出来るうちに、向き合えるうちに、後悔をしないようにしなくてはならない。

「もしも、雄英に通うことになっていなくてもそう言えた?」

「うん。どこに通ってたって、それこそ雄英の普通科に通ってても、留学の道を選んでも、私は先生を好きになった。私は、どんな道を選んでも相澤消太を、好きになった。それだけは、今言いきれること。」

どの道を選んだって、どこに行ったって、何を見たってきっと私は、あの人を好きになった。きっかけは何だって良くて、どこから始まっても良くて、でもきっと、あの人を好きになったはずなのだ。私はそれを、信じている。
そう言い切った私に母さんは少しだけ目尻を下げて、また悲しそうに笑う。私の頑固さを、よく知っているからこその表情だろう。今更何を言ったって私が変わらないことは、分かっているのだ。
だからこそこんな悲しい顔をして、無理に結論をつけて、信じることしか出来ずに私を送り出そうとしてくれている。そんな優しい人なのだ。

「でも私さ、父さんたちと約束したんだよね。」

「約束?」

あの人のために死ねるのであれば、それでいいと思っていた。それ以外に選択肢なんて存在しないと、思ってさえいたのかもしれない。
あの人が生きる世界のために死んで、その礎になれるのであればそれが最善だと、これまで心の奥底で思い続けていたのだ。
でも響香に諭されて、父さんと兄さんと話して、母さんに会って、それは違うと思えた。
あの人のために、あの人の生きる世界のために、私だって、生きようとしなくちゃならない。
あの人と共に生きたいと思う私がいる。あの人と一緒に、夢を叶えることも出来ずに一人になった『私』の分まで生きていきたいと、幸せになりたいと思う私が。今度こそ、最後まで一緒に生きていきたいと思う私が、確かにいるのだ。
だからもう、死にたいなんて、言わないことにした。

「卒業式が終わったら、先生を連れてここに帰ってくるって、約束したの。先生だって最初は渋っても着いてきてくれると思うし、何よりも、私が、私がまた家族に会いたいから。…だから、絶対にまた、帰ってくる。先生も連れて、またここに、帰ってくるよ。」

強ばっていた母さんの顔が、泣きそうだったその顔が、まるで仕方が無いとでも言うかのような笑顔に変わる。それまでと変わらず泣きそうではあったし、一滴だけ涙が頬を伝い落ちてはいったけれど、でも確かに、これまでの笑顔とは違った。
許して、認めて、そんな笑顔だ。
きっと、あの人が大好きだった笑顔。

「絶対、絶対よ。…必ず、二人で帰ってくるの。わかったわね?」

「うん。必ず、二人で帰ってくる。それでちゃんと、母さんがヒーローを大好きって言えるようなヒーローに、なる。……幸せに、なるよ。」

泣きながら、笑って、母さんは私を抱きしめてくれた。




来た道を引き返すようにして、またアーケードの中を歩く。すっかり夜になってしまった商店街はそれでもまだ明るく、店先の人々はみんな笑顔で私の名前を呼び、手を振ってくれた。
ただ一人を、除いて。

「お姉さん。」

「……三毛ちゃん。朝ぶりかな?今日はもう帰っちゃうの?泊まるんだとばっかり思ってたから、」

「お姉さんありがとう。私さ、頑張るから。だから、いつかはお姉さんの話も聞かせて。全部終わってからでいいの、私が、吹っ切れてからでいいからさ。」

話を遮って、声をかけて、そうすれば彼女はゆっくりと振り返りながら瞬きをした。長い睫毛が伏せられる度に影が出来て、どうしてだろう、泣いてないのに、泣いてるように見えてくる。

「…………………優しい、のね。その分だと、私がヒーローを辞めた理由も、聞いてくれそう。」

「聞くよ。いくらでも聞く。たくさん話そう。お互いのことも、たくさん。」

「えぇ。でもそのためには、やらなきゃいけない事があるんでしょ?きちんとやっておいで。後悔なんてしないように、きちんと、自分の気持ちを、伝えておいで。」

「…ありがとう、お姉さん。」

どうしてこの人がこんなふうに悲しい顔をするようになったのか、辛そうに笑うようになったのか、私は何も知らない。きっと兄さんはそれを知っていて、兄さんと私のあいだには明確な線引きがされているのだ。その線を飛び越えることは容易なことではなくて、でも、心の底からその線を飛び越えて、お姉さんを抱きしめたいと思えたのだ。
その気持ちもまた、私がここに帰ってこなければならない理由になる。帰ってきたいと思える理由になる。
1度だけ手を振ってお姉さんは店の奥へと入っていってしまう。その寂しい背中を抱き締めるのも、彼女が誰にも見せようとしない涙を拭ってやるのも、全て私の役目ではないとわかっているのだ。十分すぎるくらい分かっていて、それでも寄り添いたいと思った。だって、お姉さんは私の大切な人なんだから。

お姉さんの店の前を離れてからも商店街のみんなに挨拶をして、手を振って、駅へと向かう。駅の構内でまで私に声をかけて笑いかけてくれる人がいて、なんだかすごく、嬉しかった。帰ってきたいと思う気持ちが強くなる。なぜだか分からないけど、涙だって溢れてきた。
結局母さんにまで、私が先生を思う気持ちは筒抜けだった。私はやっぱりわかりやすくて、気持ちが見た目に出やすいのだろう。この調子だと確実にクラスメイトにだってバレてるし、きっと、本人にだってバレてる。
自分のわかりやすさに呆れながら、目尻に溜まった涙をゴシゴシ拭いとる。泣くのは、今じゃない。今じゃなくて、全部、終わったあとにしよう。これまでにだって涙が枯れるぐらいたくさん泣いてきて、だから今は少しだけ、泣くのはおやすみ。
絶対に先生を死なせたりなんてしない。あの未来を変えられるのは、私だけだ。

私が、この手で、先生を助ける。
先生と生きる、未来のために。

電車に乗りこみながら、確かな決意を胸に残して瞬きをした。


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