麦 皆本金吾





素直になれないお姉ちゃん 泣き虫弟

06

坊ちゃまは本当に、飽きのこない日常を送っておられますね?


(あれからしばらく、舗装された道を歩いて、領地の境目にある道祖神の前を越えて、数日の宿場町での一夜か、あるいは野宿かを終えて、たどり着いたのは忍術学園近くにある町である。自分に比べて休憩するときにも気力体力を保っている二人に鋭い目で絶対に負けないんですからねと無言の決意表明をしたりもしていたが、それはさておくとして、)坊ちゃま、こちらは?…はあ、ご友人の…?(直接忍術学園まで行くのかと思えば町に立ち寄ったことにこ首を傾げて、そしてこの町で友達と合流してから学園に向かうらしいと納得した。なるほどそういうこともあるのか、と。納得はしたのだけれど、あれよあれよと集まる生徒たちに見知らぬ顔。坊ちゃまからの話がなければ目を白黒とさせていたのかもしれないが、そこは強気で意地っ張りの乳姉弟。軽やかに笑いながらあいさつを交わして着々と名前を憶えて、くのいち教室志望だなんて知られたときには旅をしてきた二人同様に驚かれることも多いだろうからそれがちょこっとおかしくなったりもしていて。やがて合流して、じょろじょろと一年は組たちと連れたって歩く中、老人の行き倒れを発見し。こそこそとする年下の坊ちゃまのクラスメイト曰く、面倒ごとのお約束だ、と。)…つくづく思いますけれど、坊ちゃま方は飽きない日常を送っていらっしゃるようで。(お約束、とまで言われるほどに面倒ごとや厄介ごとに巻き込まれているのか、と思えば若干の苦みが宿るくらいは許してほしい。スルーを決め込んだところで結局はあの手この手で渦中へと巻き込まれることは少し予測はしていたけれど、何とも賑やかで騒々しくてどきどきする。これが彼からいつも聞く冒険譚を体験した時の効用だろうか。忍者のことなんて何も知らない小娘ではあるけれど、女装して山賊の気を引き付ける役くらいはできるはずだ。れっきとした女であるし、泣きまねをはじめとして演技なんて得意中の得意なのだから。たった一つのその役割は誰にもケチがつけられないように完ぺきにこなして、忍者の卵たちに同行しながら、彼を見てふふんと笑った。)どうです?坊ちゃま、麦にも素質、感じました?坊ちゃまには負けませんからね、麦の成長をお楽しみになさってくださいな。(そんな風に悪戯に笑った。生き生きとした顔は、道中に同行する楽しさとはまた違ったそれ。将来を夢見て、勝ち気な娘は朗々と。)

うん、毎日すっごく楽しいんだよ!怒られたりすることもあるけど…。

 

(茶屋で姉に級友があれやこれやと話している事に気がついて慌てて止めて暫く、忍術学園までの道のりを級友とそして姉と一緒に歩いて時には宿場町で、時には野宿で過ごしたりなんてしていつもよりは少し長く、けれど楽しく辿り着いたのは忍術学園近くの見慣れた町だ。ここまで来たのならもう少しで忍術学園だ、と同級と笑いあいキョロキョロと辺りを見渡そう。首を傾げた彼女には、素直にこの町で友達と合流することとそうして学園に向かうことを話したのならば改めて町を歩きながら友達探しである、けれどそんなに歩かずしてすぐに出会えた友達たちに嬉しそうに駆け寄るのか。)なんか久しぶりー!元気だった?あ、ごめんごめん麦姉紹介するよ!(手を大きく降って彼女に呼び掛けたのならば一人一人紹介していくつもりで。次々に集っていくクラスメイトたちを姉に紹介したり皆に丁寧に姉の事を紹介したりとして彼女がくのいち教室志望だと知れば自分たち同様驚きの声が上がったときは共にここまで歩いてきた級友と「だよね〜」と密かに笑いあった。そうして一年は組が集まったのならば今度こそ忍術学園へと歩を進める事となるのだけれど、そこはやはり一年は組か。ただ向かうだけに事足りず、行き倒れた老人を発見しこそこそと移動し始める。いつもの事ながら面倒事というものである。)…はは、飽きないというか…勝手に舞い込んでくると言うか巻き込まれるというか…(なんて何故だか照れ臭そうにへへへと笑ってみせた後、なんやかんやと面倒事へと巻き込まれるのはもうお約束であり致し方ない事か。バタバタと騒がしく過ぎていく中でいつもと違うのは彼女の存在―山賊が相手だ、何が起こるかはわからない。自分たちだけならばなんとか逃げ回り続けられるだろうけれど、彼女の体力がそして怪我をしないかが心配で気にかけたその時だ、…山賊の気を引くためにか泣き真似をする彼女。怯んだ山賊を前に皆走り出すのだけれど咄嗟に掴んだ彼女の腕を引っ張りながら自分も走り出そうか。―彼女の体力が尽きる前になんとか山賊からも逃げ切りきっと後は学園へと向かうだけ、か。腕を離したのなら一度むすりと顔を歪ませ、)麦姉、正直助かったけど…今の麦姉はまだくのいち志望でくのいちじゃないんだよ?だから、あんまり無茶しないでほしい…んだけど…、素質ありすぎだってば。(歪ませた顔は、彼女の笑顔を見て途端に楽しそうに「彼女らしい」と笑って見せた。これから見ることになるであろう彼女の成長ぶりを想像しては怖くなりながら真っ直ぐに前を見据えよう。忍術学園までは、後―。)