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64.十月 月(シトロン、三角)
「ンーっと、よし! これでゼンブ! 準備できたヨ!」
「うわぁ! しとろん、ありがとう〜」
台所から賑やかな声が聞こえてつい顔を覗かせる。そこにはボウルいっぱいの米をしゃもじで混ぜる三角と、鰹節やシーチキンなどさまざまな材料を並べるシトロンの姿があった。
「二人してなにしてるの?」
「あ、カントクさん!」
「オー、カントク。見ての通りダヨ!」
「おにぎり作ってるんだ〜!」
「二人とも本当におにぎり好きだね」
楽しそうに笑う二人にほっこりしつつ、彼らの周りに散らかるものを観察する。するとその中に見たことのある台座を見つけていづみは首を傾げた。
「それ、お月見で使うお団子の台だよね?」
「そうダヨ。サンポーって言うネ」
「そうなんだ、よく知ってるね! でもどうして? お月見は終わったよね?」
第一作っているのはおにぎりだし、と訝しげな顔をするいづみ。しかし二人は何のその。大はしゃぎする笑顔はそのままに、計画の全貌を明らかにした。
「あのね、十五夜はまんまるお月さまのまねをしてお団子作るでしょ?」
「ソレなら、三日月の日はサンカクおにぎり食べればいいって思いついたヨ!」
「なるほど……?」
わかるような、わからないような。あまり深く追及したところで解消はされないだろうから、そんな疑問は口にせずいづみは手際よく作られていくおにぎりを眺める。
シトロンが広げた米の上に具材を乗せ、それを三角が完璧なサンカクに握っていく。その連係プレーがあまりに鮮やかで目を奪われた。
「カントクさんも一緒にサンカクお月見する〜?」
「それイイネ! ワキワキするヨ!」
騒ぎながらも一切手は止めない二人は、いづみが来てくれるのなら、とカレーふりかけと取り出した。
なるほど。三日月を見ながら食べるおにぎりもなかなか風流でいいかもしれない。
あっさりカレーの誘惑に負けたいづみは、二人を手伝うべく袖を捲った。