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時刻は二十一時三十分。爆破と記された時間まで、あと一時間を切っていた。
オレンジ色のランタンが揺らめく中、兵太がばちんと両の手を叩く。
倉庫内できゃあきゃあとはしゃいでいたジュペッタ二匹の声が、一瞬にして静まった。
「よし。これまでの情報を共有しながらまとめるぞ。くそ坊主共、その汚え耳かっぽじってよく聞きやがれ」
兵太が船内地図を広げながら声を上げる。
何かよく分からない遊びをしていた黎明と智秋も、地図の周りに集まってくる。
「ねえ陽。おじいさん、絆優が居なくなってから口が悪くなってない……?」
「自分で言ってただろ、新。あいつは悪い大人だ……」
「よーし。陽と新は個別で応戦してもらうつもりだったが、それは却下だ。俺と一緒に行動してもらう」
「えぇーっ!」
「はぁー!?」
分かり易く反応する新と陽を無視して、兵太は黎明と智秋の方へ向き直した。
「黎明、智秋。定時に帰って来たお利口さんのふたりには、特別にとびきり楽しい任務を与えてやる」
「うっひゃあ〜! おじいサン、分かってるぅ〜!」
「とびきりたのしいって、なになに!」
目を輝かせる二匹に向かい、兵太はニヤリと笑ってみせた。
「お前等には、ここに行ってもらう」
兵太が指差し、二匹がそれを追う。
そこには、エンジン・コントロール・ルームと書かれていた。云わば、操縦室である。
「ここにはこの船で一番偉い人間が居る。肩章(けんしょう)っていってな、肩と袖に黒地で金色の四本線の刺繍が入った服を着ている奴だ。いいか、黒地に金色の四本線だ。そいつを叩き起こして驚かせて来い。それがお前等のミッションだ」
二匹はきらきらと目を輝かせた。
「いちばんえらいひとを、おどろかせていいの!?」
「どぉんな風に起こしてあげよっかなあぁ〜? 眠ってる間に宙吊りにしてぇ〜、いっぱいハサミを用意してぇ〜、それからそれからぁ〜〜〜」
はしゃぐ二匹に対し、兵太は目の色を変えずに言った。
「おう、いいぞいいぞ。何が何でも叩き起こせ」
「やったあ〜!」
「おじいサン、ハナシが早くて助かるぅ〜〜〜!」
期待に胸を膨らませる智秋と黎明に、兵太はずい、とあるものを差し出した。
「相手が起きたらまず、これを渡して読ませろ」
それは先刻拾った、ロケット団のメモ帳だった。
表紙には兵太が書いたのか、サインペンで大きく『R』と書かれていた。
「そこから先のお前達の行動は制限しない。ただし、その部屋に居る奴等の邪魔だけは絶対にするなよ? もしこの約束が守れなかったらお前等、冗談抜きでロケット団と同じ牢屋行きだからな」
腕組みをしながら厳しく言い放つ兵太に、ぶーぶーと文句を言うジュペッタ二匹。
まあ、この二匹だってやるべきことはしっかりやってくれるだろう。
そう思いながら、兵太は振り返る。
問題は、こちら側だ。
「陽、新」
「おう」
「はーい」
「いいか。俺達が今からするのは、トレーナーの救助と、爆弾探しだ」