ほのぼの回。以前マロで「二人でオアシスで過ごしてほしい」みたいな感想を頂いて、そのとき続きがなにも思いつかなかった私は「天才だ……」と思って戦慄したのでパクらせてもらいました。すみません。
このシリーズ綺麗に終わらせられる気は全くしないのだけれど、ひと段落しそうなところまでネタはまだあるのでのんびり進めていきたい。
次の話が難産そうなんですよね………(ふわっとしすぎてて)
今回のお話は、オアシスの中でだけ昔の優しい自分でいられるお兄さまはあるのではないだろうか、というところから。
ずっと認められない自分の本当の気持ちも、砂漠で二人きりのときならば少しだけ見せることができるような気がするのです。
もっとウキウキで色々やらせるつもりだったのだけれど、テンポ考えながら削っていったら全部なくなってた。勿体無いからここで供養させてください。
⚪︎オアシス到着時の猫じゃらしマシーンと浮かれお兄さま
テントの中をよく見回すと、なにやら見覚えのあるものが所々にあるのが分かる。
例えば、入り口の手前にあるおもちゃ。昔遊んだ覚えのあるそれは、たしか光を出すものである。回転してしまわないようにそっと触れると、内側の光が手で隠れて影になった。
「懐かしいだろ? 奥のとかはもうどこにも売ってなくて、オークションで中古のを買ったんだ」
「へえ……ああ、自動で動くやつ? 確かに昔うちにあったよね」
「そうそう。動かしてあげようか?」
にやりと彼の口が弧を描く。遠慮しようと口を開くけれど、その前にお兄さまはおもちゃのスイッチを入れた。
ぶんぶんと振られるそれに、つい目がいってしまう。手が出るほどではないけれど。
棒立ちでそれを見つめていると、薄目でこちらを見ていたお兄さまがすっとにやにや笑いを収めた。
じとりとわたしを眺めて、眉は不服そうに八の字に下がる。居心地が悪くなって、なに、と聞いてみると、彼はつまらなそうに口を尖らせた。
「……飛びつかないの?」
「うん……? そわそわはするけど、別に」
「そ、そう……あれ、おかしいな……」
かち、と音が鳴って、機械が止まる。小さい頃みたいに、はしゃいで遊ぶと思っていたのだろうか。
⚪︎カフェでの帰りたくない発言の後に入れたかった会話
苦し紛れにティーカップに口をつける。と、その瞬間に口の中が一瞬冷えて、次に焼けるような痛みが襲った。
「熱…!」
「っ、うわ、あー、大丈夫? ええと、水……」
「ご、ごめん、ありがとう……」
「……焦り過ぎだよ。気をつけないと」
差し出された水のグラスを受け取って、ひりひりと痛む舌を浸す。
温度の刺激に涙が出てきそうだったけれど、先ほどと空気が変わったことに少しだけ安心して、密かにほっと息をついた。丁度よく誤魔化せたのかもしれない。
「……熱かった」
「はは、だろうね。前も紅茶で舌を火傷してなかった? 熱いし苦いし美味しくない、って、拗ねた顔でスコーンを齧ってた」
「それ、いつの話……?」
僕らがよく一緒にいた頃だから、随分前だね。お兄さまが思い出すように目を細める。
そんなことあったっけ、と記憶を辿るけれど、全く身に覚えがなかった。一体私が何歳の頃の話をしているのだろう。
⚪︎最初は夢主視点で書こうと思ってた「大切な場所に入れてもらえて嬉しいよ」のシーン
彼がぴたりと動きを止めた。やっぱり言わない方がよかったかと後悔しながら、話題を逸らすように言葉を重ねる。
「あ、あはは……わたしもこういうところ、作ろうかな。そしたらほら、お兄さまの部屋に行く回数も減るし……」
自慢したかっただけ、が本当ならば、別にわたしだからここに入れてくれたわけではないはずだ。浮かれた一言だと思われていたら恥ずかしい。
顔が熱くなって、手元に視線を落とす。ちらりと彼の様子を伺おうと少しだけ顔の角度を変えると、次の瞬間に視界が反転した。大きな声が出る。
衝撃で閉じていた目を開けると、お兄さまがわたしにもたれかかっていた。重たくて、クッションと挟まれて潰れてしまいそうである。
「うわ、な、なに」
「別に。砂漠は寒いから」
「お兄さまは寒くない、でしょ」
「勿論、きみのためだよ?」
ぎゅう、と彼の腕がわたしの首に回る。雑に抱きしめられて、お兄さまの頬の毛が顔に当たるせいで鼻がむずむずとした。
急になんなのだろう、彼がなにを考えているのか知りたくて顔を確認しようと思ったけれど、首の後ろに回ってしまっているせいでこちらから見ることはできなかった。
「……わざわざ作らなくても、またここに来ればいいよ。連れてきてあげる」
「えっ、いいの」
「いいよ。きみが隠れ家を作って外に一人で長時間居られる方が嫌だ。それって家出と変わらないし」
「ちゃんと帰るよ」
「どうだか。また帰りが遅くなるんだろ?」