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79.くるり、ぐるり(幸いづ)
くるっと振り返ってみせた彼の姿はそれはそれは可憐で可愛らしくて。女性としての立場がないなと思ってしまうのに、同時に誇らしさのような気持ちもあっていつも不思議な心地になる。
「……カントク?」
「あ、ごめんね。なんでもないよ」
「なんでもないなら呼ばないでよね」
「えへへ、ただ、今日の服も可愛くて素敵だなぁって思って」
褒められて悪い気はしないのか、幸はふふんと笑いながらその場でくるりと一回転して見せた。春らしい軽い素材のスカートがひらり、ふわりと広がって目を奪われる。
「この間店で見かけたヤツが可愛かったから、参考にしてオレに似合うように作ってみたんだ」
「どうりで似合うわけだね! あ、もしかして今週末のお出掛けで着てくれるの?」
そう言えば今週末は幸と買い物に出かける予定になっていた。そのときのおめかし用に作ってくれたのなら嬉しい。
そう思ういづみに対し、幸はうーんと口を尖らせながら質問を返す。
「あんたはどんな格好するつもり?」
「私? えーっとね、この間買ったワンピースにしようかなって」
「じゃあ上着は最近よく着てるあれ?」
「う、うん。そのつもりだけど変かな?」
「いや、あんたのわりにはいいセンスしてるんじゃない?」
言葉はつんつんしているけれど、幸なりの誉め言葉だと言うことはわかっているから嬉しくなる。
彼に見劣りしない可愛い格好をしようと張り切って迎えた週末。
彼はいづみのワンピースと雰囲気の近い、しかしながらパンツスタイルの服を選んで玄関に立っていた。
「え、えぇ!?」
「どう? シミラールック。カッコいいでしょ?」
得意げに笑う彼の顔はいつもの可憐なものとは違って、凛々しくてカッコいい。
くるくると、ぐるぐると、可愛いとカッコいいを行ったり来たりする彼に目が回ってしまいそうだった。