八神優理 降谷零





甘えたわんこ部下 トリプルフェイス上司

07

最近どうやったら降谷さんをときめかせられるか悩んでるんですけどいかかでしょうか?


(彼に泣きついた翌日―。休みであるはずの彼女が当庁した理由とは…泣いたそのまま仕事場に戻ることもできずに自宅へと帰ってしまったため、皆が帰ったであろう夜中に片付けに来たのだ。見事に誰もいない部屋に今日はみんな帰れたんだなーと喜びながら自分の付けへと足を運ぶ。するとそこにはお菓子の数々が。小首を傾げてお菓子を手に取り考えるところ数十秒―。あーもう!と笑いながら、)みーんな、心配してくれてたんだ。もう、こうやってあたしを甘やかすからあたしがつけあがっちゃうって…わかってんのかなぁ。本当にここの人たちってみんないい人たち!自慢したいのにできないのがもったいない!(ありがとうございます。と、呟きながらぐるりと見回してふと気づく。彼の椅子にスーツの上着がかかっていることに。彼の机に近づいては、)あれ?降谷さん今日帰ってないのかな?それとも…忘れ物?でも…降谷さんが忘れるって事ないし…それとも事件があって忘れた?何にしろ…降谷さんに今日会える…?(仕事やる気でる!なんて、喜ぶ彼女の姿はきっと子供であろう。よし!と腕まくりをして机へと向かおうと身体をそちらに向ける。向けたのだが、足は動かない。数秒考えて、再度彼の机へと身体を向ける。その視線の先にあるのは彼の上着である。じっと彼の上着を見て戸惑いながら手を伸ばす)あー。これ見つかったら絶対怒られるんだろうな…。それか呆れられる?それとも嫌われる?でも…ちょっとだけ…ちょっとだけ…(まだ、帰ってこないよね?なんて扉の方を見るけど彼がもし帰って来て気配を消しているのであれば彼女に気づくことはできないのであるが。ゆっくりとした動作で彼の上着を羽織れば、わーっと言葉を漏らしながら袖を握って)大きい!すっごい!降谷さんの臭いがするー!すっごい幸せ!あーもう!これだと、あたしただの変態な気がする!降谷さん限定の変態!わかってるけど…人間の理性って…(ふっと視線をそらすと、窓ガラス越しに写る自分の姿に気づく。はたから見ればとても不恰好なその姿に幸せを感じてしまう自分。彼の事が好きで好きでしょうがないのであるけれど、こうやって迷惑をかける事しかできない自分。彼が好きになってくれるなんて到底思えない)良くて妹あたりだろうな。目の離せない妹?だから気にかけてくれる感じかなー?言ってて悲しくなるけど…それでも…甘やかしてくれたり構ってくれないのよりましなのかな?というか…あたしが欲しがり過ぎなのかな?(んーっと考えていると感じる気配に素早く上着を脱ぎ元の場所へと戻し何事もなかったように自分の机に付く。さて、今から仕事を始めようかと言った姿勢をしたときに開いた扉に顔を向ければ、)降谷さん!今日もお仕事お疲れ様です!今日も降谷さんに会えるあたしは幸せ者ですね!あたしに会えた降谷さんもきっと幸せってところですよね?(冗談めかしに言葉を投げかける。そして、彼の姿をキラキラした瞳で見つめる。かっこいい…と小さな声を漏らしたのに彼女は気づいているのかどうなのか…)降谷さん!上着脱いでる姿初めて見たけど、その姿もかっこいいですね!というか、降谷さんならどんな格好してもいい!そのまま袖まくってくださいよ!そしたらなんだろ…こう胸がきゅんってなっちゃいそうです!もう、これなんてご褒美ですか?これ以上降谷さん大好きにしてどうするんです?ただ、降谷さんに対しての面倒スキルが上がるだけでまったく得しませんよ?今でも十分面倒な子なのに!(もう!っと頬を膨らませて彼を見るのだ。彼はいったいどんな表情をしているのだろうか、呆れる?引く?どちらにせよきっと彼女の行動は全く変わることはない。そうだ!と、思い出したように急いで彼の前まで行けば、とびっきりの笑顔で告げるのだ、)零さん、今日もお疲れ様です!いつも頑張ってる姿ちゃんと見てますよ。それにかっこいい姿もちゃーんと、目に焼き付けてますから!誰も頑張りを見てないわけではないですからね?零さん、大好きです!(徐々に照れた表情になっていくのは何故だろうか。いつもなら…なんて視線をそらしてふと気づくことがあった。扉を開けた時足音があったか…。もしかしたら、自分が気づかなかっただけかもしれない。でも、足音なしで扉を開けたのであれば…不安そうな顔をしてちらりと彼を見る。さて、この視線に彼は気づいてくれるのだろうか。気づいたとして真相がわかるのか。それはきっと彼の気分次第になるのであろう、)

……俺に聞くな。そんな事考えてる暇があったら手を動かせ。

 

(彼女がそのまま自宅へと帰ってしまった日。部署へと戻ったのなら彼女と現場が一緒だった者を中心に皆がそわそわとしているものだから、ため息交じりに「今日八神は戻らないぞ」と聞こえるように告げたのなら、そうですよね…と口々に表情に心配を携える部下たち。ざわりと部署内が暗く落ち込んだように見えたのだけれど「八神なら大丈夫だ。」と自然と出た言葉には力強く同意するように皆が頷いてみせた。自然と口に出た事に自身はほんの少しの驚きを感じたのだけれど皆は気にすることも無くやいのやいのと盛り上がりを見せているものだから「まぁ…いいか。」なんて。――しばらく時間が空いたのならいそいそと各々が隠し持っていたり買ってきたお菓子を彼女の机へと置いていくものだから思わず苦笑いを浮かべてしまったのは許してもらいたい。)…あまり八神を甘やかすなよ。(謝罪の言葉がちらほら聞こえるが増えていくお菓子の山。彼女という存在の大きさを表しているようで、彼女が必要なのだと言っているようで。これを見たときの事を想像しては小さく笑みを浮かべた事はきっと誰にも気付かれていないだろう。――そして翌日。夜中になり仕事を終え帰っていく部下を見送り今はただ一人。ちらりと向けた視線の先、今日は休みであった彼女の机にはやはりまだお菓子が並べられていて。昨日よりも増えているのでは…?なんて疑問を感じながら机からあるものを取り出し彼女の机へと足を運ぶ。色とりどりのお菓子の数々に一度こつり、ノックをするように机を叩いて。)…お前の事をいらないなんて、誰も思わないさ。(そう呟いた表情は柔らかいもので。机から取り出し手に持っていたキャラメルをお菓子の山の中へ紛らわせるように置いた。いつだったか、喫茶店のバイト中に女子高生達がわいわいと盛り上がっていたのを思い出してふいに手に取ってしまっていたそれ。意味なんかなくても、彼女がそれに気づくことがなくても、ふっと先日部下たちに注意をしといて自分も同じではないかと呆れと共になんだか可笑しくなってしまう。)……これじゃあ、人の事なんか言えないな。(クツクツと情けなく眉を下げつつ笑みを浮かべ、くしゃりと前髪を掻き上げたのなら少し外の空気を吸おうかと屋上へ足を運ぶのか。―大切なものが見えるあの景色は落ち着く、そしてあの時非番の彼女が来てくれた出来事も忘れることのできないものになっている。「甘やかされてるのか…甘やかしてるのか…」そんなのどちらでもいいか。―本日の報告を頭の中で纏めながら、次のポアロの新作を考える余裕も出来るほどには気分転換ができたようで。ゆるりと部署へと足を動かして、扉へ 向かう前で止まった。自分一人だけだったはずだが物音がする、声がする。警戒するように気配を足音を出来るだけ消し様子を探るべく近づこうか。―、八神か?―彼女が居る事に疑問を感じることになるのだけれど対して警戒してしまった事にほんの少しの疲れを感じつつ彼女ならばいいか、と一歩踏み出そうとした足は自然と止まることになる。)〜〜〜〜、!!(何やってんだアイツは!! そう心の中で叫びながら自分の上着に袖を通す姿に嬉しそうな姿を見てしまったのなら、深いため息を吐きながら思わず頭を抱えて。何というタイミングで戻ってきてしまったものだと、遠くを見つめながら再びついた何度目かわからないため息に頭を上げる。上着を脱いだ彼女を見届けたのならやけに重たく感じる扉を開けて彼女を見据えようか、)ああ、八神居たのか。……はいはい、今日も変わらず絶好調みたいだな。(投げかけられた言葉にいつもの調子でため息交じりに返したのなら腕を組んで。彼女の小さな声は届かずに少し首を傾げることになるのだけれど次いで出た言葉たちには目を丸くして聞いていく内に思わず口元を引き攣らせてしまう。)あのなぁ…、お前は本当に…とうに知ってる面倒がさらに上がるのは困りものだな。だから袖はまくりません。(絶対にと言いたげに組んだ腕は解こうとせずにきっぱりと告げる。その表情はどこか楽しげにほんの少し緩んでいる事に違いない。―すると、急いだように自分の前へとやってきた彼女に思わず首を傾げて、)……、はいはい。…わかっているよ。皆が、…お前が、   優理が見ていてくれていること。だから俺はここにこうして居られるんだ。(彼女の真っ直ぐな言葉にふっと柔らかな表情を浮かべては自分も真っ直ぐに応えよう。ふと、逸らされた視線、しばらくすれば不安そうにした顔でこちらを見る様子になんとなしに彼女の考えを察することができた。先ほどの表情はどこへやら、意地悪気な笑みに少し目を細めては、「上司の上着を羽織るのは、どうかと思うがな。」なんてちゃっかり見ていたことを告げてみよう。さてさて、彼女の反応はいかなものか。―どんな反応であっても楽しげに笑ってしまうことに違いはないはずだから。)