八神優理 降谷零





甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司

05

降谷さんのおもり担当あたしになってませ…絶対に今嫌な顔しましたよね!


(飲み会の日から数日―。本日の彼女は非番ではあるのだが鳴り響くスマートフォンに不機嫌そうに出れば「八神!お前ちょっと職場に来い!綺麗にしてな。スーツでなくって私服でいいから」と、一方的に告げられて切られた。突然の電話に意味の分からない内容に一時停止をしてしまうのはしょうがないのであろうか。上司に言われたのであるからしょうがない。紺色のTシャツに白のカーディガン。カーキーのロングスカートを履けばいざ出発。少しして、いつも見慣れた場所に付き溜息を一つ。「用事っていったい何ですか!今日非番なんですよ!」と、不機嫌オーラ全開で扉を開ける。中をぐるりと見て、きたことに後悔する。皆の顔がどんよりとしている事に気づき「ど、どうしたんです?」と、不安そうに近くに居る人に尋ねた。「上がものすごくイライラしててな…」と、彼の机を指さす。そんな、彼はいま現在ここにはいない。どういうことだと首を傾げていれば「八神…そのまま屋上行って来い。んで、当分帰ってくんな。俺らのために」げっそりとした上司の顔に苦笑いしつつ「行ってきまーす」と、屋上へと向かうのだ。彼女にとったら彼の機嫌が悪かろうがどうだろうが会えることで幸せいっぱいなのだ。ましてや、今日は非番で会ったため会えないと思っていたくらいだ。ゆっくりと屋上のドアを開ければ見慣れた姿を見つけて、)ふーるやさーん!ご機嫌いかがですか?今日は何で機嫌悪いんです?徹夜?捜査の行き詰まり?ポアロの新作商品の考え?それとも…赤井?(近づきながら思い当たり節を並べて見ては、隣に並んで、)みーんな、降谷さんがイライラマックスでご機嫌取りしなきゃってあたふたしてましたよー?でも、みんな何していいかわからず私召喚ですよ!私召喚もどうかって思いません?最近あれですか?降谷さんになんかあったら八神を連れて行けでも始まったんです?あたしにしたら完璧なるご褒美ですけどね!降谷さんにとったら邪魔者であっても、邪険に扱ったりしたらダメですからね。邪険になんかされたらガチ泣きします(真顔で言ってのける彼女は本気そのものであろう)ま、あたしの事はいいとして…降谷さんみんなに愛されちゃってますねー。みんなに心配されるってそうそうないですよ。それも上の人が!だいたい上の人の文句しか言わないのに、心配って!どれだけ部下に愛されて気がすむんですか!降谷さんは本当に人を引き付ける人ですね。もう!降谷さん!いろんな人に好かれすぎて変な人に引っかかったらどうするんです?私みたいな!面倒で言うこと聞かない、我が儘で…人の話を聞かないでしたっけ?そんな人に好かれちゃったら大変なんですからね!だけど、もう遅いです!私は降谷さんの事大好きで大好きでしょうがないんで!ぜーったい嫌いになったりしませんし!(何回も言ってますけど!なんて呟きながら彼を見る。そして、穏やかな表情をしながら、)降谷さん、毎日お疲れ様です(背伸びをして、ギリギリ届く位置にある彼の頭を軽く撫でる。数度撫でたら、ゆっくりと手を戻して、)降谷さんがいつもたーくさん頑張ってるの知ってますよ?大好きな物守るために一生懸命ですもんね。降谷さんが一生懸命になったぶんだけ誰かが絶対に笑顔になってるはずです。目に見えなくても、絶対に。そーんな、頑張り屋さんな降谷さんが私は大好きなんですよ。だーけど!疲れた時はちゃんと疲れたって言うんですよ?でないと、気づかない人だっているんですから!サインだしてくれたら、ちゃーんと助けに行きますんで!後ですね、無理かもしれませんが!甘えたっていいんですからね!なんなら、また優理ちゃんの膝枕とかしてあげたっていいですし?悲しいくらい小さいお胸だって泣くために貸してあげれますからね。見られるのが恥ずかしいなんて言うんなら、お家ご招待するんで!それなら、誰にもみられないでしょ?プラス愛情たっぷりのごはん付きです(ステキな得点だと思いません?なんて、冗談交じりに彼に告げて。さて、どこまで彼が本気でとらえてくれるのだろうか。彼がしてほしいと言えばすんなりと彼女はやってのけるはずだ。彼を喜ばしたいという意味では公安一思っているのはきっと彼女のはず。彼が安らげるのであれば、なんだって頑張れる。ただただ、大好きな人の大好きな笑顔が見れますように、と!)

なんか寝言が聞こえたと思ったんだが、起きてたのか?

 

まだ報告書仕上げられてないのか? なんだこの報告書は!! 誰だここにゴミを置きっぱなしにしたのは!(誰から見てもイラつきMAXだということはすぐに分かるであろう荒れっぷり。―ああ、まるで子供のようだと頭ではわかっているけれど思わず口調を荒げてしまう。ふぅ、と息をついたとしても気持ちが落ち着くことはなくもやもやとした気持ちは募るばかりで、心当たりと言えば徹夜していたこともあるけれど、それもこれも全部   ――浮かんだ顔にグッと拳を強く握り顔を歪めてしまうのだけれど、その顔が見えたのだろう部下が「ひっ、」と小さく悲鳴をあげたのが聞こえハッと目を開いて。これでは本当に子どもではないか。部下に思い通りにならない事にただ当たっているだけだ、と。これではいけない、くしゃりと頭を掻き、申し訳なさそうに息をついたなら、)悪かった…少し空気を吸ってくる。(気持ちを入れ替えてくる、と屋上へと足を運ぶのか。屋上への扉を開けたのなら吹き抜ける風と広がる青空にゆっくりと息を吸う。歩を進めて眺めた景色には、変わらず自分の守りたいものがそこにあって。それなのに、あの男は…。いや、今はあいつの事は考えないで目の前の事を考えるようにしよう、と、また景色をじっと眺めていたのならふと後ろから本日は聞くことがないと思っていた声が聞こえ振り返ろうか。そこには非番であるはずの彼女が居て少しの動揺を見せたのだけれど気づかれただろうか。なぜ、と開こうとした口は何となく察することが出来てそっと閉じたのだけれど。)…八神、……ッ!今その名前を出すな!!(過剰に反応してしまったその名に、ハッとなり顔を歪めながらもまた気持ちを落ち着けるべく再び振り返り景色を見ながらくしゃりと前髪を掻き上げるようにして隣に並んだ彼女をちらりと横目で盗み見た。)それなりに反省はしている。それからお前が呼ばれる理由は俺にもわからない、あいつ等が勝手に八神に声を掛けているんだから俺に聞かれても分かる訳がないだろう。…だが、そうだな…やっぱり、お前が居ると気が抜けるな。(ふっと息をつけばもやもやとした気持ちはこの景色と青空と彼女のトークによって少しずつなくなっている様子。「さっき、声を荒げて悪かった。」そう囁くように告げた言葉は果たして彼女に届いただろうか。)愛されて、って、あいつ等怖がってただけだろうに……いや、そうか、そんなに心配かけてたのか。…っふ、俺の話覚えてるんだな。そう、もう引っかかってるみたいで大変なんだ毎日。だが、そんな毎日も…悪くないと思ってる。(彼女の顔をそっと見ながら細められた目に浮かぶのは優しさか。それはまるで、先ほどまで見ていた守りたいもののそれと限りなく近いものに違いない。撫でられた頭に驚きながらも振り払うことはせずに彼女の気が済むまでそのまま―、そして告げられた言葉にそっと目を瞑り確りと聞いては、)…本当、お前は……そんなこと俺に言ってくるのは八神だけだぞ。それに、…欲しい時にそうやって…。…いや、なんでもない。疲れてもいないし…何もなくてもお前なら本当に飛んできそうだな、…あ、…嫁入り前の女がそう男を易々と家に招待するもんじゃないだろう。行ったところで…何かされても困るからな。(なんて、意地悪な笑みを浮かべながらそう言葉を述べようか。次いで「何もいらないよ」と本音を告げよう。そう、彼女がその場に居るだけでなんとでもなりそうだ。その真意に彼女が気付くかどうかはわからないけれど。ふ、と思いついたように顔を上げて、彼女の居る方とは逆側に顔を向けながらぽつり、ぽつり、と。)ただ……一度、もう一度だけ。名前を呼んでほしい。(それだけで、探偵でも組織でもない、本当の自分で居られる気がするのだから。―もしも彼女が聞こえていなかったり拒否したのであれば「なんでもない。」等と誤魔化すつもりであるけれど、呼んでくれるのであればまたそっと目を瞑り自分の名前を脳に焼き付けるようにとするつもりで。―)非番なのにわざわざ悪かったな、俺は戻る。…ありがとう(ぽんっと軽く頭を撫ぜれば、「今日は家まで送ってけないぞ」と穏やかな表情でからかったなら屋上から立ち去ろう。穏やかな気持ちに、気が休まる感覚に、これだから、きっと自分に何かあったときに彼女が召喚されるのだろうと、今更理由に気付くことが出来て思わず笑ってしまう。彼女曰く心配をかけたのであろう部下たちに謝罪を忘れずに行って―。)