リズベット・マルティン レイヴン





「護り人の集い」 「天を射る矢」

05

レイヴン、貴方って顔は良いのに勿体無い性格してるわよね。いやホントに。


(拳を振るい、脚で薙ぐ。少数で出来うる限りの足止めをすべく、ひとつひとつの一撃は重く必殺に近い。生き物の急所なぞ哺乳類なれば似たり寄ったり。高く蹴り上げ、あるいは殴られ傷つけられた内側から吐き出された血を浴びることも厭わず、白い衣を紅に染めて戦う瞳はひやりと鋭く冷たく細められ、普段の明るく明朗な色は冷徹に秘されていた。そこへ、背後に迫る咆哮と気配に気が付いた瞬間、片足を軸にして振り返ろう――と、身体を捻ったところでほんの一瞬、目を奪われたように呆けた顔になったのは暗がりに灯る明星が光を強めて存在を示されたから。真っ先に飛び込んできた男は相も変わらず飄々と胡散臭いばかりだったが、隙のない振る舞いと地位は腕の良さを裏付ける大きな根拠となる。ほんの一瞬だけ浮かべた無防備な貌を仕舞い込み、頼もしくもイマイチ信用ならない男の優しさをただ一言で受け止める。「えぇ、言われなくとも。任せたわよ」まるで流星のように駆け抜け飛び込んで行った幼馴染の後へ続いて蹴散らすこと暫く。負った負傷はかすり傷程度だ、先ほどと変わらない力を大いに振るってこの一波乱を乗り越えた後、息のある者を救助し大急ぎで撤退した先は最寄りのダングレストである。聞けば彼らはこれから去ろうと言うところだったらしく、かといってなかなかの大事に巻き込んでしまった手前、このまま出立させるのは酷だろう。「この度の救援に礼をさせてほしい」と街へ戻る道すがらに己から提案させてもらった。その内容は、「今日一晩の宿の用意と食事」。至ってシンプル。宿については彼らが普段利用している場所に変わりはないが一人一人に個室を用意し、片や食事と称して用意したものの実態は――凜々の明星一行と弊ギルド合同のちょっとした酒宴だった。)今晩の食事代はぜーーんぶ弊ギルドが受け持ちます!さぁ、じゃんじゃん食べて遠慮なく飲んでください!(「面倒だからお前が行ってきなさい」そう言った父に代わって良く通る声で宣言された女の短い挨拶は、貸し切られた食事処で高らかに響く。その出で立ちは血濡れのチャイナ服からVネックの水色を基調としたワンピースに変わり、ハーフアップを下ろしてゆったりと結わえてサイドへ流した完全なオフスタイルだ。頬や腕、脚に負っていた傷はすっかりと治癒術で直してしまい、その肌は綺麗なものである。――座する席はあるが各々が好きに移動しては料理を摘まんで杯を傾ける様は大層にぎやかだが、どうしたって男所帯になりがちなギルドの都合上、大半の男衆はクリティア美女や可憐な少女たちにメロメロである。「女の子にちょっかいだすのは程々にしときなさいよ」と男衆に釘を刺しつつ、まず声を掛けようと思っていた人の姿を探し――「レイヴン」と名を呼んだ。)今日はありがと。レイヴンが話聞いてくれたんだってね。お陰で全滅は免れたわ。(大人しく、年相応に微笑む。片手に持った酒には手を付けていないのか、さっぱり酔った素振りを見せない。)いの一番に駆けつけてくれたのが貴方だったってのはちょっと驚いたけど。どうも私のことを訪ねてくれてたみたいだけど、その件があったからかしら。(こうして声を掛けたのは、改めて駆けつけてくれたことへの礼と、それからギルドの拠点へ帰還した折、彼へ己の不在を伝えた者から聞いた話を聞いていたから。用件までは存じ上げないが、わざわざ訪ねてくれたのだ。となれば、緩く首を傾けて。)で、その埋め合わせということで一晩……は長すぎか。この食事の席でのお相手、させてもらおうかと思うんだけどどう?(男を籠絡させよう、その気にさせて情報を引き出そう、そんな思惑などまったくない。純粋に、ただ時間を共にしようと訴える双眸を柔く細めて返答を待つ姿は年相応ながらに目上の大人に懐く無邪気さの色も滲む。イマイチ信用ならない、しかしだからと言って嫌いという訳でもないのだから。そして彼がこの誘いを受けてくれたなら、きっと軽口を叩き合いながら和気あいあいと酒でも傾けるのかもしれない。断られたところでそれはそれ、ほどほどに会話をして余所へ行くつもりだが、果たして彼の返答は?)

おっとー?顔の評価が高いのは嬉しいけど複雑なやつねぇ。

 

(いつも明るく年相応な彼女の戦闘姿―冷たさにはゾクリと肌が粟立つ感覚を覚える。初めてみるであろうその姿、血で染まった衣は何だか彼女に不釣りあいで、ほんの一瞬でも見られたその無防備な姿が見られてホッとしたのも束の間。気を引き締めて飛び込んでいった彼らを援護しながら魔物を蹴散らして―なんとかこの共闘を終え、怪我をしている彼女の仲間に手を貸し撤退してきた先のダングレスト。女性陣+犬は重傷であった2人を治癒し休ませるべく先にダングレストへ運び戻っていたようで、連れて帰った怪我人には慌てて治癒術をかけてくれた。そうこうしてひと段落つき、そろそろ発とうかとした所彼女からの提案を聞き「気にするな」と「大丈夫です」と遠慮しようとする面々を他所に、)へ〜、いいんじゃない?そんなに急ぎじゃなかったし俺様ももうちょいダングレストに居たかったのよねー。この事がなくても連日魔物と戦ってたんだし此処はリズベットちゃんトコに甘えさせてもらえば。(俺様は嬉しいし!とへらり、笑みを浮かべながら告げたのなら、「でも」、やら何やら聞こえるが結果彼女の提案に甘える事となり、「ありがとう、よろしくねー」なんてひらひらと手を振るのか。―いつも何人かまとめての同室であるからか一人一人に個室が用意されていると聞き感動しているメンバー。そして用意された食事―及び酒宴には皆それぞれ盛り上がりを見せている。)お、何々!「護り人の集い」持ちなワケ?じゃあ俺様いっぱい食べちゃおうかねぇ(彼女の短くもよく通る声に近くに居た彼女の仲間の肩に手をやりそう宣言しながら食事を楽しもうじゃないか。食事が美味しいと笑顔満開に楽しんでいる者、お酒を楽しみながら近くに居るものと談笑をする者、本当にそれぞれだ。―しばらく食事に酒にと楽しんでいればいつの間にか隣に居たものはクリティア美女の元へと吸い寄せられていて「あらら、おっさんいつの間に振られてたわ」なんて一人ごちていれば、呼ばれた名。振り返れば思っていた人物がそこに居て手をひらりと挙げたのなら、)やっほ、リズベットちゃん。いいんだよ、むしろ結果的にはこっちの方が良い思いさせてもらってんだから!…本当、間に合ってよかった。(そう、安心したように笑みを浮かべたのなら、食事楽しませてもらってるよーなんて空のお皿や杯を見せつつ、)んん?…あーそうね。そう、ダングレストに丁度寄ったから友人に挨拶でもと思った訳よ。(どうやらあの者は己が寄った事を彼女に伝えてくれたらしい。急な要件ではなかったためになんだか少し気恥ずかしさを抱えてしまうのだけれど、ぽりぽりと人差し指で頬を掻いたのなら、―彼女からの申し出には思わずきょとりと目を丸くさせ、)…へ、…あ。、うん、俺は一晩でも嬉しいけどね…うん、ありがとう、じゃあリズベットちゃんお願いしてもいい?そしたらさ、そしたら…俺様の目的も達成されるんだ。(「可愛らしい知人と食事をとる」その目的がまさかこの場で達成できるなんてなーなんて嬉し気に瞳を細めた。この達成の意味に訪ねた理由を彼女が察したかは分からないけれど、それでも今は、この食事の席だけでも彼女を独り占めさせてもらおうか。他愛もない、楽しい彼女との食事会を―。話したげにそわそわしている幼馴染くん達にはお預けを。)