日生あい アシュヴィン





忠誠心篤い女官 常世の国の皇子

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設定/関係性:アシュヴィンさんと一対一で会話する機会は少なく、千尋とアシュヴィンとリブの四人が一緒の空間で、話している千尋とアシュヴィンをリブと一緒に見守ることが多かったため、個人的な交流は少ない。ひめさまの仲間、というくらいの距離感。

アシュヴィンさま。…ひめさまを泣かせたりしたら、絶対、ぜったい、許しませんからね…!


(政略結婚、というのは、少女にとっては当たり前の、けれど、現代での日々の思い出からすれば当たり前ではない。そんなよくある受け止め方をする物事の一つだ。最愛の姫様がまだ、恋をしていないのは幸いといえば幸いだろうか。相手としても、悪くはない――もちろん、立場としては。彼の人間性は自分よりも姫様の方がよくわかっているだろうし、彼女とどう付き合っていくかが大事なのだから、自分はただ彼女に従うだけ。)…花嫁衣装、似合ってるよ、ちいちゃん。(白い衣装を着つけて、髪を整えて、最後に彼女の手元に白い花を添えて微笑んだ。)きれい。とっても、きれいだよ。(笑って彼女と手をつないで、大切なものを握りしめるように、こつんとお互いの額を会わせた。大好きなあなたを聞かざるこの役目は、そばにいて、お世話をする役目は、たとえ結婚というものが形になったとしても変わりない。常世の国へと連れて行ってほしいと懇願したのは、二人の結婚が決まってすぐのことだった。姫様の控えの間から出ている間の護衛は幼馴染の二人に頼んで、狭井君へと準備が完了したことを伝えたその帰り道、見知ったその特徴的な挑発にあ、と、声が漏れた。)………、失礼いたしました。ひめさまのご準備は整っております。今日のよき日を、心よりお慶び申し上げます。(丁寧な、臣下としての礼を取る。彼が姫の夫となるのであれば、彼にも忠節は捧ぐべきであろう。勿論のこと、最優先は姫様であることに何の変わりはないのだけれど、それでも、天鳥船にいた頃よりも彼の存在を上位に置く姿勢。――けれど、まだ。まだ、婚姻の儀は終了していない。)アシュヴィンさま。……どうか、ひめさまを大切になさってください。とてもやさしくて、お強くて、わたしたちの自慢の、大好きな人なんです。お国同士の、難しいことは女官にはよくわかりませんけれど、…どうか、姫様が悲しみに沈むような、そんな非道をなさらないでください。喧嘩しても、仲直り、してください。わたしたちの、ひめさまを………(ぐす、と、鼻をすすった。)わたしたちの誰よりも大事にして、愛してください。ひめさまの、強くてかっこいい「ひめさま」の部分だけじゃなくて、もろくて弱い、女の子の部分も、ちゃんと大切にしてください。(とらないで、とは、言わないから。私たちの大切な人をきっと幸せにして、と、いつもよりもほんのりと化粧をした顔を潤ませて訴えた。そんな、結婚式当日。)

…まさか、女官に許さないと言われるとはな…。いや、…当然ともいえる。

 

(政略結婚。それが一番効率のいい策なのだと、そして常世の国の皇子である以上、このような形の結婚にも決して抵抗はない。いずれやってくることが今だったのだとそう考えていたのだから。その相手がまさか敵対していた中つ国の姫様であるとは思っていなかったけれど。―あの時の出会いから自分自身、強くあろうとする気高い姫の存在には興味に似たものを抱いていたのは事実。だが敵対はすれどそれがまさか結婚相手となるとは…、国の為である以上承諾せざるを得なかったのだろうが、お互いにきっとまだ恋といえるには満たない気持ちを抱いているのだから複雑に違いない。仲間となり共に行動することとなってからは、交友を深めてはきたものの、だ。仲間から夫婦とは、なんともハイスピードな展開。もしも他に想い人が居たのであればなんと悲しい事か。それでも、と結婚という重大決心に乗った姫様には素直に感嘆しているのだ。――男女問わず誰にでも、温かなニノ姫殿。そんな彼女との結婚式当日。最近まで結婚について文句を言うものもいたが当日に近づいてくると彼女の気持ちの強さに誰も何も言わなくなり、否言えなくなり、今静かに結婚式の準備が執り行われている。)おい、リブ。(忠実な自身の側近である彼と今日の結婚式の工程、今後の事等を一頻り話せば持ち場へと戻っていく彼を見送ったならふと後ろから薄らと聞こえた声に体を半分そちらに向けてその存在を確認しようか。そこに居たのは、)…これはこれは、ニノ姫の。ふ、そうか、感謝する。…(よく姫と話していると自分の側近と共に傍らで見守っている彼女。よくよく姫との会話で出てくる一人で彼女をひどく可愛がっている事は話を聞いているだけでも十分という程に分かったことだ。姫についてここまで来た彼女の忠誠心も強く感じることができる。―そんな目の前で顔を潤ませる彼女の、心は、瞳は、自分のものとは比べ物にならない程に、綺麗だ。いつの日か、姫様が笑顔でそんなことを言っていた。)――なるほど、姫殿が言っていた事がよくわかる。…そんなこと、わかっている…と、言葉にするだけではお前も納得できないだろう。俺も言葉だけにするつもりはないが、…これからも見ていればいい。お前たち以上に大切にできるかは保証しかねるが、俺なりに愛して大事にするさ。(くつくつと喉を鳴らしながら自信ありげに伝えたのならそっと彼女に一歩踏み出して。潤んで揺らいでいる瞳を見るために彼女の頬に手を添えて少し顔を上へ向かせるようにしたのなら、ふっと浮かべられた笑みはほんの少しの優しさがあるのだけれど果たして彼女は気付くだろうか。)あいが、泣いていると知ったら俺が奥方殿に捨てられるかもしれないな。(婚儀が始まるまでには、揺らいだ瞳がどうかいつものあの真っ直ぐな瞳に戻るように願って。)