八神優理 降谷零
甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司
09
降谷さんはあたしとどのくらい離れてたら寂しくなります?
(なんだかんだで時間が流れるのは速い。あの弁当事件から何か月たっただろうか―。その間に彼には全く会えておらず安否を知るのは自分の同僚のみ。最初の頃は我慢ができていた。彼は忙しい身であるため、会えない時間が長い方が当たり前。今までたびたび会えていたことが奇跡だ。)わかっているんだけどね…寂しい物は寂しいんだもん…(呟く声は誰にも聞かれていないであろう。何度この場所で寂しく泣いた事か―。感情を露わにしてはいけない職場。だけれど―、仕事が終わったこの時間であれば許してもらえるのではないか。誰に許してもらうのか。一人でいれば居るほど負の感情は強くなる一方。ゆっくりと窓際まで移動していき夜空を眺める。)降谷さんは…あたしに会えなくても寂しくないかな?きっと…大丈夫なんだろうな…だって…どこに居たっていっつも人気ものだもんね。女子高生に人気の店員さん!一回くらい会ってみたいなー。なんて、どう思います降谷さん?(いつからだろうか、気配を感じたのは。彼の事だ、自分の好きなタイミングで気配を出すことができるであろう。自分が気づいたのは彼が来てからか、それとも前から居たのか。そんなのは今の彼女にとってどうだっていい。目の前に居る会いたかった人に会えたその喜びをいったいどう伝えよう。)降谷さん、あたしね…降谷さんに会えなかったすっごくすっごく寂しくなっちゃうことに気づきました。風見さんに当たったらすっごく怒られちゃったんです。うるさいとか、鬱陶しいとか言われて。酷いと思いません?(むすっと頬を膨らませて、腕を組んで怒った様子を見せて、)降谷さんは…あたしに会えなくなったら寂しい?…寂しいって思ってくれる?(ゆっくりと彼に近づいていき、じっと見据える。ふわりと笑顔を見せれば、そのまま抱き着くのだ。絶対に離してなんかやらないと力を込めて抱き着くのだけれど、彼が本気で嫌がればその手を離すつもりで、)ねえ、降谷さん…しばらくの間また会えないかもしれないんだー。だからね、充電!降谷さんいっぱい充電して、降谷さんから離れるの。そしたら…きっと寂しくなくなるんだって思っておく。次会う時はまためーいっぱい甘やかしてくださ…ん?あたし、甘やかされてますよね?降谷さんに?あれ?これ違ってたら恥ずかしいんですが!で、でも…帰って来たら頑張ったってご褒美デートしましょ!でも、降谷さんお外に出れないからデートできない…?お家デートなら許してもらえる…?家なら提供できますよ…なーんてね。お仕事なんで、ご褒美なくてもがんばります!(顔を上げてふふっと元気な笑顔を彼に見せるのだ。しばらく、仕事の関係で彼に会えなくなってしまうけど。今、この瞬間に幸せを感じながら、)降谷さん、今日も大好きです!(ぎゅっと、先ほどよりも力を込めて。寂しい顔なんて彼には見られない様に、彼の身体に顔を埋める。きっと、彼に顔を見られてる時には笑顔に戻っているはずで、)
離れても寂しくはならないな…ただ…、物足りなさは感じる、みたいだ。
(一週間前は、黒の組織として酒の種類の名を持つ奴らの中に潜入して、今は絶賛探偵業の方へ勤しんでいる。時折本業に戻り任務へ向かったりと慌ただしくしてもう何ヶ月か。何度か本庁へ戻り報告などを済ませたりしていたがその時は誰も居ないときであった。どうしても戻れないときは部下へ連絡したりとを繰り返して、鋭い観察眼を持つ小学生の少年と厄介な事件に巻き込まれながら安室透を終えた今日。腕時計で時間を確認し、何時もよりも少し早めに終えた為部署へ行って報告書を書く時間や纏める時間もありそうだと計算して本庁近くへと車を走らせよう。そうして着いた本庁、部署へと歩を進めたのならついている電気。―ああ、もしかしたら、なんて思っていれば微かに聞こえる声にそっと息を吐いた。”寂しい“なんて、自分の帰りを待ってくれている人物がいるなんて、どんなに恵まれている事だろうか。今度は吐いた息をまるで戻す様に空気を吸ったのなら、扉を開けよう。そこには、やはり思った通り彼女がいるはずだ。)全く、相変わらず独り言がでかいな。それと、絶対にお前は来るなよ。仕事なら仕方がないにしろ好奇心で来たら…(さて、どうなるか…肩を竦めつつ警告を一つ、ため息交じりに呆れながら告げたのならば彼女を見遣る。)…八神、俺に会えないぐらいでそんなになる事ないだろう。お前だって巷で人気者になってるぞ。(随分と前の話、探偵業にてこの人物を探してほしいと依頼が一時増えたのだが、どれもその探し人は同じ人物で。それはセーラー服を着た八神優理そのものだったときはさすがに口元が引き攣ってしまったことを今でも覚えている。その後理由を付けて依頼を終えたりキャンセルしたりと慌ただしくしたこともあったか。最近では落ち着いたが諦めていないものもいる様子。部下には一応彼女の身の回りにも注意してもらったりもしているが、彼女も公安だ。要らぬ心配か。―)八神が当たってる姿も風見が怒っている姿も安易に想像できる…本当に、変わりないな。(ほっと息を吐く。変わらない、いつもがこんなにも安心できるのはこの場が自分にとって大きな場所だからだろうか?ふっと笑みを浮かべたのなら、)……、寂しい?(彼女の問いかけに、じわりと侵食する心は何か。じっと彼女の目を見つめ返していればそのままに感じた温もり。驚きで一度目を見開くもそれも一瞬に、「おい、」離れるようにと軽く肩を押すのだけれど、力のこめ具合にこれは簡単には離れそうにないなとため息一つ吐いて諦めて。)…そうだな。まだ、やる事がしばらく残ってる、姿を見せたとしても一瞬、になるかもしれない。八神にも仕事があるだろうしな。…充電って、俺は充電器じゃないぞ。まったく、…今までも十分に甘やかしてただろ?それぐらい、分かってたと思ってたんだが…っふ、はは!普通上司をデートに誘うか?本当に、八神は………デートは出来ないが、頑張れるだろう?(彼女の笑顔を見たのなら、浮かべた笑みはきっと優しく細められていて、ぽんっと軽く彼女の頭に手を置いた。耳に届いた言葉に、そっと目を閉じて。頭に置いた手とは逆の手は彼女の背に回してぎゅっと力を込めて抱きしめ返すのだ。情けなく下がる眉に顔に、見られたくなんてなかったから―。)――優理。(どうか、次会えた時また彼女の口から自分の名が聞けるようにと。自分の帰りを待ってくれる彼女とまた無事に会えるようにと。それまで、また頑張れるから。――ああ、寂しい、かな。)
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