頂きSS

私の、初めての依頼は失敗に終わった。

殺すべき相手を目の前にした瞬間。誰かの恨みを買ったことも露知らず、凶器を振りかざした私に対して恐怖を浮かべていたあの瞳を見て、ああ、可哀想に。、なんて。思ってしまったのだ。私はこの人が一体何をしでかしたのかは知らないし、誰に対しても分け隔てなく接していた態度には好意すら覚えていた。

それが、いけなかったのだ。


「ッ馬鹿!下がれ!」
「っせ、先輩……!」


血が、目の前を通り過ぎた。生暖かい雫が頬に飛び散り、それに気づいたときにはすでに後ろへ押されていた。咄嗟に身体を捻り体制を整え前を見る。舞燐先輩の片腕から血が滴り落ちている。

−……私を、庇ったせいだ。それに気が動転してその場で固まる私の方へ、一度先輩は視線を向けた。それからすぐに視線を戻して、動き出す。戦闘の時だけ見れる燃える炎の髪は、まるで彼岸花のように美しい。暗闇の中でさえ、血に飢え舌なめずりをしているように輝く刀と真っ赤な瞳に、またしても私は視線を奪われる。私と同じ赤い色の瞳は。どんな時でも、鋭く、妖しく。光り輝いていた。

そうしてあっという間に血しぶきが部屋を赤く染め上げる中、自身の傷へ一切関心を示さず、刀を鞘へ戻す先輩に恐る恐る近寄って。


「……舞燐、せんぱい、」


見上げ、冷たい視線が私を射抜く。スッと、先輩の手が持ち上がる。怒られる。即座にきゅっと目を瞑り俯いた。が、その手が振り落とされることはなく。


「怪我は」
「は、……あ、ありません、です……、」
「……いいか。殺すと決めたら迷うな。情は捨てろ。さもなくば、自滅するだけだ」


少しだけ。私の頭を撫でてから、先輩が横を通り過ぎた。呆然としてから慌てて振り返りその背を追う。その言葉は、新米の私にはとてもかっこいい言葉に聞こえた。まさに教訓だ。先輩からもらったお言葉は一生忘れない。そう心に決めたのだ。



……その数年後、この言葉が別の意味を成すことになるとは。この時の私は知る由もなかった。


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りうちゃから頂いた小説です。舞燐の後輩ちゃんである由良ちゃんとのお話!これをきっかけに、先輩!先輩!ってなる由良ちゃんなんですが、舞燐の言葉の真意を知ったときの由良ちゃんの気持ちを考えると、ウゥン…!(つらい)(好き)となります…。そして、お話とは関係ないのですが、由良ちゃんのセクスィーな洋服がめっちゃ好き。素敵なお話をありがとうございましたー!!

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