天使の輪の音がする

コツ、と、頭上でなにか硬いもの同士が当たる音がする。音の原因である天使の輪は、触れたお互いに呼応するようにゆるやかに色が変化して、強く光ってはそれを差めていくのを繰り返していた。

薄目を開けてそれを眺めていれば、呼吸を共有していた唇が離される。どこ見てんだよ、と湿った口元に彼の指が置かれた。半開きの下唇がぐに、と形を変える。

「輪っか見てた」
「んだよ、珍しく目え開けてるから何かと思った」
「それが分かるってことは、アダムはいつも目開けてるの?」

私は普段閉じるようにしていたから気が付かなかった。一拍間を置いて、上擦った声でアダムが否定する。別に怒ってるわけじゃないのに、ばつが悪そうに目を逸らしていた。

「嘘つかなくても。いつも何見てるの?輪っか?」
「ハア?お前のキス顔に決まってんだろ。してるときに天使の輪見てんのなんてお前ぐらいだ」
「え、だってさ、音したから」

顔が近付いたときに丁度当たってしまったのだろう。プラスチックが当たるような、意外と安っぽい音に釣られて目を開けてしまったのだ。もう少しこう、重たい音がするものだと思っていのだけれど。

「いつも当たってるぞ、気付いてないだけで」
「うそ」

嘘じゃない、ともう一度唇を食まれる。反射的に一瞬目を閉じたものの、すぐに開けて確認してみれば、ぴたりと輪の一番外側同士がくっついていた。ゆったりとした動きのおかげで音こそしないものの、光は同じようにめらめらと揺れている。

「ん、」
「嘘じゃないだろ」
「ほんとだね。輪っかもちゅーしてたんだ」
「オ、なんかエロいな、それ」

八重歯がちらりと見えた。興が乗ってきたのか段々と回数の増える口付けに、合間の呼吸が大きくなる。ぱちんという音と共に消された照明のせいで、さらに強く照らす天使の輪に目が眩んだ。自に当てられたアダムの目が、楽しそうにきゅうと細まる。

「分かるか?暗くても顔見えんのが最高にそそるんだよ」
「まぶしい」
「そんなのすぐ気にしなくなるだろ」

真っ暗闇に呑まれた彼の手が、私の腰に回る。先程よりも少しばかり大きい、こつんという音を鼓腹が拾った。上から降るきんいろを受け入れて、そっと目を閉じる。

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