八神優理さん
2020 Happy Birthday



(こちら、現場はふわふわな空気となっております。)

 

(そわそわ…そわそわ…何やら落ち着かない空気を感じてはちらりと部署内を確認する。むさ苦しい男たちが楽しげにとある机に様々なお菓子やらバスグッズなど消耗品を置いていく様に思わず一つ壁を置いて引いて見てしまっている自分が異端なのであろうか。いつもピリつかせている自分が言うのもなんだが、そんなピリピリよりもふわふわとした締まりのない空気に深いため息が漏れていく。次々に積まれていくその机の持ち主はまだ今日は部署に顔を出していない―長期任務から戻ってきたばかりの彼女のもので。)…おい、程々にしておけよ。どうするんだこんなに…。(そういえば以前はお菓子がこんなに積まれていたことがあったか…なんて思い出していれば、「やっと帰ってきたし誕生日ですし…」なんて言葉が耳に入り再びため息を吐く。そう今日は八神優理の誕生日である。それに長期任務から帰ってきてお疲れ様も兼ねてこの量となっているわけだけれども。思わず頭を抱えたくなるのを抑えながら「やめろとは言っていない。」と声を掛けたのなら、再び積まれていくお菓子に少し甘やかしすぎではないだろうかと苦笑いを浮かべて。――それから暫く経ち任務へ向かい報告を終えたものは帰宅をしたり、このプレゼントの山を見たときの反応見たさに粘っていた者も任務へ出たりとすっかり静かになった部署。この静けさにも慣れたものだとデスクの大きな引き出しに入れていたそれを取りだし歩き出した足は既にお菓子やらが置かれ積まれている机の元へ。)甘やかしているのは…俺も一緒か。(こんなところ見られればきっと苦情待ったなしであろう。誰かが戻る前にと手に持っていたもの―ミスミソウとヘリクリサムのドライフラワーになっている小ぶりな花束―を大量に積まれたそこに追加で置いておこう。メッセージも書いていないこの花束の送り主の正体なんて誰も知らなくていいのだから。)――誕生日おめでとう、優理。(厳しい職場で、いつまでも真っ直ぐに、時にはもがいて苦しい思いをしながらも明るくこの部署を支えてくれる太陽のような温かな彼女の笑顔が曇ることのないように願いを込めて。―今日は特別な日なのだから皆の甘やかしも許してあげようと小さく笑みを浮かべて自分の机へと戻ろうか。さて、机の大量のプレゼントを見た彼女の反応はどうだっただろう。どうあれ、ふわふわとした締まりのない空気はそのままに今日は過ぎ去っていくのか。)