公園のベンチに座っていると、子どもたちの賑やかな声が聞こえてくる。
ふいに、遊んでいる子どもたちとは別に一人で何かと戦っているような子どもが目に入った。
ドレッドヘアーに和装と、かなり目立つ容姿をしている少年である。
と、ふらふらと少年が名前の座っているベンチへと歩いてくる。
「ふぁー、なんか眠くなってきた……」
少年は名前の隣に座ると、そのまま名前の膝に倒れこむようにして眠り始めてしまった。
「えっ、えぇっ……」
本格的に眠りに入った寝息を横に、名前は困ったように視線を彷徨わせる。
ーー誰か、少年の親や友達はいないのだろうか。
しかし、一人で遊んでいたところを見ると、それも希望が薄い。
諦めたようにため息を吐いて、名前は少年の寝顔を眺める。
すぐに起きるだろう、そう思い名前は少年が起きるのを待つことにした。


どれくらいそうしていただろうか。
日が暮れ始め、公園からは人が一人、また一人と少なくなっていく。
(さすがに起こしたほうがいいかな)
などと思い始めた頃、パチリと少年の目が開いた。
「ふぁーあ、よく寝たぜ。ん?」
ターコイズブルーの瞳は名前を捉えると、パチパチと瞬きをする。
名前が声をかける前に、少年が勢いよく喋り出す。
「すげーよく眠れた! 頭もあんまり痛くねぇし! これ、すげーな、なに!?」
少年が名前の膝を指差して言う。
「え? ひ、ひざまくら……?」
「ひざまくら、スゲー!」
少年は感動したようにキラキラと目を輝かせている。
「またひざまくらしてくれよ! なっ!」
「う、うん……!」
勢いに押されて、名前が頷くと、少年は嬉しそうに笑った。
「名前はなんていうんだ? 俺様は、不動明王ボーイ!」
誇らしげに自分の名を言う少年に、名前は自分の名前を返す。
「名前かー。よし、覚えた! 俺様の名前は覚えたか?」
「えっと……」
(不動明王ボーイ、って本名……なのかな)
「不動くん、でもいい?」
少し略した名前を言うと、少年はキョトンとした顔をした後、笑って言った。
「いいな、それ! 名前専用な!」
少年はまた楽しそうに笑うと、またなー!と言いながら公園を走って出ていってしまった。
手を振りながら少年を見送った後、名前は暫しぼんやりとする。
(嵐のような子だったな……)