ふわり。
道を歩いていると、隣に何かの気配。キュウビはたまにこんな風に気まぐれに現れる。キュウビが私の足元を見て、何かに気づいたように呟いた。
「もうそんな季節か」
「え?」
「綺麗だね」
キュウビの視線の先にはサンダルからのぞく色鮮やかに塗られた私の爪。
「ありがとう。たまにはいいかなと思って」
照れ笑いすると、キュウビも少しだけ目を細めて言った。
「その色……」
「あっ、あのね、キュウビっぽいなと思って、つい買っちゃって……」
色の話をされて、つい聞かれてもいないことを喋ってしまった。キュウビは一瞬きょとんとした顔をして、クククと笑い始める。
「なんでそんな可愛いことするかなぁ、キミは」
ひとしきり笑った後、目元に笑みを浮かべたままキュウビは言った。
「そんなに可愛いことされたら、ボクにさらわれても文句は言えないねェ」
「……!」
ふわりと体が宙に浮かぶ感覚。キュウビに抱き抱えられて、空に浮かんでいるのだと気づいて慌ててキュウビにぎゅっとしがみつく。
「心配しなくても、落としたりしませんよ」
クスクスとキュウビが笑う。
「それは、そうかもしれないけど……」
「まあ、ボクは嬉しいからいいけどね」
キュウビは楽しそうに目を細めて言った。ふいに目の前が煙のようなものに包まれて、さっきまで空中にいたはずなのに、気づけばベッドの上にとさりと押し倒される。
「えっ? ちょ、ちょっと……」
たくさん可愛がってあげる、と言ってキュウビはにっこりと微笑んだ。


end