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25.内緒(東いづ)
すごく艶やかに笑う人だ、と思っていたはずなのに。
寝起きのぼんやりとした意識の中、穏やかに眠る彼の横顔を訳もなく眺める。陶器のような肌、筋の通った鼻、長いまつげは一本一本丁寧に彫られた彫刻みたいな存在感を持っていて芸術品のようなのに、寝息によって静かに上下する胸は確かに彼が人間であることを主張していた。
人間離れした美しさ、艶やかに笑う大人の男性。そんな印象が覆ったのはいつのことだっただろう。きっかけは思い出せないけれど、それでも確かに何かがあって印象が変わったのだ。だから触れることも恐れ多いほど美しいこの人に触れたいだなんて大それたことを夢見てしまったのだから。
それを受け入れてくれて、こうして一緒に眠ることも増えた。一緒に過ごせば過ごすほど、この美しい大人のことを、大人だとは思えなくなっていった。
彼は思っていたよりもずっと子どもだった。
好ましい相手をからかって楽しんだり、気の向くままに漂ったり、一人になるのが不安だったり……。そんな子どもみたいな彼が、どこかではぐれてしまわないようにと思ったそのときに、堪らなく彼に触れたくなった。それは恋仲となった今でも変わらない。
眠る彼の絹糸のような髪の毛にそっと触れ、指に絡めては解ける様子を見て遊ぶ。本当は手を握りたかったのだがさすがにそれは起こしてしまいそうで憚られた。
もっとも、髪の毛を触るのも失敗だったようだが。寝息のリズムが崩れたことで現状を把握したいづみは髪の毛を触る手を止める。
「……あれ? もうおしまい?」
「そりゃ……こっそり触ってただけなので。寝たふりに気づいちゃったらやめますよ」
「気づかれちゃってたのか、それは残念」
閉じられていた瞼が開いて東が体勢を横向きに直す。真正面から見るとやはりキレイな人だと思うが、同時に力を抜いて笑う顔はやはり起き抜けの子どもみたいだ。そばに人がいることに安心している。
「ねぇ、何を考えてたの?」
「……え?」
「ボクに触りながら何か考え事してるみたいに見えたから」
自分が気づくよりももっと前から寝たふりをしていたのかもしれないな、と気づく。目を閉じていたのにどうしてそんな風に気がついたのかはわからないが、彼にはしっかりと見抜かれていたらしい。キレイな寝顔を見ながら物思いに耽っていたことを。
「――意外と可愛い人だなって思って」
「……ふふっ、そっか」
可愛い、と聞いた瞬間は細めていた目を丸くして、それでもすぐにまた彼は目を細めた。その顔があまりに嬉しそうで、テストで百点を取った子どものように見えてしまい、やはり可愛い人だと思ってしまう。
そして、そんな可愛い人が見せるこの顔は自分が独占してもいいものらしい。
「みんなには内緒だよ?」
悪戯っぽく人差し指を口に押し当てる彼は、やっぱり可愛い子どもみたいな笑顔を見せた。