情絶(じょうぜつ)


 お前には感情が無い、とよく言われる。
 面(おもて)の裏に、感情が見えない、とのこと。
 まあ、その通りなのだからせん方ないけれど。
 喜怒哀楽――他人に対する感情なんて、とうの昔にもう、いない。
 私から産まれていた、あの子供のようにまっすくな感情は、【同じ思考をした】(顔のない)群衆から背を叩かれ、否定されて、私の胎内で無惨にも死んでしまった――いや、私が、殺した。
 感情を殺さないと、生きられなかったのだ。
 人間社会に身を投じるには、私を私たらしめる感情はあまりに異質で、異形だった。
 この異質を淘汰する【カンシ】社会で、私という母体が生きていくためには、この産み出される感情をぐちゃぐちゃに砕いて掻き出すしかなくて。
 それでも、今なお新たな感情を孕み、内側で育む私という私の異質さはどうしようも変えられない。
「自分らしくいていいんだよ」?
 綺麗事を受け入れるには、私は感情を堕しすぎたし、私は普通ではないのだ。
 どうしたらいいというのだろう。
 どうあるのが正しいのだろう。
 どうやったら私の感情を私のまま受け入れてくれるのだろう。
 とは言ってみたけれど、この異質さを、この私を、私は否定しない。私が誰よりも私を受け入れて感情を孕ませる。
 だからきっと、これからも変わらない。
 他人に対する多くの感情を砕いて流して堕ろしていくだろう。それでも、私たる私を、私は決して殺しはしない。
 こんな支離滅裂でちぐはぐな私が――
 ――私は何よりも愛おしい。


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