氷咲玲 氷鷹北斗
氷月 Trickstar
01
北斗、…一緒に帰ろう。
(昔から気付いたら彼は一番側に居た。多分、名を呼ぶことをしたのもほくと、という発音が先立ったかもしれない。玲は本当に北斗くんが好きだったわね、と冷たい声で着用する制服を睨みつける母にも言われていたので、多分間違いないだろうが。入学して一年、新しい二年のクラスにも馴染み始めた頃。転校生の少女が入学してきて、暫くは騒いだものだ。プロデューサーは特別有名でもない己のユニットにも挨拶をしてくれて、氷咲君は、氷鷹君の幼馴染なんだね、という言葉に、瞬きをした。彼がそんな話をするなんて、彼女には割と心を開いているのだと思い知らされる。そんな日々の中、レッスン後下駄箱をのぞけば、同じく終えて帰るらしい彼の姿があった。事前に校門前で、とは連絡していたけれどこれなら好都合。)北斗、(その背中に声をかけて、彼が振り返れば淡く微笑む。靴を取り替えて踵に指をかけて馴染ませながら、顔を上げる。相変わらず幼馴染はとても綺麗な顔をしていた。かっこいいな、なんて胸が少し高鳴るけれど知らない振り。)昨日まで母さんいたんだが、今日からまた居ないからお前のこと誘ったけど――夕飯何がいい?(ばあちゃんも通ってる施設のお泊まりでいないし。と返しながら、何がいいだろうかと肩を並べて歩き出す。米を炊いて和食、それなら何がいいか。煮魚にいいものがあったが少し時間をかける気がするし、さて。それとも洋食――悩む、なにせ彼の好きなものを作り、喜ばれたい。今日は久しぶりにゆっくり二人で話せる、別に――好きだから、とか、…そういうのも、あるけれど、それだけじゃない。)トリスタ、あんずさんと関わってから変わってきてるし、最近はどう?その話も聞かせて。うちのユニットは冬の活動から夏までの対策に切り替わっててさ。(暫くスケートともお別れだ。なんて笑いながら、その横顔を見つめて。――やはり、綺麗だなと思う。その背筋も伸びてて気持ちがいいし、何より、己に向けられる声が心地よくて。家までの道を辿りながら、途中スーパーに寄って足りないものを買いつつ、彼との帰路を、あと数分楽しむのだ。)
ああ、帰ろう玲。晩のご飯が楽しみだな。
(記憶の中のイベント事などには必ずと言っていいほど浮かび上がる彼。同じ年で側に居ることが当然だとでもいうように一緒に居た幼馴染。この学院に入学してからも、仲が良いのだ、と自慢してまわれるほどだ。祖母と同じくらい一番の理解者であり相棒であり、良きライバルであるのだと自分の中で彼の存在は大きいものであるのに違いない。―そんな二年生に進級し慣れてきたある日、転校生、プロデューサーである少女が入学し、我がユニットのメンバーの明星が転校生に絡んでからの話をしていたらTrickstarの協力をするという話になった。会話をしていく内に、)ああ、そうだ転校生。…同じクラスの玲、氷咲玲なんだが、あいつは俺の幼馴染なんだ。氷月というユニットに入っているからよろしく頼む。(大事な幼馴染の存在もしかと彼女へと宣伝したのならそれは満足そうな顔で綻ばせよう。――なかなかにハードになってきたレッスンを終えて下駄箱へ、後は帰るだけだ。一緒に帰ろうと彼と約束をし、連絡を受けていた校門前へ行こうと靴を取り替え履いて向かうと同時に聞こえた声は約束していた幼馴染の声そのもので、)玲、今校門へ行こうとしていたんだ。(振り返り告げたなら、ちょうどよかったな、と目を細めてみせて。靴を取り替える彼を焦らせないように見守っていようか。)そうか…母親が…。おばさんもいないのか?―なら、久しぶりにゆっくり話ができるな。…それなら、和食がいい。煮物が食べたい、野菜がごろごろした。(なんて夕餉のオーダーをしたのなら「行こう、玲」と声を掛け彼が隣に来たのならペースを合わせながら一緒に帰路へとつこう。会話をしながら時折相槌をうったりなんてして、)転校生がきてから、そうだな、やりがいを感じている。詳しくはここでは語りきれないから後で話させてくれ。玲のスケートがしばらく見れないのは残念だな。(彼のユニットのスケートショーは感動してしまう惹き込まれる綺麗さを持っている。ショーの内容を思い出して顔を綻ばせるのだ。スーパーへ立ち寄った際には、玲は何か食べたいのはないのか?なんて聞いてみたりして、楽し気に買い物を終えたなら帰路へと歩を進めるのか。――世間話やユニットの話、尽きない会話は食事会の時間で果たして語り尽くせるだろうか。まだまだ時間はあるのだから、今日はゆっくり、二人でいっぱい話そう―。今日の彼との時間は、始まったばかりなのだから。)
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