八神優理 降谷零





甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司

06

零さん…なんてみんなの前で呼んだら驚かれますかね?風見なんて二度見しそう!


だー!もう!ふざけんな!なんなのよもう…!(大声を出しながら壁を拳で叩く様子は誰が見てもイライラしている様子である。事件にて駆り出されていた彼女。今回の事件と言えば、殺人犯を捕まえて連行すれば終わり。―、最初はそう思っていたのだ。殺人犯を捕まえ、連行する最中に犯人と行った会話。それが彼女のイラつく原因となっていた。まじかに居た同僚が犯人の言葉を止めていなければ、きっと手を出してしまっていたであろう…。壁を殴った拳を見て、もう一度その拳を壁に殴りつける。大きな音が響き渡る。それを聞いているものが居るのかそうでないのか…。どちらにせよ、今の彼女にとってはどうでもいいことで、)わかってる…わかってるよ…だから、頑張ってんじゃん。どうにもなんないじゃん…性別だって力だって…頑張りが足りないなんて自分が一番わかってんだって…!言われなくても!(犯人を捕まえる際に腕を握り捕まえた―、捕まえたのだが彼女は犯人の振りほどく力に負けたのだ。同僚がその時すぐに取り押さえたが、彼女の中では自分のせいで犯人を取逃してしまう映像が流れた。同僚に何度か名前を呼ばれ現実へと戻り一連の動作をおこなえていたが、パトカー内で犯人に言われてしまった。事実を言われてしまえば返す言葉さえも見つからない。同僚が止めてくればければもっと言われていたであろう、壁を背にしずるずると床へとしゃがみ込む)なんで…女かなぁ…。男に産まれてたらよかったのかなー。でもなー。女でよかったって思う部分もあるけど…この仕事だからかな。本当に嫌になっちゃう。言われるのだってわかってたんだけどな。面と向かって言われるとこうも…くるもんだなぁ…(頬を伝う涙の感触を彼女はわかっているのか。上を向ていてぼーっとしていれば、聞こえる足音。ゆっくりと顔を正面に向け、)降谷…さん…?わー、降谷さんだ!どうしたんですか?あれー?もしかして寂しくってあたしに会いにきたとかです?もう!それならそうと言ってくれれば飛んででも会いに行くのに!(彼の顔を見た瞬間、先ほどの雰囲気など感じさせない様に笑顔見せるのだ。彼にバレないようにと、)というか…降谷さん、いつからここにいますー?なーんにも聞いてないですよね?聞いてたとしても忘れてくださいね。お願いします(ね?なんて、首を傾げて彼に告げて、あ、でも…と言葉を紡ぎ人差し指を立てて、)一個だけお願い聞いてくれません?一個だけで良いんで!そっから動かないでくださいね!(彼の後方まで行くと、一度戸惑いながら彼の背中に抱き着くのだ。どんな反応を見せようとも離すつもりはなく、)ねー。降谷さん。明日からまた頑張りますんで。ちょーっとだけ甘やかしてください。またね…いつもの笑顔振りまくんで…。たくさん、たくさん頑張ります。降谷さんにも迷惑かけない様に頑張ります。だから…だから…(紡いでいく言葉の途中で止めていたと思った涙がまた流れてくる。止め方を忘れたように流れてしまう。わかっていた、彼を見たら甘えてしまうと)いらない、なんて言わないでください。…れーさんに言われたら、絶対に…立ち直れない…!他の人に、言われるのは…構わないけど…れーさんに言われたら…絶対に立ち直れな…い。大好きな…人に言われたら絶対に立ち直れない…!(彼の背に額を強く押し付けて伝えるのだ。この状況がすでに迷惑だとはわかっている。わかっているのだが、止められない。こんなにも弱い自分なんて見せたくなかったのに…。そして、小さく呟くのだ、)零さんは…本当にずるいなぁ…。

絶対呼ぶな。……フリとかじゃないからな。呼んだらもう甘やかしてやらないぞ。

 

(今日の捜査は早くに終えることができて公安部所へと難無く戻ることが出来た。もう一つの顔として活動している探偵業の方も依頼が落ち着いている為ゆっくりできそうだ。報告書を書き上げて、部下の報告書も確認をして、それから事件に駆り出されたいた部下たちからの報告を受けていたりとしていれば、ふと自分の携帯に着信の報せ。それは、もう一つの事件に駆り出されている部下からのもので。もしかしたら現場で何かあったのでは、と電話を取ったなら挨拶の次に出た言葉は事件は解決し犯人は連行したとの報告。なんだ…良かったと安堵に軽く息を吐いたのだけれど「でも…」と言い淀む声。「どうした?何か気がかりがあるのか?」眉を上げ声の持ち主に先を促したのなら、出てきたのは彼女の名前で。何故そこで彼女の名が出たのか、驚きつつ簡単に流れを聞いたのなら、労いの言葉をかけて電話を切ろうか。―いつだったか、自分に何かあったときには彼女が召喚されるとかなんとか。その逆も当然のように存在していたようだ。ふう、とため息を吐いたのなら、部所にいる部下たちに少し出ることを伝えて歩を進める。向かう先は、部下からの情報とそれから、勘だ。―歩いていれば、ふと聞こえた大きな音。足音を立てないように少しずつ近づいていったのなら次いで聞こえたのは彼女の声か。悲痛な声と叫び、いつも笑顔で自分の名前を呼ぶ彼女からは想像もしなかった。簡単に話を聞いてはいたが彼女の心には相当な傷を残したようだ。壁に背を付けて天を見上げ、そっと目を閉じようか。―自分はどうやらだいぶ性格が悪くなったようだ。否元から悪かったのかもしれない。彼女の普段からの姿とは違った弱弱しい場面や本音が、盗み聞きであれど見て聴くことが出来た事が安堵とほんの少しの嬉しさを感じてしまっているのだから。―少しの時間そうしていれば、腕時計で時間を確認し今度は足音を立てて彼女の方へと近づいていこう。どうやら足音に気が付いた様子で、目の合った弱弱しい彼女を目の当たりにするとやはり嬉しい反面、調子が狂ってしまう。のだが、自分の顔を見た瞬間口を開いた彼女は、いつものそれだった。)―ああ、俺だ。残念ながら特に寂しさも感じていない…もしそうだったとしても、会いになんか来れなかっただろう?(なるべく彼女の顔を見ないように、肩を竦めつつ冗談半分でそんなことを告げようか。彼女の表情を窺い知ることはできないけれど、)さあ、どうだろうな。いつからなんて言ってもいいのか?………善処しとく。(からかうように笑みを浮かべつつ告げたのなら、次いだ言葉には首を傾げよう。「一個だけだからな。」なんて了承したのならば、その場で動かないようにするのだけれど。後方へと向かう彼女を見送ったのなら、その後に感じた背中への重みと温もりに目を見開いて驚くのだけれど、きっと後方に居る彼女には気付かれなかっただろう。はがしてやろうか、とも思ったが彼女のお願いを了承したのは自分なのだからとため息一つでなんとか抑えて。)ふ、何言ってるんだ。いつも八神の事甘やかしてるだろ。……ただ、そうだな…今の笑顔は正直に言って気持ちが悪い。だから、…(甘えるように、弱い姿を見せる彼女。いつもの笑顔で喧しくて人の話を聞かない活発な彼女も彼女そのものなのだけれど、その部分しか見れていなかったことに寂しさに似たものを感じていたのかもしれない。もしかしたら同僚には見せていて自分にはその姿を見せることはないのだと。―だから、ちゃんと吐き出すことも出来るのだと、自分の前でもこうして、涙を見せてくれるのだと、安堵したのだ。服がどんなに濡れたってかまわない。今だけは、とことん甘やかしてやろうと抱き着いている手を上から添えるようにして触れたのなら、)いらない、なんて今更思わない。そんな風に思ってたならとっくのとうにここに八神優理は居ないはずだ。お前が居たから、解決できたこともあるだろう。…それに、他の奴らも八神が居ないと困ることがいろいろとあるらしい。(主に自分のことに彼女がよく出動しているらしいのだから、と思わず笑ってしまう。)相変わらず恥ずかしい事を恥ずかしげもなく言うな。―…ああ、そうだ八神、どうやら俺はいつの間にかお前専用のお守り担当になってたらしいんだが。このままだとセットに見られる。(少しでも彼女が落ち着くようにと手をぽんぽんと一定のリズムで優しく叩きつつ浮かべた笑みはなんとも優しいものだ。冗談を交えつつ彼女の涙が止まるまで、その背中は貸してあげるつもりだけれどどれほどの時間となるだろうか。どのくらいになったとしても、気が済むまでは付き合うつもりなのだけれど。)それは、こっちの台詞だ。   優理。(呼ばれた自分の名は、変わらず自分を降谷零でいさせてくれる。そう、唯一無二、彼女だけなのだから。)