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27.お留守番(密いづ)
「最近、あんまり眠れてない?」
穏やかな春の日差しが気持ちいい昼下がり。いづみは黙々と取り込んだ洗濯物を畳み、そのそばのソファーで横になった密がそんなことを問いかけると、彼女はぎくりと顔に浮かべながらも慌てて首を振った。
「そ、そんなこと……」
「うそ。だって眠そう。さっきもあくびしてた」
すごく大きな口だった。からかうような口調ではなかったが、いづみにはそれがひどく恥ずかしくて思わず視線を逸らしてしまう。
それが大きな隙となった。それを見逃さずに密は洗濯物を畳むいづみのそばに近寄って、その体勢を思い切り崩させる。腕を引いて倒れた体を膝で受け止める――俗に言う膝枕だ。
「みんな出掛けちゃったから少し休憩してもいいよ」
「だけど……」
「監督も出掛けたらいい」
「どこへ?」
「夢の中」
よしよし、と密がいづみの頭を撫でる。そのリズムが優しく一定で心地いい。窓から差し込むのどやかな陽の温かさも手伝って、まどろむのに時間はかからなかった。とろんと落ち始めた瞼。それが密かには嬉しくて、可愛らしいと思う。
それなのに彼女の瞼は頑固に開こうとしては閉じそうになって、を繰り返す。
その繰り返しの中、力の入らない声でいづみが呟いた。
「……最近ね、嫌な夢を見るの」
「それは怖い夢?」
「うーん……そう、かも……少しだけ、こわい」
質問に答える彼女の呂律が覚束なくなり始めた。あと一息で彼女は夢の中。しかしその行き先を案じているらしい。せっかく眠るなら気持ちいい方がいいに決まっている。
だから密は静かに、ごく小さな声でいづみに語り掛けた。
「俺がここで留守番しててあげる。だから安心して寝てていいよ」
「いやな夢、見たら……起こして、くれるの?」
あと数ミリ。瞼が落ちるまでのその距離を目で測りながら密はそっと囁く。
「留守番やめて迎えに行く」
それじゃあ密さんも寝ちゃうじゃない、と笑ったのを最後に、彼女はとろんと夢の世界へ出掛けて行った。