飛永雛 赤葦京治
ちびっこマネージャー 冷静な副主将セッター
20
…赤葦先輩、質問です。寝癖は……直す派?其れとも、放置派?
(音駒の部員達と賑わう食堂に赴き、彼等と別れて向かうのは厨房だ。朝食提供組であるマネ達に加わり、昨夜の夕食時の流れでスムーズに食事を提供していくことになるだろう。マネ達が朝食を頂くのは部員達が食事を終え、練習が始まるまでのまったりとした時間帯で――初日から有難いことにググッと仲良くなった烏野の一年マネちゃんと、他のマネさん達と一緒に朝食を頂いては、一息吐いた後に溢れ返った洗い物を片付けていくことになろうか。食堂内に設置されているウォーターサーバーの横に洗い終えたコップを並べていくのだが、部員達が体育館へと向かい出したなら「いってらっしゃい、今日も頑張って下さいね。」と、表情を緩めて見送るとしよう。マネ達は未だ来ないの?なんて問いには、片付けが終わったら直ぐに向かいます。と、笑顔で返すのだ。コップを並び終えて厨房へと戻る際、梟谷のメンバーが食堂を出ようと席を立ったなら先ほどと同じ言葉を彼等に送るのだけれど、最後尾を歩くセッター、副主将の柔らかそうな髪、後ろ髪の一房が可愛らしくもぴょこん!と、可笑しな方向にはねていることに気付いたなら、)あ……ああ、赤葦先輩、先輩、ちょっとだけ待って、待って下さい。(ちょこっと慌てた様子で副主将が纏う練習着の裾を軽く引っ張ったなら、其のことで彼が歩みを止めてくれたなら焦りながらも引き留めたことへの謝罪を発しては、)えっと、あの、もしかしたら、先輩は気にしないのかも知れませんが……あのですね、後ろの髪が、ちょこっと…ぴょこんって、ぴょーん……って、はねてるんです。えっと、直します?自然に任せるなら、其れでも良いんですけど……多分、先輩方に見付かったら、ちょっとだけでも、揶揄われると思うんです。木兎先輩とか木葉先輩とか、猿杙先輩とか……黒尾さんに見つかったら、多分、絶対、仲間認定されると思うんですけど。(此れから彼に襲い来るであろう光景をドキドキしながらも説明していけば、彼からの反応を待つとしよう。放置するのであれば大人しく見送る心算ではあるけれど、何だかんだと引き止めてしまうだろう。彼を含め、先輩方の仲の良さは微笑ましいものではあるが、誰か一人が集中砲火を食らうのは如何したってハラハラしてしまうから。彼にちょっとだけ待つように告げては洗い場でハンカチを濡らし、)―…お待たせしました。えっと、ちょっとだけ屈んで貰っても良いです?私、背伸びをしても、先輩の頭には届きそうになくて…。(申し訳無さそうに笑いながらもそう頼み込めば、彼がちょっとでも屈んでくれたならお礼を述べた後、はねてしまった部分を濡れたハンカチで湿らせ、ちょこちょこと直していくとしよう。)私、兄が居るんですけど…兄も時々、先輩みたいに髪をぴょこーん、ってはねさせることがあるんです。其のまま学校に行こうとするから私や母で慌てて引き止めては、こうやって直したりするんですよ。私も、髪が此の長さだから…朝、ぴょこんとはねちゃって…雪絵先輩とかおり先輩が直してくれたんです。―……っと、出来ました。今日もノーペナルティで頑張って下さいね。(笑い話を添えながらも彼の髪を整えては、はねた髪が無事に引っ込んだのを確認した後、笑顔で寝癖が無事に直ったことを告げるとしよう。彼が立ち上がれば視線を自ずと上に向くもので、表情を緩ませ声援らしきものを送れば、体育館へと向かう彼を見送るとしよう。厨房に戻ればマネさん達がにやにやと此方を見ていたのだが、飛永が副主将へとお節介を通り越した何かをやらかしたことに気付いたのは、遅くも其の時であった。)
はい、…えー…直せるところは直すけど…割と早めに諦めて放置しちゃうかもね。
(さっぱりとした朝である。ふあ、と手で口許を覆いながら欠伸を一つ。見回りの後素早く布団へと潜り疲れからかすぐに眠りにつけて、完全にでなくともそれなりに一日の疲れは取り除くことができた訳だけれどそれでも朝早い起床となると自然と零れてしまう欠伸、皆同じような状況らしく誰も揶揄ったりはしないようだ。皆順々にゆっくりと起きだし顔を洗ったり歯を磨いたりと水場で行っていれば小さなマネージャーから笑顔で挨拶されたのち食堂へ向かうことを告げられたのなら、先輩達が元気よく返事をする中歯磨き中にて返事が出来ない為こくりと頷き皆が準備を終えたのならば共に食堂へと足を運ぶのか。―食事の準備をしてくれていたマネージャー達に挨拶をし夕食時と同じくスムーズに食事を提供してもらったのならば感謝の言葉を伝え、朝食も美味しく頂こう。皆で美味しいなーなんて語りながらも終えた食事はあっという間で食器を片付けたのならば練習時間までゆっくりとしてていいとの事で甘えさせてもらおうと食堂で体を休めるべく梟谷のメンバーで今日の練習内容の話をしながら暫く過ごすこととなろうか。少しして体育館へと向かいだす他校の部員たちを見たのなら自分たちもそろそろ体育館へ向かおうかと席を立った。小さな彼女が気付いたように言葉を投げかけてくれたのだから今度は先輩たちと一緒に「行ってきます。」と言葉を投げかけながら頷いて見せよう、先輩たちの頼もしい背中を見ながら追いかけるような形で歩き出した、のだけれど。)―…?ん、何、何…飛永…そんな慌てて、なんかついてる?(引っ張られた練習着に慌てた様子の声に驚き素直に足を止めたのならば、何事かと彼女の方へと顔を半分向けるのだけれど謝罪の言葉に関しては「俺は大丈夫、だけど…」と焦る彼女に何かしてしまっただろうか自分に何があるのだろうかと自分自身もほんの少しの焦りを感じながら返答してみせようか。それから改めてどうしたの?と優しく問いかけて、)……あ、髪はねてる?朝ちゃんと確認してなかったから…俺は特に気にならないんだけど、飛永が気になった位だから結構はねてる、のかな。………、うわ、木兎さんたちだけでもうるさいのに黒尾さんにまで…仲間認定はちょっと………だいぶ、嫌かも。(その時の状況は容易に想像することが出来てしまって心底嫌そうな声を低くさせながら眉を下げ困った顔を見せつつ片手を上にあげそっとはねているであろう箇所を探しながら触れてみようか。どうしようか、少し時間があるのならば濡らしてこようかと考えていたのならば彼女からの言葉にきょとりと目を丸くさせながらも素直に従いここで待つことにしよう。彼女が戻るまではねているであろう場所を抑えてみたわけだけれど一度浮かせてみればはねる髪にため息を一つ吐いては戻ってきた彼女を見遣り、)いや、そんなに待ってない…けど、飛永が直してくれるの?……、うん、じゃあ…お願い。(自分で濡らしてこようかと悩んでいた事もあり濡らしてくれるのは正直有難いし自分がやればきっと必要ないところまで濡らしてしまうのがオチだろう。けれど、なんてちょっとした気恥ずかしさから一度悩んでしまうのだ。それでも彼女は既にハンカチを濡らしてきてくれているのだから、甘えてしまおうかと小さくお礼を言い彼女が直してくれやすいように屈んで。寝癖を直してもらうこと自体には対してはそこまで抵抗はないけれどほんのりと染まる赤色に彼女が気が付いたかは、知る由もないけれど。)…へぇ、飛永お兄さんが居るんだ。っふ、なんか、飛永家って感じがする…悪い意味じゃなくて、…楽しそうなあったかい感じがいいね。お兄さんもこうして直してくれるのが嬉しいのかも、なんて。―飛永が髪の毛はねらせてるとこも見たかったけど…残念。(ふ、と彼女の話に微笑ましく思いながらも触れられる髪の毛の感覚にそっと目を閉じて暫く、髪の毛が直ったことがわかったのならばありがとうとお礼を告げ立ち上がろうか。彼女の声援には、そっと目元を細めて「うん、頑張ってきます。」と力強く応えて再度お礼を告げ片手をひらひらと振ったのなら先に行った先輩たちを追いかけようと体育館へと急いで向かおう。―彼女に直してもらった髪の部分に触れて、またほんの少しの気恥ずかしさに一人はにかんでしまった事はきっと赤葦自身にしか知れない事だろう。)
HOME