僕の癖


 私は、身体の前で両手を握りしめるのが癖だ。
 人と話す時、気がつくと冬でもないのに自分を護るようにぎゅっと胸のあたりで手を握っている。
 手を下ろして人と話そうとすると、自分の前がクリアになってそわそわするのだ。
 今、自分を守ろうとするものは何も無いんだと、人の悪意や敵意が全部突き刺さろうとも何も防げないんだと知らしめているようで。
 こわい――そう、私は他人との間に隔たりが無いことが怖いのだ。
 自分を守るためだなんて言ったけれど、その握られた手が何かを防いでくれたりなんかしないことは分かっている。
 むしろ私が他人にひどいことをしないように制してくれているようにすら思えてきた。
 私は怖い。他人が――他人を傷付けてしまう自分が怖い。
 私と握られた手の間には、がらんどうに見えて私に向けられた敵意が溜まっている。
 嫌われたくない。離れてほしくない。近づかないでほしい。だから嫌われるんだろう。ダメな奴め。
 けれどその一方で、そのかたくなに握りすぎて白くなった手を無理矢理にでも解いてくれるのを待っている自分もいる。
 ねえ、誰か私の手を開いて温めて「大丈夫だよ」って言ってほしい。君の手は傷つけたりなんかしないよって包み込んでほしい。
 ねえ、寒いよ。今日もぎゅっと握った手が鋭く寒い。
 この手は、ナイフだろうか?


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