藤本空 仁兎なずな





02

にとせんぱい、無理しちゃったかもです…ごめんなさい!


あ、れ……?(ほんの一瞬の出来事だった。――ここのところ、他のユニットからのプロデュース依頼が多く、Ra*bitsの練習にも碌に顔を出せていなかった。藤本はRa*bitsの専属プロデューサー状態とはいえ、学院内にプロデュース科の生徒は自分含めて二名しかいない。どうしても、Trickstarと行動を共にすることが多い彼女と分担して他のユニットにも回らなければならないのである。睡眠時間は削られ、今朝は朝食もほとんど摂る暇はなかった。昼休みに入り、昼食を買いに行こうと立ち上がった瞬間、眼前は靄がかかったように真っ白に染まってしまったのだ。)う、ぅ……、(意識はぼんやりとしているが、髪の長いクラスメイトの少年が駆けつけて肩を貸してくれたことは理解できた。覚束ない足取りで保健室まで向かい、その場にいた担任教師にすぐにベッドに入るよう促してもらう。―そういえば、今日は放課後特に何の予定も入っていなかったんだっけ。Ra*bitsのみんなの練習を見に行って、差し入れでもしようかな、なんて思っていたんだっけ――。みんなに会いたいなあ、に〜ちゃんとおしゃべりしたいなあ。なんて考えながら、枕元に置いていたスマホへと手を伸ばす。)“ごめんなさい、”――…っと。先生ごめんなさい、適当に起こしてもらえたら…うれしいです。(“ごめんなさい、今日の練習にも行けないかも”その一言メッセージはいつものグループへと送ったつもりだった。ユニット唯一の上級生である彼に個別で送ってしまっていたことには気づけなかった。カーテンの外から声を掛けてくれた担任にぼやりとしたまま返答すると、そのまま双眸を閉じる。心配を掛けたくなかった、目眩がして保健室で休んでいることは告げなかった。微睡みの中、担任ではない誰かがベッド際へと近づいてきていることなど知る由もなかった。――件のクラスメイトが、我らがユニットリーダーにこの事態を報告に行ってくれていたことなど、まさか。)

……謝ったって許さない…なんて、気付いてあげられなかった自分が一番許せないんだ。

 

ん?あー、空ちんか…。最近他のユニットの方にも熱心に回ってるみたいだし…いや、専属みたいなモンだって言ってもプロデューサーにも色々あるんだよ、な。いい子にしてたらちゃんと見に来てくれるさ!さあ、練習練習!(自分以外は一年生という我がユニット。不安そうな寂しそうな表情をした子たちは今やRa*bitsの専属ともいえるプロデューサーである彼女が最近慌ただしくしている事にどうしたのだろうと心配や不安な様子である。他のユニットの専属になったら、なんていう子には「こーら!」と心配しすぎだと注意したりした。彼女が忙しなくもう一人のプロデューサーと共に他のユニットを回ってみている事は遠くから見かけたり同じクラスの他ユニットのメンバーから聞いたりとしていてがんばっている彼女の話が聞けることが嬉しいし何より誇りに感じているのだ。無理だけはしてほしくないけれど、それでも頑張っている彼女を誰よりも応援していたいからこそ自分も少なからず明るい彼女の姿が見られない事に寂しさを感じているけれど我がユニットだけのプロデュースだけではないと理解しているから。)―…でも、ちゃんと休めてるのかな…。(今日遠くから見かけた彼女は何だか疲れているようなやつれていたような、遠くからだったから確信はないけれどちゃんと様子を見てあげなきゃな、なんて昼休み彼女に会いに行こうかと目論み昼食をとり終えたところにスマホに届いた一つのメッセージ。そう、彼女からのメッセージだ。珍しく個別に届いたそれに思わず首を傾げてしまうのだけれど、それほどまでに今忙しい状況なのだろうかと不安が込み上げてきて。今どこにいるのか、そうメッセージを彼女に送ろうとしたその時である。自分を訪ねてきたのは髪の長い武士を思わせる風貌の男。そちらへと歩き出せば、)…颯馬ちん?どうした、おれに用事って珍しい、何か……っ!!(最初は珍しい来客にへらりと迎えるのだけれど、焦ったようにけれど正直に伝えてくれた出来事に思わず彼に力強く眼を向ける。焦ったように、ぱくぱくと何か言いたいのだけれど言葉が出なくて、ぐっと一度唾を飲み込んだのなら、「そりゃちん、今保健室にいるんだよにゃ?」彼の腕を力強く掴み呂律が上手く回らない舌で再度確認をして急いで保健室へと向かおうか。走らないように、けれど急ぎ足で気を付けながら無事に保健室へと着いたのならそっと扉を開ける。―そこに居た先生に次の授業始まるまでに出るからという旨を伝えたのなら、音を立てないようにカーテンを開く。疲れたように眠っている彼女がベッドの上に居て、なんだか無性に泣きたくなった。ベッド際へと近づき彼女を起こさないように、そっと頭を軽く撫でて、)…ごめんな、こんなになるまで気づけなくて…に〜ちゃん失格だ。(悲しく、眉を下げながらぽつりと呟こう。寝ている彼女にはきっと届くことはないだろうけれど、)…プロデューサーの仕事は手伝えないけどさ、でも支えさせてくれよ。おれ、空ちんのに〜ちゃんだろ。弱音、いつだって吐いていいから……お願いだよ…心配してるんだ、おれだけじゃなくて、あの子たちも。(もう、大切な子たちが倒れてしまう姿なんて見たくないから。そんな願いを込めて、次の授業が始まるぎりぎりの時間まで彼女の事を見守ろう。きっと寝顔をじっと見られるのは嫌だろうけれど今だけは許してほしい。どうか、今この時間だけは何の邪魔もなくゆっくりと彼女が休まることを祈って、おやすみなさい空ちん。)