八神優理 降谷零
甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司
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ふっるやさーん!久々すぎて可愛い部下の顔忘れてませんか?
(真っ暗の中ゆっくりとした足取りで建物の中を歩く。いつぶりだろうか、なんて独り言を零しながらぐるりと建物の中を回っていく。上からの指令ならしょうがない。そうは思っているのであるが―。自分もまだまだだなーなんて笑いながら最終的に到着したのは、自分の部署である。)なーんにも変わってない…。変わってないなー。みんな…覚えてるよね?これで、誰?なんて言われた日は大泣きしないと!(ふふっと笑いながら自分の席まで辿りついて持って帰りたかったものを物色していくのであろう。そして―、見つけてしまった。いや、これが彼女にとっての本当の探し物。)…、降谷さん…会いたい…。会いたいよ…。久々に顔見たいよ…。話したい…。(任務中に一度だけ彼の顔を見た。だが、それっきりで話せはしなかった。このもどかしさを任務中に仲良くなった人たちに当たってしまったこともあった。笑いながら受け止めてくれた彼らは大人で、当たってしまった自分はまだまだ子供。)わかってるんだけどなー。こんな風になるはずじゃなかったんだよなー。ただ…ただ憧れだけでよかったんだけどなー。なんで、こうなっちゃったんだろう…(はぁっとため息を零しながら窓際に移動し、外を眺める。気持ちの切り替えなんて上手にできない。できれば…大人になれるのだろうか?なんて疑問を持ちながらふと、気づく。一台の車が入ってくるのだ。もしかして、なんて思えば居ても立っても居られない。こんな時間にくるのなんてきっと彼しかいない。すぐに彼に会いたい。でも、ここで動いてしまえば入れ違いになる可能性が大である。待っている方が確実に彼に会える確率が上がる。そう思えば、大人しくここで待つことを選ぶ。いつ―、いつ来るだろうか。待つ時間と言うのはこんなにも長く感じる。しばらくすると、こつこつと音が聞こえ始める。はっとしたように顔を上げて、)ふ、降谷さんだー!本物の降谷さんだー!お久しぶりです!きちんと戻ってきましたー!しばらくは…長期任務ないって言われたんで、また降谷さんに会えますよー!私が居なくて寂しかったですが?あ、うるさいのが居なくて静かでよかったとかは言ったらダメですよ!そこは嘘でも寂しかったって言ってくださいね?でないと、挫ける!本気で!嘘でもいいんで!(ぱたぱたと彼の近くまで行けば、上機嫌な笑顔で告げるのだ。くるりと彼の周りを一周して、実感する。ここに帰ってきたことを、)降谷さんは、お仕事の帰り?それとも何か提出するものでもあったんですか?もう!降谷さん!こんな時間にきて、ちゃんとご飯食べて寝てます?きちんとできてないなら怒りますよー!元気でこわーい降谷さん見ないと私が!元気でないんですからね!私が元気になるためには、降谷さんに元気になってもら必要があるんだから!これも、重要な降谷さんにとっての任務なんですからね?(知ってました?なんて笑いながら首を傾げ彼に伝える。彼が呆れるのがわかってはいたが伝えずにはいられなかったのだ)こうやって、降谷さんと話すの久々すぎてなんだか違和感感じますね!顔は見たこからあれだけど、こんなに長い間一言も話しかけないのなんて私すっごく辛かったんですからね!もう!降谷さん大好きな身としては、すっごく頑張ったと思うんですよ!何度任務中にくじけそうになったことか!降谷さんだってそうでしょ?こんな可愛い部下に長く会えなくなると心配になりません?変な男に言い寄られてるんじゃないかって…!でも、安心してください!自分の身は自分で守れるんで、変な男に言い寄られたって蹴散らせるはずです!ただし、変な男でなかったら自分から尻尾振りながら向かいに行きそうですけど!(視線をすっとそらしてしまうのは、きっと自分の中で何か思い当たるふしがあったせいなのだろうか。んーっと考えるそぶりを見せては、)まあ、もういいお歳なので自分で対処し…いや、これできなかったら降谷さんに心配してもらえたりします?だたらもう、自分で対処するのを止めた方が私的に嬉しい事になると思うんですけど、どーう思います?降谷さん?(あれ?なんて本気で悩んでしまうのは彼に心配してほしいちょっとした我儘なのであろう。少しだけでも自分の事を考える時間が増えていけばいい。そしたら、忘れられない存在くらいにはなるのではないか?いい意味か悪い意味でかは分からないけれど、忘れられるよりは絶対にいい)降谷さん!今日も大好きです!ずっと、ずーっと降谷さんの側離れないんで覚悟してくださいね!(ぎゅっと彼の腕に掴まることが―、できたかできなかったかはきっと彼の行動に寄るのであろう。どうであれ、彼の方を見上げてとびっきりの笑顔で伝えるのだ。心の中で、こんな部下でごめんなさい、と付け加えて、)
部下の顔を忘れるような上司だと思われていたならそれまでだが。
(不思議と寂しさを感じたあの日からどれ程の日時、月日が経っただろうか。あれからも3つの顔を持ちそれぞれ忙しさはあるものの部署へと戻ってくれば見慣れた部下達の顔が見られればそれなりに気は休まるというもの、だけれどその中に当然のように待ってくれていたはずの彼女の姿は無かった。彼女は彼女で長期の任務にあたっているという事は聞いていたが、浮かべてしまうのはあの温かな笑顔と――ふっと自嘲気味に情けなく浮かべた笑みは誰にも気付かれずに、腕の中にあった温もりも忘れかけて今日も今日とて数日に及んだ任務を終え報告する書類を提出すべく車にて戻っていた。ここ数日気を張っていた為か一人の時間にほんの少し気を緩めてしまいそうになるけれどそうすると迫ってくる睡魔に、明日の予定を思い浮かべて「今日は帰ったら少し寝られるか…」とぽつり。―暫く走らせていれば着いた庁内、車を停めて向かうは勿論自分の部署。真っ暗な建物の中もすっかり慣れたもので一歩も止めることなく歩き進めた先、大抵この時間になれば部署内も暗くなっているはずなのだけれど何故だか明かりがついていて。まだ誰か残っているのか、なんて考えるよりも「―まさか、」そんな言葉が耳に入って思わず口元に手をやる。首をそっと横に振り無意識に出た言葉を隠す様に靴音を鳴らし扉に手を掛けて―)……、八神…?(開いた先には、ここしばらく姿を見せなかったまさかの相手。一瞬揺らぎを見せた瞳は瞬きの間に、久方ぶりに聞いた怒涛のトークの内に元に戻して。いつも通りの彼女に安堵にも呆れにも似た息を一つ吐くのだけれど、)お前は…相変わらずだな。なんでそこまで言葉が出てくるのか……っは、嘘でもいいのか?さみしかったさみしかった(はいはい、そうして受け流しつつ自身の机へと向かい報告する書類と別に提出する予定であった書類を取り纏めて彼女を見遣る。)仕事終わりに書類を提出。…心配されるような生活は送っていないし時間が取れればそれなりに休息も取れてるから心配することもない、が…俺にそんな任務が課せられてるとは知らなかったな。こわーい俺がそんなに見たいか?(ふっと息を吐いたと同時に抜け落ちるのは肩の力。任務の数々で張った気は彼女という存在のおかげで少しずつ緩んでいく。本当に彼女という存在は不思議なものである。)お互いに任務にあたってたんだ、そんな事もあるだろ。……、まぁ、確かに…八神の止まらない話が聞こえないのは…違和感があった。うちにはそんな騒がしい奴は数多くない、割と静かに過ごせていたけどな。……、任務中にも変な事考えてないだろうな?…、…俺は八神の力を知っているから心配はしていない。後は、お前の見る目とやらを信じる他ないんだが…どうだろうな。(ゆるり、書類内容の最終確認を行ったのなら、目許を細めて優しさを宿した表情をして彼女を真っ直ぐに見よう。きっと彼女なら大丈夫だとどこか信じているからこそだけれど、次いで出た言葉に本気さを感じてしまって眉を顰めてしまったのは仕方のない事か。)……おい、ちゃんと対処しろ。そんな下心があるなら心配もしてやらないぞ。俺がいつだって気づいて傍に居て、守ってやる事が出来るなんて、…思うな。そこまでできた人間じゃない。(深くついたため息、くしゃりと自身の髪を軽く掴んで。彼女の事を信じている、が、こういうところは考え物だと思う。そうしていれば掴まれた腕、その存在に蘇るのはずっと前の腕の中の温もりか。ああ、どうやら思っていたよりも寂しかったらしい。懐かしくも感じるそのあたたかさを噛み締めるように、そっと笑みを浮かべ、)……おかえり、八神。(彼女という存在が、遠くに、見えないところへ行かない事を強く願って。)
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