アリサ サンジ
雑用係兼戦闘員 コック兼戦闘員
01
サンジ、春のデザート、食べたいんだけど。
(春島の気候は昔から好きだ。ぼさぼさの髪とぼろぼろの服、働き詰めで連れ回されていた頃は夏の暑さも冬の寒さも天敵だったから、春と秋のやさしい暖かさをいつも楽しみにしていたような気がする。――次に立ち寄る島には見事な大木が連なった桜のトンネルがあるらしい、とは我が一味が誇る航海士による情報で、語る声色があんまりたのしそうだったから、すっかり自分も彼女と行くつもりになっていたのに、である。島の船着場につくなり、彼女はひとりで買い物に行くとにんまり笑顔で言ってのけた。まさしくその瞬間に彼女の企みに気付いた己はきゃんきゃんと喚こうと口を開いたのに、物陰から出てくるその姿にぐっと言葉を詰まらせたとなれば、結果としてそれは叶わなかった訳だが。――意味ありげに微笑んで手を振り船内へ消えゆく背をきりりと眦を釣り上げて睨みつけたあと、固く噤んでいたくちびるをやっとのことで持ち上げたのは、甲板にふたりきりになって数十秒の間をおいてのことだったけれど)………春島、すき?(――ルフィひとの肉とんないでよ!ゾロ、アタシも筋トレする!だなんて喧しく騒いでいる普段より幾分も小さく呟いた。穏やかな潮騒にも紛れてしまいそうな、そのあんまりな弱々しさに自分がいちばん戸惑っていて、ぎゅっと眉間に皺を寄せたのは反射的な癖だった。それでも潮風に晒す頬の熱は隠せないまま)あたし、春島すきだから降りるの。桜のトンネル見に行きたいし、その途中だったら買い出しとか………付き合えるけど。(「サンジと行きたい」の一言だけがつっかえて上手く出てきてくれなかった。なんて可愛げのない台詞なんだろうと益々眉根が寄りそうになって、自分が顰め面をしていたことに漸く意識がいくだろう。違う違うこんな顔じゃだめだと口角をぎこちなく持ち上げたのは笑顔のつもりで、あんまり上手くいってるような気がしないけれど、それでも笑いかけたいと思った表れだった)荷物持ち必要でしょ、引き受けてあげるって言ってんの!ルフィは言うこと聞かないし、ゾロはすぐ迷子になるし、あたしの方がまだマシだと思うけど!(なんて重ねて並べ立てる胸の内はどきどきと煩いくらいの音がしていて、心臓が破裂しそうだったという事実に、きっと彼は気付いていないだろうけれど、これでも精一杯の勇気を振り絞った結果だったから拒否されてはたまらないとばかりに「下で集合ね!わかった!?」と畳み掛ける。――肯定的な返事しか聞きたくないとばかりの態度の裏、もしも望む返答が彼の口から紡がれたなら少女の顔は間違いなく綻んだだろう。それも、ごく自然な、ありのままのそれで)
ああ!アリサちゃんの分ももちろん準備するよ。
(もう少ししたら春島につくのか、安定した緩やかな優しい暖かさがとても気持ちがいい。スーツの上着を脱いでもさほど問題ないであろう。清々しい天気に気持ちも上がり嬉しそうにキッチンにて作るのは春島での探索を終えて戻ってきたクルーの女性たちに送るスイーツたち。男性陣には別にと簡単に作ったものが既に用意されているのだけれど、明らかな差には文句は言わせないつもりで。もちろん、これから立ち寄る春島でも買い出しを行い、その名産を使うスイーツも作るつもりなので女性たちには今作っているスイーツと春島名産スイーツのセットをお配りする予定だ。と、ちゃっかり予定を組み込み、考えながらも出来たスイーツは当然ながら力作だ。早く彼女たちの喜ぶ顔がみたいと思わず顔が綻んでしまう。――船着き場につくなり着いたぞー!!と元気いっぱいな船長の声と共に楽し気にさっさと降りていく姿に呆れつつも甲板へと足を向けたならそこにはまだ降りてない野郎共と、ふわりとした髪の毛にくりっとした瞳が可愛らしい、恥ずかしがりやな彼女がいるのだから一目散に向かい優しく笑みを浮かべたなら、)アリサちゃん、今日のスイーツもう少しで出来るから楽しみにしててね。(今日のスイーツはセットであることは内緒にしておこう、なんて小さなサプライズを用意しつつも声を掛けたなら、いつの間にやら彼女と二人きり。さて、買い出しに行こうか、彼女が船を降りるのなら無事降りられたかの確認してから行こうかと考え口を開こうとした同時に、聞こえた彼女の声に思わず目を丸くさせるのだけれど、)…ああ、好きだな。(楽しそうに眺めた視界は桜のピンクが揺らめいていて、楽し気にそう答えた。―明らかに他のクルーとの彼女の顔や声の違いに気づいたのはいつだったろう。自分は嫌われているのかもしれない、苦手なのかもしれない、そう何度も考えたりしたけれど一緒に旅をし続けてきて自分の事が苦手なのでは、という考えはぬぐえない部分があるけれど、嫌われていないということは何んとなしに感じられるから、今はそれだけで十分だ。そして、仲間として信頼してもらえていることも理解しているから。)…春島、ナミさんの話聞いてた時楽しみにしてたもんな。………、へ?(思わず出てしまった間抜けな声に驚きばっと手で口を覆ってみせれば、もう一度先ほどの彼女の言葉を頭に浮かべ考える。これは、期待していいのだろうか…?という気持ちと同時に見た彼女のぎこちない笑顔に、優しく笑みを浮かべ、)うん、じゃあ…荷物は持たなくていいから、一緒に名産品とか探してくれるかい?野郎共と行くくらいなら一人で行くつもりだったんだが…それに変なもの買いそうだしな。アリサちゃんが一緒に居てくれるなら安心だし嬉しい。(と、本心を伝えようか。「了解。準備終わったらすぐに行くよ。」果たして、彼女の望む返答が出来ただろうか?―彼女の綻ぶ顔を見られたなら、改めて自分は嫌われていないのだ、と。彼女が素直になれない恥ずかしがりやな、かけがえのない少女であるのだと照れたようにまた笑みを深くした―。彼女とのデート、楽しく無事に終わることを祈って、)
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