リズベット・マルティン ユーリ・ローウェル
「護り人の集い」 「凛々の明星」
01
ユーリ…?貴方、ずいぶん色男になったのね。見違えたわ。
(数日に渡る護衛の依頼を済ませ、フリーの時間を得た頃には夕食時であった。疲れ切った体をうんと伸ばしながら、己へのご褒美だと口元を緩ませ向かった先はダングレストでも美味いと有名な酒場だった。酒も美味い、料理も美味いと評判の店に入ると、既に賑わいを見せていたが席もちらほら空いているという塩梅。好都合とばかりに足取り軽く席に着くと、ウェイターに酒と料理を注文し上機嫌で暇つぶしの人間観察をこっそりしていると――ドアから見慣れぬ人物が入ってきた。艶のある黒髪に長身の男は、鑑賞に値するほど整った顔立ちで素直に美形だと思った。「すっごい上玉」なんて呟いては小さく口笛を吹いたが、なぜだろうか、見覚えがあるような気がした。似た面影を知っている、そんな気がして記憶を遡らせてハッとした。もしかしたら――と、思わず席を立って)――ユーリ?貴方、帝都に住んでたユーリ・ローウェル?(早口に名前を呼んで確認をするように訴えかけていた。引っ越して間もなくはよく思い出していた、彼ともう一人の幼馴染のこと。今ではとんと思い出さなくなっていたが、一度きっかけが訪れると懐かしさが一気に込み上げてくる。しかし、はたと我に返る。懐かしさのあまり食いつきすぎてしまった、と眉尻を緩やかに下げた。周囲から浴びる視線に「ごめんなさい」と微苦笑を浮かべると彼の元へと歩み寄りながら)…ごめんなさい、急に。私のこと、わかるかしら。昔、帝都の下町に住んでたリズベット・マルティンよ。フレン・シーフォと三人でよく遊んでた…まぁ、最後は10年前に会ったきりだから忘れてるかもしれないけれど。(そう言って肩を竦め、昔よりも背が伸びた彼を上目に見上げる。10年ぶりで容姿も昔と比べて変わっているというのに、妙に自信のある面持ちと心持ちだ。しかし、もしも彼が「思い出せない」と言うなら「思い出したら声掛けてちょうだい」と潔く引くつもりであり、また正反対の良い返事がもらえたなら食事に誘うつもりでいた。勿論、まだ見ぬ連れがいるのならその連れもまとめてである。さて、彼はどう答えるだろうかと反応を待ちかまえ、)
そういうお前こそ、随分背が伸びたんじゃねェか?それに、あー…綺麗になった。
(旅の途中、食材や回復用品を仕入れたり武器の手入れもしたいとの事で近くまで来ていたダングレストの宿で今日は休むこととなった。各々がしたいことをしており謂わば自由な時間ができた今、さて、どうしようかとベッドの縁に座り考えあぐねていれば最年長であるおっさんから「ダングレストで美味しいって有名の酒場があるから行ってみたら〜?」と提案がきたものだから、特にすることも決まっていなかった自分からしたら救いの手だ。行ってみるか、と腰を上げたなら酒場の場所を教えてもらい、一緒に行くというようについてくるラピードと共に酒場へと向かおう。―教えてもらった場所に目当ての看板があったのなら「ここか…」と小さく呟いて。相棒は中に入らず外で待っているつもりのようで、出入りする人の邪魔にならないようにと端の方で伏せをしたため「いい子で待ってろよ」と声掛けたのなら小さく鳴き声を聞かせてくれたのだから小さく笑って酒場へと入ろうか。有名だというだけあって既に大勢の人たちが既に酒に料理と堪能しており、それを横目に美味しそうな食事の香りに期待が膨らむのも無理ないだろう。空いている席がちらほらある、適当に席に着くかと一歩踏み出せば聞こえたのは自分の名。更には自分の住んでいた場所まで言い当てられたのだから、はあ?なんて怪訝な顔を見せてしまうのだけれど。こちらへと歩み寄る彼女の顔をじいっと見てどことなく感じる懐かしさ、面影に目を開く。その懐かしさの答えはすぐ彼女の口から出てそれを聞いたならハッとして、)…、お前、リズ?あのお転婆だったリズか?いや、忘れてねェよ。そんな薄情な奴だと思われてたのか…オレは。なんて、すっかり女らしくなってて最初はわからなかったけどな。フレンともたまに思い出したら話するんだ、三人で遊んだよなって。元気そうで何よりだ。(ふっと笑みを浮かべ、幼い頃の思い出を思い浮かべてはその当時と今の彼女のギャップに「10年って恐ろしいな、」なんて冗談交じりに呟くのか。彼女の誘いには、いいぜ、と快く答えてみせて。11年の思い出話とともにこの10年の話をつまみとして、この美味しい料理と酒を存分に堪能しようじゃないか。)あのお前が…こんな格好してるなんて知ったときには、フレンの奴驚くだろうぜ。(そこには、思い出の中の女の子は居なかった。面影はあるが、自分の隣には、一人の女性が座っているのみだ。)
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