八神優理 降谷零





甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司

01

降谷さん。あたしが降谷零欠乏症になってるの知ってます?ねぇねぇ!


終わるわけないわよこんなのー!(外は真っ暗。時計の短針はもう少しで12時を指そうとしている。そんな中大声を出して嘆いている彼女は机に突っ伏してぶつぶつと文句を言い続ける。本日昼間に行った調査の報告の書類の記入をし、帰れる!と思った矢先、保存ボタンを押し忘れ画面を閉じてしまったのが原因で現在彼女は居残りとなっている。その様子を同期である風見に見られ、鼻で笑われたのは何時間前の話であろうか―。黙々とキーボードを打ち続けても終わらない作業にイライラはマックス。いったん落ち着こうと席を立ちカフェオレを入れれば、窓ガラス越しに外の風景を眺めて、)何よ、何よ。世間は花の金曜日なんて言ってるけど、あたしは花でもなんでもないじゃない!あたしに花は?!あたしの花ってどこよ?!花もらっても今全然うれしくないけど!でもだ、でも!喜ばしいことがあってもいいと思うのよ!ここに、降谷さんが来るとか!降谷さんが来るとか!…ってちょっと待て、降谷さんが来ること以外喜ばしいことないってかあたし?あれ?あたしちゃんと女の子してる?いや、女の子って歳でもないけどさ!ちょっとこれ、枯れすぎじゃありません?買い物とかって想像…あ、できないや。するくらいなら寝たーい!ふかふかのベッドに入ってゆっくり休ませて欲しい。そこに降谷さんがいたらすっごく最高じゃない?あたし、絶対にいろいろと頑張れる気がする!…、うし!大丈夫乙女できてる!かれてない…というか、これ誰かに聞かれたらあたし独り言言ってるただの変態じゃない?こんな時間にだいたい誰もいないよねー!あたしみたいなバカする人なんていないし!(苦笑いをしながらもう少しの仕事を終わらせようと自身の席へつこうと方向転換。すると、そこには自分が会いたかったー、でも少しばかし会いたくなかった人が立っているようにみえ、)…って、ん?あれ?あたし疲れて…見えちゃけない人いない…?あれ?ん?これ…夢?ほら、夢だよね?ほら、夢なら、ぎゅーってして、頭撫でてくださいよ!(彼がどんな言葉・反応を投げかけてこようとそれが現実だと知るのはすぐのこと。顔を赤くして、隠すような仕草を慌てた様子でする。言ってしまったものはしょうがないのだが、先ほどの時間が戻れば…なんて考えており、)とりあえず…どこから聞いてました?聞いてたのであれば…どっかお酒飲みに行ってすべて忘れません?さすがに今のは恥ずかしい!好き!だとかならまだかわいいけど、いろいろアウト!とりあえず…降谷さん、好きです。今日もかっこいいです。素敵すぎます…!惚れさせてどうする気ですか(彼女的にはさりげなく、ごはんへと彼を誘ってみたが、返事はいかに。彼の返事次第では彼女の仕事スピードが変わっていくのだが…。)

知らなかった。それより同じ空間にいる間にさっさと手を動かしてくれ。

 

(外はとうに暗くなり静けさが広がる。以前の徹夜続きに比べれば楽な方、か―。ぐっと体を伸ばし時計の針を確認したなら、ふぅっと短いため息を一つ。愛車から降りたなら本日の分の報告書類を書かねば、と意気込んで歩を進めるのだけれど―。ふ、と公安部署の明かりがついていることに事に気がつき思わず目を細める。―もちろんそこに喜びや楽の感情は存在しない。さて、指示をしている彼には帰りが何時になるかわからないこと、危険な調査ではなかったため一人でも平気だと先に帰るよう告げた為きっと彼ではないだろう。となると……なんて簡単な推理だ。一人一人頭に考え、大方、操作でも間違えて書類を一からやっている人物がいるのだろうと推測し頭に一人の人物を思い浮かべたなら明かりにつられるように近づいて中にいる人物を見たら案の定想像していた人物がいるのだから、期待を裏切らないな…と密かに息をつく。声を掛けるかと口を開くと同時に聞こえたのは自分の声ではなく彼女の声―。パッと思わず手で口を覆いその様子を窺っていよう。これは関わっていいものか悪いものか。自分の名前が出ているが何とも声が掛けにくい状態だ…。それにしても、大きい独り言だ、と、じわり、ふっと息が抜けるような笑いを浮かべ肩が揺れたなら、やっと視線があった彼女を見やり、)俺がここに居たら何か不都合でもあるのか?それに、夢じゃないなら何もしなくていいんだよな。(自分も報告書類を仕上げねば、とパソコンの前に向かい彼女の様子を盗み見れば慌てた様子でいるので、ふっと意地悪したい気持ちが湧いてきてしまうものだ。意地悪く笑みを浮かべれば、)俺の口から一言一句、始まりから聞きたいか?八神が急に喋りだして他に人がいるのかと思ったんだが…独り言だとは思わなかった。ずっと聞いてたのも悪かったが、…今回は仕方ないだろ。(ぱちぱち、キーボードを打ちながらそこに悪びれた様子はなく。彼女の言葉にパソコンから、一度視線をずらして―犬の耳に犬のしっぽが元気に動いている幻覚が見えてしまうのは彼女にだけ毎度の事。いつものアピールには「はいはい」と適当にあしらいつつ、小さくついた息に再び視線をパソコンに戻したなら、)酒飲んだだけで忘れることはない確実に。俺は直に終わるから…八神が正確に書類を終えた時間次第で考える。(できるか?と挑戦的に、どこか楽しそうにそう告げたなら、自身も書類へと取り組もうか。―さて、無事にごはんにありつけたかどうか、時間が時間だ、ごはんを食べる時間がなくとも公安と言えど女性一人で帰らすわけには行かないと愛車で家の前まで送るつもりではあるのだけれど―。後は彼女の書類次第。)