たまみさん
2020 Happy Birthday
(廊下に騒がしく鳴り響くは、りんりん鈴の音。)

たっだいまー!!!(任務を終えて元気よく館の玄関扉を開けた平腹は誰から見てもご機嫌のそれであろう。大きな声に大きな音に皆が驚きを示す中気にする様子もなく武器を手にしたまままず上司へ報告するために足を進めていく。無事に報告を済ませることが出来たのなら「扉はもう少し静かに閉めろ」と説教をくらってしまったが、亡者との攻防によりご機嫌で楽し気な平腹にふと一人の家政婦が近寄ってくるからきょとりと目を丸くして首を傾げて見せ足を止めた。そうして止まった自分を確認しては、徐に口を開いた。)……んん?たまの誕生日?(どうやら今日はたまの誕生日らしい。家政婦たちが計画を立てて食堂で誕生日パーティーを開く予定なのだという事が告げられたのなら「へー!」とまるで興味が無さそうに手を頭の後ろで組んでは「じゃあ今日の飯は豪華になる訳だ!」とまた楽しげに目元を細めた。そんな自分に呆れながら吐かれたため息は聞こえないフリをして。どうやら他の非番の獄卒たちはそのパーティーの準備に駆り出されているらしく、早くに戻ってきた自分にもなんて話が出ようものなら嫌だ!なんて即答するのだろう。そんな答え分かり切っていたのだろう家政婦は次に、「たまみちゃんを時間まで食堂へ近づけないようにしてほしい」という任を渡してきた。えー…なんて面倒くさそうな顔を見せればそれなら食事なしと言い渡されてしまうのだから仕方なしに、武器を置いて今彼女が掃除をしているだろう場所へと足へと運ぼうか。―しばらく歩いていれば、ああいたいた。いつもの彼女だ。)おおおーい!たーまー!!!(大げさにぶんぶんと手を振ったのならにんまり笑顔で彼女の元へと向かおう。怪訝な顔されてもいつも通りにやにやと隣を陣取って。そうして他愛もない、揶揄いの言葉を伝えたりまたいつも通りのくだらない時間を、それでも真面目に掃除を続ける彼女を見ながら手伝うことも無く過ごすこととなる。暫くして、あ!と声を上げたなら、)そういや、たま佐疫にちゃんとクッキー渡せたのかよー?(そんな前の出来事を急に思い出してはけらけら笑って言いのけたりして。彼女のポコポコには慣れたもので何を言われてもケラケラと楽しげに笑って済ませるつもりだ。――さて、ちらりと時計を確認したのなら言われた時間だ。そろそろ良いだろうかとうーんと体を伸ばして、)たまー、もう掃除いんじゃね?終わり終わり。飯行くぞ!!!(もしもまだ掃除を続けようとするのなら、腕を引っ張って無理やりでも引き摺って食堂の方まで足を進めるつもりで。そうして、あ、と再び何かを思い出しては足を止めよう。ポケットに手を突っ込んで目当ての物が指に当たったのならそれを取り出して、彼女へと差し出すのか。―平腹の手の中には以前差し出したものよりも小ぶりでどこにでも付けられそうな青いリボンのついた鈴。ちりんと高らかになるそれを彼女の手の中に無理やり置いては、)…ずっと渡そうと思ってて忘れてたけどちょうどいいわ。それは捨てんなよ!!プレゼントっつーやつ!(以前出した鈴はそういえばどうなったっけか。そんな事を思いながら彼女はそっちのけに無理やり置いた鈴に満足げに頷いては、再び彼女の腕を引っ張って食堂へと向かおう。――たどり着いた食堂はいつもと違って華やかに飾られていて料理もまあ豪勢な事。彼女の反応は如何に。―どんな反応にせよ無事に任務を終えた平腹はすっかり食事にがっついているはず。)
No title

(――もはや顔を覚えてはいないけれども、「おめでとう。」と紡ぐ嬉しそうに弾んだ声を覚えている。いつの記憶だろうか。長生きしていると、遠い昔の記憶は霧がかかったようにぼんやりとしている。それでも、それがとても暖かくて優しい思い出であるとなぜか知っていた。“今日”が近づいてくるとこの思い出の夢を良く見るようになる。懐かしくて、泣きたくなるような夢だ。そうして本日、何度目かの誕生日。辛うじて今日はそうなのだと覚えているが、いったい何度この日を迎えたのかは覚えていない。女としては、年齢だなんて忘れてしまった方が幸せに暮らせるかもしれないと思い始めている。誕生日と言えど、やることは変わらず。仕事場へとやってきて、気が向いている間はせっせと仕事をこなすのだ。なんだか館内が騒がしいような気もするけれども、面倒事に関わりたくはないのでスルーである。こういう時に限って、大抵向こうからやってくるものなのだ。視線を向けなくても誰だか分かってしまう。)平腹さん、本日もお元気そうで何よりですわ。(元気な明るく大きい声。顔を向けたなら、そこには想定していた人物がいる。にこにこと笑顔を浮かべて嫌味の1つでも投げつけてみるが、通じないことはこれまでの交流から想像するに容易い。彼とのやり取りは相変わらず、それでも仕事の手は止めることなく。――まあ、先程よりは掃除が大雑把になっているかもしれないが。)わ、渡せたに決まってるでしょう!それはもうばっちりと!(むすっとしながら言葉を返すも、その実、いつも以上にツンが強めの素直じゃない渡し方だった。あの優しい彼ならばいつも通り穏やかな微笑みを浮かべて対応してくれた筈。何を言おうにも目の前の男から笑みは消えず、たまみのポコポコは更に勢いを増すも――彼の態度が変わる事はないのだろう。)は、はあ?それは私が決めることであって貴方が決めることでは……聞いてます?(困惑したように固まっていれば、腕を引かれて動き出す。移動中、彼の背中に向かって文句をずっと投げかけていたことだろう。急に止まるもんだから、こけそうになりながらも足を止めて何事かと顔を上げた。彼は何やらポケットから取り出して、それを此方へと渡してきた。たまみの手の内には、以前もらったものよりも付けやすそうなリボン付きの鈴が。驚いたように彼を見た。)これはいったい何のプレゼントなのかしら。というか聞き捨てならないわ、まるで私が以前もらった贈り物を捨てたかのように。……それに、やっぱり猫扱いしてるでしょう貴方。(赤いリボンのついた鈴は住処に飾ってある。たまにその鈴を鳴らして、その音色に耳を傾けていた。貰った贈り物をどうしようか考える暇もなく、再び連れられるがままに辿り着いたのは食堂だった。――普段とは違う、特別な食堂。ぽかんと間抜けな表情を浮かべた後、すぐさま理由に思い至れば帽子を深く被り直して顔を隠した。頬は赤く染まり、帽子の中で耳は僅かに前方へと傾いていたことだろう。猫の姿であったなら、喉をゴロゴロと鳴らしたかもしれない。食事を楽しみながら、色んな人と話をして回り感謝の気持ちを普段よりは素直に伝えられただろうか。そうして、しばらくした後ここへ連れて来てくれた彼の元へと。その手首には先程貰った青いリボンのついた鈴がちりんちりんと揺れている。)……まあ、その……ありがと。(ぼそぼそと呟くような声でそう告げた。何に対しての感謝かと聞かれれば、普段通りの憎まれ口を返すのみで答えないだろうけれども。記憶の中のように穏やかではないけれども、賑やかな誕生日。これはこれで良いものだ。いつだって「おめでとう。」の言葉は心を温かくさせてくれるのだから。)