たまみ 平腹
01
私の仕事、手伝ってくれてもよろしいのですよ?(獄都事変/ランダム指名)
(掃除道具一式を抱えて廊下を歩くたまみは、不貞腐れたように眉間に皺を寄せて、目的の場所である食堂を目指していた。先程、とある獄卒に「食堂が汚れてる。ちゃんと掃除したのか?」なんて指摘を受け、食堂を使用する人が居ないであろう時間帯を狙って、改めて掃除をしに向かう途中なのだ。指摘をしてきた獄卒の顔はもうすでに忘れた。というか思い出したくもないのだろう、大きく溜息を付きつつ足早に。――ふと、足を止めてぱちくりと瞬いた。進行方向から此方へと向かって歩いてくる人影。顔と名前が一致する、そこそこ交流のある獄卒の姿が視界に入り、一呼吸置いたのならにっこりと口元に弧を描いた。)あらあら、奇遇ですわね。……お仕事はよろしいのかしら?羨ましいわあ、私なんてこれから仕事ですのに。(実際のところ、相手の仕事状況など把握していないけれども。虫の居所が悪かったたまみはその鬱憤をぶつけるように、にこにこと笑みを浮かべたまま小首を傾げて。)綺麗にしても綺麗にしても、貴方達がすぐ汚してしまうから……仕事が無くならなくてありがたい限りだわ。(厭味ったらしい言葉をぶつけて少しすっきり。すると今度は、関係ない相手に言い過ぎだろうかと、途端に不安が襲ってくる。なんとも感情や気分の波が激しいが、それを顔には出すまいと、口元を若干引き攣らせながらも笑みは浮かべたまま。)あー……呼び止めてしまってごめんなさいね?もう行くわ。……仕事熱心な私を見習って、貴方もお仕事がんばりなさいな。(それでは、と小さく会釈を。掃除道具を抱える手に力を籠める。こう言ってしまったからには、手抜きをするわけにはいかない。今度こそ文句の付けようがないくらいピカピカにしてやろうと決意し、再び歩き出した。)
え、ヤダ!だってそれオレの仕事じゃねーもん!!
(ふんふんふーん、楽し気な鼻歌を奏でながら廊下を突き進んでいく。仕事にて先ほど逃げ回っていた亡者を捕まえたのだけれど、その亡者との攻防がなかなかに退屈せずに済んだご機嫌な平腹は報告も終え大股気味に歩いていた。その時だ、前方から見知った姿を見かけて更にニンマリ顔を披露しつつ片手を大げさにぶんぶんと振り回しつつ声を掛けつつ近寄るのか。)おおおーーい!たまあああぁあ!!お前こんなトコでそんなモン持って立って…罰ゲームか!!オレは仕事は今終わって帰ってきて報告も終わった!へぇ、ふーん、なんだ…たまはこれから仕事か。(自分よりも背の小さな彼女を見下ろしながらじっと見たのなら、ニンマリ顔を止めることなく話をするのだけれど彼女の鬱憤にまるで気付かないように興味なさげに呟いたのなら、)んん?オレ絶対汚してないって!…あ、いや…でもこの間……今日は汚してない!(にっこり満面の笑みで告げて見せたなら一度そういえば一人の獄卒と大喧嘩した時にぐしゃぐしゃに汚したか、そんな事をにっこり顔のまま暫く考えて、胸を張って答えよう。「仕事があるなら良かったなー」と軽く言ってのけるのだけれど、引き攣る口元にきょとりと目を瞬かせよう。)…たまって、たまーに変な顔するよな。…あ!たまだけに!ふ、はは!ま、仕事好きなら早くしろよー。仕事熱心なオレ見習って(口許には弧を描いて仕事を終えた男は悠々と廊下を再び大股気味に歩いていくのか。―その廊下、そして平腹が向かう場所には暫く鼻歌が響いていたそうな。)
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