「ただいま戻りました」
勝った。俺は、ニラ(の臭い)との格闘の末、勝利をもぎ取ったのだ。
その直後、俺の小さな高笑いが響く茶の間に、第三者の声が静かに波打った。今の今までドヤ顔をしていたのに、そう易々と面差しを変えることなんて俺にはできず、反射的にそのまま振り返る。
「……」
「……えっと」
そこに立っていたのはすべからくリセイだった。
先程の台詞からして、本当に今しがた帰って来たのだろう。いつもの袴姿ではなく、着物に羽織姿の彼は少しだけ疲れを滲ませた顔をして、ぱちぱちと瞬きをしてこちらを見つめている。言葉をたごませたリセイは珍しいかもしれない。例えば筆を持ったまま筆を探しているような時でも、それに気がつくと「おや、もう持ってましたね」でさらりと流すような人なのだから。
――まあ、それだけ俺の行動が理解出来なかったということでもあるのだけれど。
リセイは言葉の選別にえらく時間がかかっているようで、チラチラとこちらを見遣っては、いつもの無駄に器用な愛想笑いを浮かべている。
その気遣いをやめてくれ。と強気に突っ込めるほど、現状はよろしくない。俺は薄めた洗剤と布巾を一旦置いて、リセイに向き直った。
「おかえりなさい……リセイさん」
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