「トウマ、どこ行くんだ?」
道を歩きながら、不動明王ボーイがトウマに尋ねる。
「ホワイトデーのお返しを買いに行くんだ」
「ほわいとでー?」
「バレンタインデーのお返しをする日だよ。先月、不動明王ボーイもチョコボー貰っただろ?」
「おおっ、アレかー。お返ししなきゃいけねぇのか?」
「まあ、そういう文化みたいなものかな」
「ふぅん」
そんな会話をしながら、二人は近くの商業施設の中へと入っていく。
洋菓子店が並ぶフロアには、ホワイトデー向けのお菓子がそこかしこに並べられている。
「トウマは何買うんだ?」
「実はもう決めてるんだ。買ってくるよ」
そう言って、トウマはラッピングされた菓子を手に取り、混み合ったレジへと向かっていった。
「ほえぇ……」
不動明王ボーイは、ずらりと並んだ菓子に興味津々だった。
クッキーにマシュマロにキャンディ等ーー定番のものや少し変わったものなど様々な品が並んでいる。
と、トウマが戻ってきたようだった。
「ーーおまたせ。何か気になるものでもあった?」
「俺様、ここにあるの全部食いたい!」
目をキラキラと輝かせる不動明王ボーイに苦笑しながらトウマは言った。
「それはちょっと無理かな」
えー、と言いながら、不動明王ボーイはトウマの手に持つ手提げ袋を覗き込む。
「何買ったんだ?」
「マシュマロだよ」
「おお、あのふわふわで甘いやつ!」
駄菓子屋で買ったマシュマロの味を思い出して、不動明王ボーイの顔が笑顔になる。
「早く帰って食べようぜ!」
「うん。僕たちの分は自宅用のだけど、味は変わらないと思う」
包装されていないマシュマロの袋を不動明王ボーイに見せながら、トウマが言った。


end