たまみ 平腹





04

私の手作りなのよ。平腹さん、よく味わってくださいね。


平腹さんちょっといいかしら、これの味見をしてほしいのだけれども。(いつも箒を持っている手には、クッキーののっている皿を持っていた。見知った獄卒の彼を見かければ声をかけ、皿を差し出す。)実はこの間、佐疫さんが私の仕事を手伝ってくださったのよ。それのお礼にと思って作ったんだけれども……自分以外の人の感想も聞きたくて。(作ったのはシンプルなバタークッキーだ。レシピと睨めっこをしながら作ったし、味見をしたところ美味しいと感じたけれども、目の前の彼の舌には合うだろうか。味見役として彼を選んだのは、話しかけやすい相手と言うのもあるし、最近話し相手なってもらうことの多い相手へのお礼の気持ちもあるのだが、それを素直に伝えられるような性格はしていない。彼がクッキーに手を伸ばすかは分からないが、ちらちらと様子を窺っていることだろう。)初めてにしては上出来だと思うのよ。というか普段料理しないのにこうして頑張ったんだから、その努力を誉めて欲しいくらいだわ。(ふふんっと胸を張る。そうして目的は果たしたとばかりに満足そうな笑みを浮かべよう。)佐疫さんがどこにいらっしゃるか知ってる?ラッピングして持っていかなくちゃいけないわ。(最後に質問をすれば、その答えがどうであれ彼の元を去ろうか。さて、猫生初のお菓子作りはどんな結果になることやら。)

……?…食えんの?変なモンとか入れてねー?

 

おおおお、たま!今日は堂々とサボってんのかよ!箒持たないで何持ってきてんだ?(本日の任務を終え愛用の武器をのんびりとしつつ手入れしていたのなら掛けられた声。最近やけに出くわす猫に口許に弧を描くのだけれど、何故だか違和感の感じる彼女の姿。ああ、箒を持っていないからかとすぐに分かればサボりだと決めつけ楽しげにしつつ差し出されたそれにきょとりと口許はそのままに目を丸くさせる。ジーっと差し出されたものと彼女の顔を交互に見比べて、)…ふはー、佐疫のやつよくやるな!オレ自分の仕事じゃねー事したくねーよ。……へぇ、たまが礼?へーふーん……オレにはポコポコよく怒ってんのに。…たまも礼って言葉知ってたんだな!(目を細めるそんな失礼な事を言ってのけるけれど、素直じゃない彼女は果たして素直に渡すことが出来るのだろうか、そう思うと楽しくなってきて、ふはは!!と声に出して笑ったのならば差し出されたそれを再び見て一つクッキーに手を伸ばす。その一つを角度を変えてみては「普通のクッキーだなー」と笑いながらぱくり!一口で放り込んでしまえば咀嚼していき、)おー、たまが初めて料理したって聞くとそれなりに美味く感じる!そうだよな、たまが料理してるとこなんか全然みねーもん。……、あ、んじゃコレたまの料理オレが初めて食ったってことだ!(そうして結論付ければもう一つ素早く手に取って、ぱくり。ふはは!と楽しげに笑みを浮かべれば、「ふっつー!」真偽は如何に、そんな言葉を嬉しそうに言ってやる。)佐疫さっき報告ん時すれ違ったからそこら辺にいんじゃねー?しっかり礼しろよな、ポコポコすんなよ!(そんな適当で曖昧な答えを彼女に告げたのなら、手を振り彼女の後姿を見送ろう、として、一つ思い出してポケットの中を弄る。そして見つけたそれを手に彼女の肩を叩いた。)たま!これやる!(差し出したのは赤いリボンのついた鈴で、平腹の手の中でちりん、と可愛らしく鳴る。さて、彼女が受け取るか受け取らないか怒るか怒らないか、どうあれど、また楽しげに笑う平腹の声が館内に響くはず。)