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54.コンセント(鉄郎+いづみ)

「うーん……さすが鉄郎さん……」

 大道具を担当して貰っている鉄郎さんから連絡を貰って完成したセットを確認に行く。この時間は何回経験してもワクワクする。今回はどんな風に仕上がっているだろう。もちろん打ち合わせはしているのだから大体の感じは掴めているはずなのだけれど、想像と実物を見るのとでは大きく違う。実際にセットを目にしたときの感動と言ったら堪らない。
 今回もさすがの仕上がりだ。出来上がった数々の大道具を眺めているときにふと思い出す。
 そういえば初代の人たちは鉄郎さんと振るうにコミュニケーションが取れていたな、と。
 付き合いが長くなればわかるようになるとは聞いていたが、未だに鉄郎の言わんとすることのすべては理解できない私にはあの光景は少し羨ましかった。私だって鉄郎さんとお話したいのに。
 口惜しく思っていると、背後に人の気配がした。これもだいたいいつものパターンだと振り返る。そこにはやっぱり鉄郎さんがいた。

「鉄郎さん、おはようございます」
「……」

 うん、無言にしか見えない。何も聞こえない。それでもきっと挨拶をしてくれているはずだ。

「今回のセットもすごいですね! 綴くんの脚本の世界がそのまんま飛び出したみたいな」
「……」

 今のはわかった。喜んでくれてる。

「今回もみんなで精一杯頑張るのでまた見に来てくださいね」
「……あぁ」
「……! ふふっ!」

 時々こうやって意思の疎通が取れる。それがコンセントとプラグが噛み合うみたいで癖になるから仕方がない。
 いつか初代の人たちと同じように鉄郎さんとお話ができたらいいな。





花の壁