エピローグ(1/1)


***

「あーあ。腹いっぱいだな」

「海辺のレストランなんておしゃれだよね。美味しかったー」

「それにしても結局、何だったんだろうな…………。あの夢は」

「分かんない。でも、すっごくリアルな夢だった」

「リアルっていうか何ていうか。……まじで痛かったっつーか」

「むっくん、ピストルで撃たれてたもんね」

「いや本当にさ……。勘弁してくれ。夢で良かったぜ。全く」

「そうだねー」

「……」

「……」

「なんで俺達みんな、同じ夢をみたんだろうな……。同じ夢で、同じタイミングで起きて……」

「みんなで起きた場所、砂浜だったもんね」

「やべえよな……」

「やばいよねぇー」

「……」

「……」

「……」

「……」

「お、お、お、お客さーん!!」

「…………は?」

「えー……? なんだろ。さっきのレストランの……、コックさん?」

「はあっ、はあっ、はあっ。……きゅ、急に追いかけてきちゃってごめんなさい! あの、忘れ物ですよ! はい、これ! どうぞ!」

「えっ、あ、ありがとう……ございます……? ……なんだこれ」

「あれ。なんか見覚えがあるなー……。船のチケット? ボロボロだし、使用済みみたいだけど」

「あ、あれっ、お客さんのものじゃないんですか……? テーブルの上に置いてありましたよ? 僕それを見て、てっきりお客さんがカクタス号の見学者さんなんだとばかり……」

「は、はあ……?」

「ふぅーん?」

「それ、一昔前にカクタス号で行われた船上パーティのチケットなんですよ。まだ船が現役だった頃の」

「……」

「へぇー」

「えっ。あの、本当に知らないんですか? 大きな事件があって、結構なニュースになったんですけどね……。実は僕、当時その船の司厨員をやってたんですよ。懐かしいなあ……」

「……」

「……」

「だからてっきり、お客さんもその時に乗ってた人なんじゃないかなーって思ったんですよ。あの日は沢山のトレーナーさんを集めたパーティでしたからね。……ああでも、よく考えたらお客さん、若すぎますねえ……。もう、十数年も前の話だっていうのに」

「……」

「……」

「……」

「……」

「あのー」

「えっ。あ、はい」

「カクタス号って、どうやったら行けるんですかー?」

「おい、ゆの。行くつもりかよ」

「だってー。気になるじゃん」

「あ、あはは……。カクタス号なら、この一〇八番水道を真っ直ぐ行った先にありますよ」

「なんだ。近いじゃねえか」

「そうだねー」

「はい。今はカクタス号じゃなくて、『すてられぶね』って呼ばれてるんですけどね」


***

『客船の記憶、茫洋の彼方より』 完


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