「あれ、不動明王ボーイは?」
アキノリが言った。
妖怪探偵団の事務所にはいつものメンバーと、妖怪たち。
アキノリの質問にウィスパーが返事を返す。
「ああ、公園にいるんじゃないウィスかね」
「公園?」
首をかしげるアキノリに、ウィスパーが言った。
「ええ。最近は公園でとある女性にひざまくらをしてもらうのがお気に入りのようで」
ウィスパーの言葉にナツメが身を乗り出す。
「ひざまくら? しかも女の人に? ……ねぇねぇ、ちょっと見に行ってみない?」
ナツメが興味津々といった感じで目を光らせる。
アキノリといえばーーひざまくらと聞いてアヤメにひざまくらをしてもらう妄想に夢中でナツメの言葉は耳に入っていなかった。
「いいんじゃないか」
トウマの同意で、じゃあ決定、と妖怪探偵団のメンバーは急遽公園へと向かうのだった。


「本当にひざまくらしてもらってる……」
公園の木の後ろで、ナツメが呟いた。
不動明王ボーイは噂に違わず、すやすやと気持ちよさそうに女性のひざまくらの上で眠っている。
ウィスパーがため息をついて言った。
「あの方はお優しいというか、お人好しというか」
「あっ、起きたみたい」
ナツメたちは隠れながらも観察を続ける。
アキノリがあっ、と声を出す。
「チョコボー食べだしたな。まあ、いつものことだけど」
トウマが言った。
「いや、チョコボーを渡してるぞ」
「不動明王ボーイが?」
トウマの指摘に、アキノリが驚いた声を上げる。
「本当に仲がいいんだ〜」
ナツメが感嘆したように言うと、アヤメがお似合いだね、と微笑んだ。
「まあ、不動明王ボーイとあんな風に過ごせるのは貴重な存在だよな」
アキノリが遠い目をしながら呟くのを、不動明王ボーイの破天荒な振る舞いを思い出しながら、うんうん、と皆で頷く。
「じゃあ、そろそろ帰るか。うすらぬらに何か書き込みあるかもしれないしな」
「ないない、ないって」
アキノリの言葉にケースケが嫌そうに首を振ると、ナツメがからかうように笑った。
「見る前から怖がってどうすんのよ」
「こ、怖がってなんかないし!」


「どうかした?」
遠いところを見ている不動明王に名前が尋ねると、不動明王はううん、と首をかしげた。
「まあいいや! 名前、チョコボーもう食わねぇのか?」
「不動くんはよく食べるね……」
不動明王の食べっぷりに名前は見ているだけで胸焼けがしそうになる。
が、美味しそうに食べている姿は見ているとなんだか和むのだった。
「チョコボー先輩が教えてくれたんだ! チョコボー先輩はすげーんだぜ! チョコボーくれるし!」
(チョコボー先輩ってどんな人なんだろ……)
ニコニコと笑う不動明王に相槌を打ちながら名前はそんなことを考えていた。