飛永雛 赤葦京治





ちびっこマネージャー 冷静な副主将セッター

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赤葦先輩、熱中症には気を付けて下さいね?


(本校で行われる合宿初日。烏野の一年マネと梟谷のチビッ子マネ兼音駒のチビッ子お手伝いの遣り取りは、他校の先輩マネさんたちや部員たちにヒヨッコの集いのように見えたかも知れない。ちょっと長めの休憩時間を切り上げたのは、幾つかあるウォータージャグの残量をチェックする為だ。休憩に入る前にもチェックはしたが、此れだけの人数が居るのだからドリンクの量が減っていても何ら可笑しくはない。部員たちに配っているボトルは問題無い為、ジャグをひとつひとつチェックしては残り僅かとなっている其れを教官室まで運び、其処でドリンク用の粉と水、氷等を計算しつつ新たに追加していく――少し以上に重たくなったジャグの取っ手を両手で持ち、設置されていた場所に戻せば其処には本校の、梟谷のメンバーが休憩していたものだからキツイ練習を熟す彼等に労いの言葉を掛けるのだが、返って来たのは飛永の裏切り者!という、何とも心に刺さるものだった。発生源が主将であった為、其の発言の本気度が低いことは誰が聞いても明らかであったのは、救いであるように思えて。)裏切ってませんー。音駒さんはうちと違ってマネージャーが居ないんですから、お手伝いに行くのは普通じゃないですか。合宿に参加する以上、学校関係無くサポートはしていきたいですし。(ジャグやコップをセットしながら言い返していくのだが、梟谷主将の意識は彼方此方に向くのはいつものこと。ぶーぶー言いながらも次の瞬間には他校の部員たちとふざけ合うものだから、小さく息を吐いては此の場を離れていない副主将を見遣って。)―……赤葦先輩。水分は、足りてます?ドリンク、足して来たのでいつでも補給して下さいね。あ、あと、赤葦先輩なら大丈夫だと思うんですけど……私、裏切ってませんから。梟谷、一筋ですから……音駒さんや、烏野さんや、他校のプレイも見ていて惹き込まれますが…私は、梟谷のプレイが一番好きですから。裏切りなんて本当に有り得ないので、其れだけ、分かってて貰えると嬉しいです。(主将に泣き真似されて裏切り者!と言われるのはちょっと心に来るものがあるけれど、本気じゃないのが分かるから未だ助かる。でも、他の部員が――大丈夫だと思っていても、分かっていても、副主将にちょっとでもそんな風に思われたら本気で落ち込む自信がある。其れ故、控え目ではあるけれど飛永にとって何が一番であるか。本校のバレーにどれだけ惹き込まれているのかを告げるとしよう。彼の返事次第では、飛永の表情は緩々と緩まるし、一気に暗くもなる筈。どのような流れになったとしても、話題は合宿の練習内容から部員の様子へと自然に変わっていき、飛永が梟谷を離れていた間の情報を確りと埋めていく。休憩が終わりを迎える間際「…其れじゃ、そろそろ音駒さんの方に戻りますね。赤葦先輩、色々と頑張って下さい。私も頑張ります。」握り拳を作って笑顔でそう告げては、合宿の間の持ち場である音駒さんたちのところへ向かうとしよう。途中、梟谷の主将や先輩方から頑張って来いよー!と、笑顔で声援を送られたなら、此方も笑顔で元気よく返事をするのだろう。此の遣り取りで分かるのは、彼等は誰一人として飛永が裏切り者だと思っていないこと。先程の心の痛みは、いとも簡単に消え去ってくれた。)

うん、十分に気を付けるよ。だから…飛永も気を付けてね。

 

(合同合宿初日。小さなマネージャーは残念な事に他校の手伝いをする事となり、なんでだよー!なんて冗談交じりに反発している部員たち。そんな彼らを「はいはい、もう俺たちも練習しますよ」なんて諫めたものだ。それから練習や試合を行ったりと充実した合宿内容に疲れはもちろん感じるものの、楽しさもしっかり感じられているものだから自分も大概バレー馬鹿の一員だな、なんて思ったりもして。楽しくも厳しい練習試合等を何度か繰り返し行いこれから長めの休憩をとるとの事。―休憩時間には遠目ではあったが烏野の小さなマネージャーと共に話をしているらしい彼女の姿が見られて何だかほのぼのと和んでしまったことは秘密にしておこう。自分たちも集まってそれぞれ水分補給をしたり柔軟をこなしたりと各々が時間を過ごしているために、自分もタオルで汗を拭きながら水分を摂っていれば、ジャグを設置された場所に戻していた彼女の姿に気付いて目を細めたのなら、)飛永もお疲れ様。(そう声を掛けようか。すると主将の口から出た「裏切り者!」なんて言葉には、はああ、と深いため息を吐き全くこの人は…と呆れたように肩を竦めるのだけれど、彼女と主将のやり取りを聞きながらクスクスと楽しげに笑みを浮かべた。彼女は真面目で一生懸命であることは知っているし、何より梟谷を裏切っていない事なんてとうに分かっている。それは自身だけでなく、だ。―どうやらぶーぶー言いながらも主将は他校の部員に絡みふざけ出した様子でその姿を見送ろう。そして彼女へと視線を合わせて、)…うん、まだ平気、ありがとう。飛永も休める時に休んどきなよ。飛永、真面目で気配りやだから、なんでも率先して一人でやりそうで心配ではあるんだよね。(手に持っていたボトルを振ってまだ入っている事をアピールしたのなら、誰よりも一生懸命な彼女に二言程告げようか。それから続く言葉に一回、二回と瞬きをして、ふっと柔らかな表情を浮かべたのならば、)ん、そうだね。他校の手伝いに行っても梟谷一筋であってほしいとは思ってたよ。でも、そうか……なら、よそ見できないくらいに俺らももっと頑張らないとね。一番なんて、告白してもらった事だし。(ぽんっと軽く彼女の肩を叩いたのなら、「飛永が裏切りなんてしないって、分かってるよ。でも、欲張らせてね。」と楽しげに揶揄う様に告げてみせた。彼女がこの梟谷が好きだということはとうに分かりきっている事で、それは皆も一緒でわかっているのだから。―彼女の表情の変化には安心するようにもう一度告げて、情報を埋めていくようにと梟谷の話をしていくのか。主に主将の合同合宿で他校の部員とも練習できるというテンションの上がりっぷりへの愚痴も零すことになるのだけれど。楽しくも確りと情報を話すことが出来たのならあっという間に休憩が終わりを迎える時間だ。「了解。飛永も体気を付けて、…頑張って。」その笑顔に釣られるように自身も表情緩めたのなら手をひらりと振って彼女を見送るつもりで。聞こえた先輩方の声と元気な声に、再度口に付けたドリンクの口許はどこか緩んでいる事にきっと誰も気づく事はないだろう。)