藤本空 仁兎なずな





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にとせんぱい、12月といえば!?


(ここ一ヶ月ほど、藤本の様子は少しおかしかったらしい。どうにも男性アイドルらしからぬ女の子らしい詞をノートに綴っていたり、今まで触れたこともなかった五線譜と睨めっこしたり。後者に関しては騎士をモチーフとしたユニットのリーダーから妙な影響を受けたのかと噂されていたのだが、当人は知る由もない。ここ数日でようやくそれも収まった――かと思いきや、今日になってまた不思議な行動に出たのだ。Ra*bitsの練習教室に突如大きなクリスマスツリーが登場したのである。事のあらましはというと、生徒会が古くなったというツリーを捨てようとしているところに藤本が偶然遭遇、しかし傷も汚れも見あたらないツリーがつい勿体なくなり譲り受けたのだった。Ra*bitsのメンバーには事前に練習室にツリーを飾ったと連絡はしていたのだが、まさか藤本よりも、ましてやメンバーの誰よりも大きなサイズのものだとは思うまい。一番に部屋にやってきたリーダーの彼もきっと驚いたことだろう。)見て見てに〜ちゃん!どうですか、すごいでしょこれ。練習しながらクリスマス気分味わえますよ。……あ、そうだ、せっかくだからクリスマスパーティやりません?Ra*bitsと、この前お世話になった羽風先輩のいるUNDEADと、それからあんずちゃんとTrickstarのみんなと…に〜ちゃんは他に呼びたい人、います?(ツリーの存在にすっかりテンションが上がってしまったのか、今日の練習メニューについて話すことも忘れ、楽しげな様子で彼へと語りかける。しかしすぐにはた、と何かに気付いたかのような表情になると、室内には自分たち二人しかいないにも関わらず、彼の方へと近づいてこそっと耳打ちしてみせた。)あのね、もちろんRa*bitsのみんなとわたしの五人だけでのパーティもしたいなって思ってるよ。(それだけ言い放つとそっと離れ、クスクスと笑った。まだ何も飾り付けられていないツリーを改めて指差す。そろそろ一年生の三人もここに来る頃だろうか。)ね、近いうちにツリーの飾り買いに行きましょ!あのファンシーショップがいいかなあ、せっかくだからみんなで行くのも楽しそうだよね、に〜ちゃん。

へ?それはやっぱり…定番でいったらクリスマス、だろ?

 

(専属プロデューサーの様子がおかしい、その事はすぐに気が付いた。後輩からもどうかしたのか?なんて心配の声が聞こえたりとしたのだけれど、もしかしたら何か人から影響を受けたのではないだろうかと落ち着くまでひっそりと見守っていた。それが彼女にとって悪い影響なのか良い影響なのか、なんて本人にしかわかり得ないのだから。―そんなこんなで見守ってきて早12月、肌寒さを感じて思わず身震いなんてして腕をさすって体を縮こませる日が続くのだけれど、ここ数日で彼女の様子も落ち着いて皆で安心したものである。ふいに、そんな彼女からクリスマスツリーを練習室に飾った旨の連絡を受けひっそりと口角を上げ、12月だからなーかわいいことするなーなんて楽しげにしては、小さなツリーに喜ぶ兎達の姿を思い浮かべてまた幸せそうに笑った。――のだけれど、)…えっ?(目を見開き思わず驚きで情けない声が口から零れ出る。いつものようにレッスンするぞと意気込んでやってきた練習室、その場に居るプロデューサーの彼女。うん、そこまでは何も変わりはない、問題はその場にある自分よりも大きなクリスマスツリーだ。ツリーの存在は彼女からの連絡で知っていたものの想像していたものよりもはるかにはるかに上回るそれについつい視線はその天辺へと向けられてぱちぱちと幾度と瞬きを繰り返してしまう。)そ、そりゃちんがこれ運んできたにょか?す、すごいし……ははっ!あまりにも想像より大きくて驚きすぎちゃったな。(そんなクリスマスツリーに対して素直に感想を述べようか。もしも彼女が運んだのなら大変だっただろ?と労うことを忘れずに、)ん?クリスマスパーティ?へー、いいな!そうだな、大人数でクリスマスパーティしたら盛り上がりそうだしツリーも喜ぶだろ!…他に呼びたい人…か……、いや、…(彼女の提案には楽しげに賛同すれば浮かんだ顔に眉を下げ困ったように笑いながら首を振って。そうしてはたと思う、可愛い可愛い兎達と彼女とほっこりと和むような時間を。先ほどは賛同したために今頃口にするのはどうかと考えあぐねていれば、)……、うん、おれも…同じこと思ってた。5人でもパーティしたいなって…空ちんに先に言わせるなんて、ダメなに〜ちゃんだな!(こそりと聞こえた言葉に目を開けば彼女の顔を見て嬉しそうに幸せそうに笑った。釣られるようにまだ飾られていないツリーに視線をやり、)おう!これじゃツリーが可哀そうだし…パーティするなら盛大に飾ってやんないと。皆で買いに行って皆で一緒に飾ろう!全部一緒にみんなで楽しもう空ちん!(そうやって笑いあった頃合いで一年生も到着してツリーの存在に驚いたのなら驚くよなーなんて楽しげにしながらパーティとツリーの飾りの計画について伝えよう。楽しさに盛り上がりを見せるがハッとなり準備運動を始めようか。プロデューサーと練習メニューについて話して、今日の練習のはじまりだ。――後日ツリーの飾りを買いにファンシーショップへ皆で向かうはず。―そしてその日密かに彼女への誕生日プレゼントを探す計画も兎達を立てていた事を彼女は知る由もないだろう。)