赤星紫亜 工藤新一
ドジっ子ワトソン 平成のホームズ
02
新くんは、可愛い系とセクシー系どっちが…そのっ…、好き、ですか?
(休日のある日のことである。午前中のみの活動であった部活動も終え、友人と共にデパートへと足を向けた午後1時半。季節を少し先取りしたカラーに開放的な服装が並ぶマネキンたちを通り越し、奥まった空間に提供されている試着室の中。もぞもぞと動く影こそ、赤星である。ティアドロップが淡くプリントされた爽やかな色のワンピース姿でくるりと回れば、その遠心力でスカートの裾も円をえがく。それから、バッグから聞こえるバイブ音。携帯に手を伸ばせば、)――っ、と。お待たせしちゃいまして、すみません 新くん…えっ?…あっ゛!ごめんなさい。今日でしたっけ?英語の勉強みてもらうお約束していたの。うう、てっきり明日とばかり…!い、今ですね、その…米花デパートに来てまして…っ。ほんとにごめんなさい。あのっ…、はっ…走って行けば、しっししっ新くんのおうちにすぐに着くと思うのですが…っ!(ひっそり想いを寄せている人物からの電話だった。そして、今日の14時から勉強を見てもらう約束をしていたのだった。勘違いして来週と思っていただけに、脳内はパニック状態。追い打ちをかけるように、突然開いた試着室のカーテンに)――ッ!(ぎゃあ!と悲鳴を上げてしまった。カーテンを開けた犯人は友人であり、試着に手間取っていることを心配に思ったが故の判断であったのだけれど。近くに居た店員さんにも「どうかなさいましたか?」と心配する声が。ふたりに謝罪し、大丈夫だと試着室のカーテンを閉めるまでの一連のやり取りも彼は判っているだろう。なにせ携帯をスピーカーに設定して話していたのだから。探偵の耳をもつ彼なら尚さらに。)…ちょっ、諸事情で…!その―…(『きゃああ!!』という女性の悲鳴がすぐ近くで聞こえた。どうやら隣の売り場で事件が起きたらしい。『おい刺されたぞ』『救急車を呼べ』なんて声を耳が拾う。そして、その音声も携帯を通して彼の許へも。)新くん、わたし行ってくる!何だか事件みたいだから。何かあったら報告しますね。(勇んで出ていく赤星。後から店員さんの「お客様お待ちください!」の声。それを追いかけるように聞こえてきた友人の「紫亜、服着たままだよ!!」という叫び声。どうやら商品を着たまま、店を出ようとしてしまったらしい。)え、あの、すみません。急いでまして!(弁明する赤星の声。「お、お待ちくださいお客様。ここで脱がれてしまわれても!」「紫亜、着替えの服どこに置いてきたの!?」なんてやり取りも電話口から名探偵の許へ届いているだろう。事件の解明を急ぐどころか、自分が事件を起こしてしまった様。窃盗未遂および公然わいせつ未遂罪。少女の許では、事件が起きる。いや、事件を起こしているのか。なんたって歩くトラブルメーカーなのだから。一刻も早い事件の収拾を望みたい。来たれ平成のホームズさん。)
…!?はあ?それは…、その…い、言うわけねぇだろ!
(それはとある休日の事。サッカー部をやめてからは、本を読んだり幼馴染の買い物に付き合ったりとその日によって過ごし方は変わっているのだけれど、本日は前もった約束があるのだ。血は繋がっていないけれど、まるで本当の妹のように可愛がって?いる?彼女が、英語がわからないとのことで自然と自分が勉強をみることになって。本日の14時の予定でいるため午前中は自分の時間にと取っておいた本を読んで過ごそうと集中していて数時間。刻々と約束の時間が近づいてきてふと、唐突に不安な気持ちがふわりと浮き上がって。それは急なもので、いやいや何もない大丈夫だろうと再び本に集中して考えたのだけれど、彼女のドジっ子加減をよく知っているからこそ「まさかな…」なんて恐る恐る携帯を手にしたなら彼女の番号を押したなら、)…――もしもし、俺。紫亜、お前今日英語の勉強見るって話し覚えてるか?……ったく、やっぱり忘れてたな?そんなこったろうと思ったけど、いや、俺も本に集中してて連絡遅れたし急がなくてもいいし、デパートに居んだろ?買い物してんなら別に今日じゃなくても…――!(なんとも言えない彼女の悲鳴が聞こえたなら驚き思わず焦ったがスピーカーから聞こえる一連のやりとりになんとなくその場の状態を察してしまうのは、自分が探偵としてその場を推理したからか、はたまた…彼女の性格を知っているからこそのわかりやすさか。はあ、ため息をついたなら慌てる彼女に届いただろうか。)紫亜、やっぱり今日じゃなくていいぜ?ダチも一緒なら、(その刹那。女性の甲高い悲鳴が耳元で響いて、次いで聞こえた声に体が自然と動いてしまうのはもう反射のようだ。軽い上着を羽織ったのなら電話を切ることなく走り出す。耳元で聞こえる彼女の声に悩みながらも、自分がデパートに着くまでにしておいてほしいことをしてもらおうか、と声を掛ける。)おい、紫亜!今俺もそっち向かう、だから、…っておい!一人で行くな!現場に居ない以上わからないが刺されたって聞こえたから犯人はまだ刃物を持ってるかもしれねぇだろ!とりあえず、電話は切るなよ、(全力で走りデパートへと向かう最中、耳元で起こる事件。お前が事件を増やしてどうすんだよ、こんな場でも健在な彼女のドジっ子気質はどうやら相変わらずな様子。何とも言えない空気に走りながら思わず空気が抜けるような笑いが出てしまったが慌てて気を引き締めて。「バーロォ、落ち着け!とりあえず友達の携帯借りて救急車と警察を呼んで、係りの人に、」やってほしいことをつらつらと告げたなら今は現場へ向かうことへ集中しよう。ドジっ子な助手を信頼しているからこそ。――現場へとたどり着き、彼女が連絡してくれたのなら、被害者は救急車で運ばれ警察とともに捜査を始めるのか。証拠が出そろいまだデパートから出ていなかった犯人を捕まえたのならこの事件は解決だ。――さてさて、未遂の事件を起こした容疑者…否助手の彼女の元へと向かったなら、ぽんぽんと頭を数度撫で「がんばったな、おかげで事件が解決した。」と言葉と共にじわりと浮かぶのは先ほど耳元で聞こえた未遂事件の事で。ぷはっと噴き出すように笑ったなら、)これからは慌てんなよ。紫亜は相当なドジなんだから、慌てたら本当に事件起こしそうだ。…なんかあったら俺に連絡して、すぐ向かう。(楽し気に目元を細めたなら、「頼りにしてんだからな、助手!」と付け足して。さて、約束の時間はとうに過ぎてしまったけれど、本日の予定はどうしようか?彼女が友達とショッピングをするというのであれば手を振り別れるのだけれど。勉強はせずとももう帰るということになれば一緒に帰路へとつくつもりだ。―今日の予定を決めるのは、君だよ、ワトソンくん。)
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