第一章(2/11)


クルーズ客船カクタス号の出港は、華やかな演出こそ無かったものの、多くの見物人から盛大に見送られた。
普段ここへ停泊しないカクタス号を見送る温かい拍手と、各地からやって来たポケモントレーナー達を鼓舞する歓声を背に、カクタス号は予定通り、ヒウンポートターミナルを出港した。

船上パーティのオープニングセレモニーは、船尾付近に位置するメインホールで行われるという。
出港まで先頭のデッキやバルコニーで声援を受けていたトレーナー達は、一斉に船尾へと向かうべく、廊下を歩きエントランスを抜け、ホールへと向かった。
どこを歩いても、船内とは思えないほど広く、豪華な造りをしていた。
ミツキと陽がホールに着いたときには、すでに多くのトレーナーやポケモン達がホール内を埋め尽くしていた。

「レディースエーンド、ジェントルメン! カクタス号へようこそ! 一泊二日の船旅、どうぞ楽しんで行ってくれたまえ!」

カイゼル髭を整えた男性が、よく通る声で開演の指揮を執った。

このパーティは二日間、移動する船の上で行われる。
船はイッシュ近海を周回したのち、再びヒウンの港へ戻って来る。
その間、乗船したパーティの参加者達は、各々が参加したい船内のイベントへ赴くことになっている。
イベントの内容は様々で、代表的なものはポケモンバトルトーナメントや、コンテストバトル。変わったものであれば、ポフレやポロック、ポフィンなどを対象にしたクッキングバトルや、人間とポケモンの混合チームで行うスポーツバトルを行うイベントもある。
トレーナー当人のスケジュールさえ合えば、基本的にどのイベントへも参加することが可能だ。

パーティの参加トレーナーはおよそ百から二百人ほど。その内、連れてきて良いポケモンの数は一人三匹までである。
多くのトレーナー達が自慢のポケモン達を引き連れて、このパーティを存分に楽しもうと意気込んでいた。

「よっしゃー! やってやるぜ!」

大衆の後列付近でそう意気込む陽。
それに対し、周囲の人々からは笑い声やからかいの言葉が飛び交った。
そんなパートナーの隣でミツキは一人、溜め息を漏らさずにはいられなかった。

かくして、海上で行われる客船の饗宴は、穏やかにその幕を上げたのだった。


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