人を殺したことなんてなかった。
否、人が死ぬ瞬間はよく見てきた。
だから仕事で人を殺すくらい大丈夫だと思っていたのだけれど。
その根拠のない自信は、ただの自分へのごまかしに過ぎなかった。
粘つく赤黒い液体が手に纏わりついている。
まだ生暖かいそれは、たった今自分が手に掛けた相手のもので、ネーヴェは否応なく現実に引き戻された。
9歳の、しかも女の子の姿をしている自分に、敵は全く警戒をしなかった。
だから、殺すのもたやすかった。
吐き気をこらえ、その場にしゃがみこむ。
生理的嫌悪。
人を殺して気持ち悪くなる程度には、自分に倫理観が備わっていたことを恨んだ。
別に自らの快楽のための殺人でない。
相手にも殺される理由があり、殺らなければこちらが殺られていた。
いくらそう自分に言い聞かせてみても、やっぱり気は晴れなかった。
「やっていく自信がなくなった」
そんな弱音を吐くわけにもいかず、アジトに帰った後もただぼんやりと応接室のソファに沈み込んでいた。
こうしていると、周りは任務疲れだと勝手に勘違いしてくれる。
もちろん疲れてはいたが、肉体的疲労ではなく精神的疲労だ。
ここで2年も働いてきて、今更向いていないことに気付くなんて馬鹿馬鹿しい。
『他の隊員と同じように扱ってください』なんて、よく言ったものだ。
2年間仮契約状態でヴァリアーの仕事をしていたネーヴェは、いままで現場に出たことがなかった。
自分の能力を生かせる場は、現場ではないと言うことも重々承知していた。
情報収集をするにしても、わざわざ出向く必要がないことがネーヴェの能力の一番の利点なのだ。
やっていることは暗殺なのだと言葉の上では理解していたが、甘かったようだ。
自分やっていることの意味を、現場に出てようやく直視したような気がする。
そもそもここは暗殺部隊。マフィアなのだ。
自ら望んでこの世界に飛び込んだ人には、殺すのが怖いだとか、理解されない悩みだ。
「やめたい」
「足抜きでもするのかい?」
「! マーモン……」
ぽつりと零した言葉に反応する相手がいたことにネーヴェは驚いたが、相手を見てほっと息をついた。
同僚に聞かれていたら、もっと焦っただろう。
最近任務を貰いによく来るようになったマーモンとは、まだ知り合って日が浅い。
そんな中で、アルコバレーノ相手に距離感を測りかねていた。
理不尽に呪いをかけた張本人、というかその一味であるネーヴェとしては、普通に接するには少々心理的に難があった。
そんなところが、マフィアとして向いていない部分なのだろう。
言い換えれば、他人に対して冷酷になりきれないところだ。
「……足抜きなんて。前借金は清算したもの」
「まさか、本当に剣帝に借金してたとはね」
「不本意だけど……」
つい余計なことまで言ってしまい、ネーヴェは口ごもる。
2年前に嵌められて多額の負借ができた時、テュールに立て替えてもらったのだ。
ただし、体で返す……、ヴァリアーに手を貸すことを条件として。
テュールとの最初の契約では、借金を返しきったら手を切るつもりだった。
しかし、2年がたってそれが叶った今、ネーヴェ自身がここに残ることを望んだ。
ヴァリアー以外に行く宛てもなかったし、切実な話、身分を証明するものも持たない子供の姿では、住む場所一つ調達するのも困難だ。
良くしてもらったことに対して恩義を感じたのもある。
なんだかテュールの思い通りになったみたいで癪だが、自身が決めたことなのだ。
「聞いたよ。正式にヴァリアーに入隊したんだって?」
「耳が早いのね」
「で、もうやめたいのかい?」
ネーヴェは、マーモンの口調がちょっとからかうような調子になったのを聞き逃さなかった。
拗ねたように頬をちょっと膨らませると、ふいっと顔をそむけた。
「自分には向いてないなぁ、って思っただけだもん」
「ふぅん」
聞いてきた割に興味がなさそうなマーモンに、ネーヴェはますますむくれる。
確かに、マーモンにとって、ネーヴェがなにに悩んでいようがどうでもいい話だ。
親身になってほしいとか、思ってはいない。
ただ、なんで自分がこんな弱音を他人に吐いてしまったのかが不可解で、自分に対してイラついていた。
こんなこと、もしも他の相手に言っていたら「甘えたことを言うな」と叱られていたことだろう。
それに比べれば、この反応はマシかもしれない。
そんな風にネーヴェが考えた時、マーモンはなんでもないことのようにこう言った。
「本当に嫌なら辞めればいいじゃないか」
「え?」
「難しく考えすぎなのさ、ネーヴェは」
そう言われて、やめたいと言いつつやめるという選択肢を除外していた自分にはたと気づいた。
やめる勇気や決断力があれば、今頃こんなところでいじけてなどいないだろう。
つまり、ただのかまってちゃんだったのだ。
「マーモンはなんていうか、ビジネスライクだよね」
私もそれくらいはっきり割り切れたらな。
その言葉を言う前に、マーモンは消えてしまっていた。
いつも突然現れて突然いなくなる。気まぐれな人だなぁ。
でも、それくらい気楽に考えていいのかもしれない。
◇◆◇
「あの時のマーモンの言葉がなかったら、まだこの仕事続けてなかったと思うんだ……」
「いい話だわ〜」
前述の昔話をするに至ったのは、興味津々のルッスーリアに聞かれたからだ。
『ネーヴェはなんでそんなにマーモンが好きなの?』と。
オーブンの前でしゃがみこんでマフィンが焼けるのを眺めながら、ネーヴェは語った。
お菓子作りを教えてくれているルッスーリアには、話してもいいかと考えたのだ。
「他の人には言わないでね。特に『人を殺すのが怖い』って悩んでたことなんか、ベルくんにバレたら笑われそうだし」
「もっちろん。お姉ちゃんとのヒ・ミ・ツよぉ〜」
あれから10年以上経った今では、ヴァリアーを抜けようなんて微塵も思わない。
むしろ、もうここが家という感覚に近い。
家だから、なくなったら困るもの。
無期限の謹慎処分を食らっている今、ヴァリアーの立場は苦しい。
独立暗殺部隊といえど、本部との力関係はやっぱりあるのが現実。
たまに非公式の任務がもらえるが、やはりいいように使われているだけだ。
ザンザスが凍らされて2年。
皆、ボスがいつか帰ってくると信じている。
ネーヴェも、それを疑っているわけではなかった。
だから、今をいかに乗り切るかが大切だ。
そんな矢先のことだった。
ネーヴェがいなくなったのは。
◇◆◇
目が覚めた時、ネーヴェは地下室のような場所にいた。
特に拘束されていないのは、きっとその必要がないからだろう。
「あの任務はやっぱり……」
「なぁんだ、気づいてたの? 私が紛れ込ませた依頼だよっ」
只でさえ真っ白な髪と肌なのに、真っ白なワンピースを合わせると、さらに眩しい。
久しぶりに会ったハートが、前と変わらない容姿のまま少し離れたところで佇んでいた。
「なんのため?」
「だぁってぇ、こうでもしないとダイヤ、直に会ってくれないもん」
「私に多額の借金を背負わせて暗殺部隊に売りとばしたような相手に、会いたくないと思うのは当たり前でしょ」
「えー、ダイヤちゃんが自分の生きることになった世界を知れるようにっていうハートの老婆心だしぃ」
相変わらず口調は吐きそうなほど甘ったるい。
「ねぇねぇ、何人くらい殺したぁ?」と無邪気を装って聞いてくる彼女は、やはり苦手だ。
目測でドアまでの距離を測る。
おそらく鍵がかかっているだろう。
他に、逃げ道は……と視線を巡らせる。
どうせこれも読まれているのだろうが。
ハートは、人の心を覗くことにかけては超一流だ。
「その通りっ! ま、逃げられやしないけどねぇ」
「とりあえず今はそうみたい。仕方ない、監禁した理由を聞かせて」
そのダイヤの態度にハートは首を傾げる。
「落ち着いてるなぁ。捕まったのもわざと……なわけないか」
そう小さく呟いた後、漸く用件を口にする。
「うーん、ダイヤに探してほしい人がいてね」
「それはトゥリニセッテ絡みなの?」
「さぁ」
「じゃあ断る」
「この状況でそれが通用するとでもぉ?」
そう言いながら、ハートはさらに疑心を抱いた。
おかしい、なぜこいつはこんなに落ち着いているんだ、と。
「私をテュールに預けたのはハートでしょ。その時にテュールと約束したの。今後はヴァリアーにしか情報を売らないって」
「テュールは死んじゃったんだから、その約束はもうなしでしょうに」
「そういうものなのかな。……それで、その探し人を見つけたら、解放してくれるってこと?」
「簡単には無理だと思うなぁ。もう数百年単位で探してるんだけど見つからなくてさぁ」
「数百年……」
「うん、ハートたちみたいな存在ってこと」
「それは、仲間なの? それとも敵?」
「……」
ハートは、その質問には答えず、いわくありげに微笑んだ。
これ以上の追求は許さないという意だ。
ネーヴェはこれ以上突っ込んで聞くのも面倒だと判断し、重い息を吐いた。
「わかった。私は、依頼人の事情とか、関係とかに深入りしたりしないもの」
「プロのプライドなんでしょうけど、好奇心は隠せないわよぉ。ハートを誰だと思ってるの?」
「じゃあ認めるけど、おしゃぶりに関係していることなら、私にも教えてくれていいと思う」
「ダイヤには関係ない」
ハートには結局なにも教える気はないのだ。
ネーヴェが黙ったことを確認すると、ハートは言葉を紡いだ。
「探して欲しい相手っていうのは――――」
◇◆◇
ネーヴェが帰らなくなって五日目。
こんなことは今までなかったので、幹部たちはネーヴェが残していたメモを元に緊急会議を行っていた。
“もしかしたらしばらく帰らないかもしれません。ネーヴェ”
「たしかにネーヴェの筆跡だね」
「“帰れない”んじゃなくて“帰らない”って書いてあるわよぉ」
「これで、奴が自分の意志で消えたことは明白だ」
「こんな時に、どこでなにやってんだぁ? アイツ」
「んもぅ、女の子にはいろいろあるのよ。待ってればそのうち帰ってくるわよ」
「う゛おぃマーモン、粘写はやってみたのかぁ」
「もちろんさ」
ぺらり、とみせた紙に“error”の文字。
「ししっ。マーモンにもわかんねーとか、お手上げじゃん」
「ネーヴェ自身が居場所を知られないようにしているのは間違いないね。僕と同じ、特殊な人間だからできることさ」
◇◆◇
探し人の名前を聞いたネーヴェは、ようやく帰れると思って気を緩めた。
「分かった。用件はそれだけ?」
「ええ」
「……帰る」
「まさか。見つけるまで帰さないわよぉ」
「はぁ?」
ハートの言葉に、ネーヴェは怒りのこもった声を出す。
そして、続けてこう言った。
「逃げたと思われたらいろいろ不味いんだってば……」
マフィアは、そう簡単に抜けることが許されない世界。
あんまり帰りが遅いと、裏切者と言われて文字通りぶっ殺されかねない。
仲間だろうが容赦しないのがヴァリアーだ。
「ええー、そんなのハートには関係ないしぃ」
「監禁までする必要があることなの?」
「正直言ってまだ貴方の事、信用してないから」
「心が読めるのに?」
「口に出す言葉は選んだ方がいいわ。馬鹿に見えるもの」
その言葉を聞いたネーヴェは、口にこそ出さなかったが「失礼な」という顔をした。
ハートはそれを見て、あきれたような表情をする。
「いつまでも閉じ込めとくわけじゃないわよ。――――だって、見つけられなかったら殺すもの」
その言葉に偽りがないのは、誰が聞いても明らかだった。
それから一週間が経つ。
言われた人物を探そうとしてみたが、一向に見つかる気配がない。
今迄こんなことはなかったので、ネーヴェはその存在自体を疑い始めていた。
案外、私を殺すための口実だったりして。
「さっさとこんなとこ出なきゃ」
ざっと霊体で周囲を窺ってみれば、ここはどうやらカジノの地下のようだ。
この部屋から出たところで、全ての人の目から逃れつつ外へ出るのは至難の業だろう。
そもそも、この部屋の鍵を開けることも一筋縄じゃいかなそうだし。
ハートは食事を持ってくる時だけ、この部屋の中に現れる。
その時に行動を起こすしか選択肢はなさそうだ。
普通にフォークを出してくるあたり、全く警戒されてない。
いや、それだけネーヴェに逃げられない自信があるのか。
チャンスは一回きり。心を読ませる前に、終わらせる。
情報はノイズがあると、読み取りにくい。それは、感情においても同じ。
自分で太ももをフォークでズタズタに抉り、感情を痛みで塗りつぶした。
これで、対等だ。
「ここから出してくれなきゃ、迷いなく刺す」
ハートの頸動脈にフォークの切っ先を突き付けて、そう言い放つ。
この状況は、ネーヴェが伊達に暗殺部隊にいるわけではないことを裏付けていた。
「驚いた。感情が痛み一色になるくらい自傷するなんて、普通思いついても出来ないもの」
そう言ったハートは、ネーヴェに生殺与奪を握られているとは思えないほど落ち着いていた。
ネーヴェの足からどろりと血が伝い、足元に血溜まりを作っていく。
「つまりぃ、ダイヤはそこまでして、ヴァリアーに帰りたいわけだ」
そう指摘され、どきりと心臓が音を立てる。
そこまでして帰りたい場所?
そういうわけじゃない。
「きゃは、もう絆されてやんのぉ? おまえわかってる? そのおまえが想ってるそのアルコバレーノってぇ、私たちによって選ばれたただの人柱なんだよぉ」
「黙れ。そんなこと、貴方に言われなくてもわかってる」
一番ハートとの会話で出されたくなかった人物を引き合いに出され、ネーヴェは語気を荒げる。
冷静さを欠くのはだめだ。殊に、ハートとの交渉の場においては。
そう自分に言い聞かせるが、もう遅かったようだ。
「……わぁ、珍しいキレ方してるわねぇ。まぁ、とりあえずその――――本気の殺気を取り下げてくれる?」
図星を指され、さらに後に引けない気持ちになる。
そんなネーヴェに、ハートはそっとため息を吐いた。
「あーぁ、忠告はしたから、ねっ」
「!」
ハートの力の本懐は、相手の心を読むことではなく、操ることだ。
たった一度動揺を見せてしまうと、あっという間に絡めとられる。
この場合、ネーヴェの中の増幅された感情は“自殺願望”だった。
「あははっ、私に逆らうからよぅ?」
楽しそうに、鈴を転がすような声で白い少女が笑った。
「……もう私を殺していいの?」
対するネーヴェは、自らの喉を掻っ切ろうとする自分の手を紙一重のところで押しとどめながら、そう問うた。
「ダイアこそ……、まぁじで殺されるかと思ったし、一瞬本気で殺る気だったでしょ」
「……殺されるくらいなら殺す方がマシ」
「へぇ、凄まじい生への執着心ねぇ」
いままで、この自死の衝動に耐えられたものはそういない。
大抵の者は、次の瞬間には手に持っていた拳銃で自らの頭をぶち抜いた。
夜の炎まで灯したネーヴェの生きる覚悟は、そう簡単に潰えないということだろう。
生かすがいいか、殺すがいいか、そうハートが思案したとき、信じられない情報が舞い込んだ。
突然身体の呪縛が解け、ネーヴェは反動で床に座り込む。血を失いすぎたのか、足に力が入らない。
ハートはというと、目を見開いてその場に立ち尽くしていた。
「……藍色のおしゃぶりの気配が、消えた?」
「?」
「どういうことよ」
すごい勢いでハートに掴みかかられ、ネーヴェは困惑する。
「なぜ私に聞くの」
「こんな事って、こんな事って、いままで一度も……ああ、チェッカーフェイスさま、ハートはどうすればよろしいのですか」
そうぶつぶつ呟くハートの目は、正気を欠いていた。
丁度ネーヴェが藍色のおしゃぶりの持ち主の傍を離れた、いや、ハート自身が引き離した最悪のタイミングでの異例の事態だ。
自分の仕出かしてしまった失態にハートは取り乱したのだ。
それを見て、ネーヴェは全て計算通りとでもいうように、口元に微笑を浮かべる。
さっきまでの余裕のない様子は微塵も見られない。
「だから、私をバイパーの傍に置いといたほうがよかったでしょ?」
「おまえ、まさか、この事態を予測していたっていうの?」
ハートの瞳が揺れる。
「いいえ、全く」
「本当にそうみたいね……、たまたまか……」
そうハートは言って、親指の爪をギッと噛んだ。
ネーヴェは、向かわせた霊体分身の視覚を通して確認すると、その真実を伝えた。
「大丈夫。持ち主は死んでないし、おしゃぶりも壊されてはいない。おしゃぶりの力を封じる方法を見つけただけ」
「嘘よ! そんなことした奴、いままで一人も……!」
「それがバイパー、いいえ、マーモンだもの」
ネーヴェは熱に浮かされたような瞳でそう言った。
「……興が覚めた。そんなに帰りたいなら帰ればいいじゃない!」
そうキレて部屋から出ていったハートに、ネーヴェはキレたいのはこっちだと思った。
結局ハートは何がしたかったの?
開け放たれたドアに向かって、ネーヴェはそう誰に言うでもなくひとりごちた。
◇◆◇
「皆心配してたのよぉ〜」
「メモ見てなかったの?」
不在にしたのは一週間のはず。待ち構えていた幹部たちとルッスーリアの言葉に、ネーヴェはそう言って首を傾げた。
「ネーヴェは任務でも一日以上部屋を空けたことがないくらいの引きこもりだからね」
「せめてインドアとか、もっとオブラートに言ってほしい……」
マーモンの言葉に、拗ねたようにそう呟く。
「ところで、この怪我はどうしたんだい?」
油断した隙にぺらりと隊服の裾を捲られて、隠していた太ももの傷が晒された。
「う゛おぉい、こりゃ、誰にやられたぁ」
「見た目ほど酷くないから大丈夫だよ。このくらい全然」
バレると思っていなかったために、慌てて首を振る。
強がって見せたが、正直歩くたびに気が遠のくような激痛を感じていた。
でも、痛いなんて甘えたこと、言えるはずがない。
第一、自分でやったんだし。
「小さな怪我が命とりっていうじゃない。ましてやこの傷だし、細菌でも入ると大変よ〜」
「さっさと看てもらえ!」
「わかった」
口うるさいが優しいルッスーリアとスクアーロにそう言われ、追い立てられるように医務室に向かったのだった。
一人になって、ふと頭を過るのはハートの言葉。
『探してほしいのは――――透明のおしゃぶりの赤ん坊』
おしゃぶり……ということはアルコバレーノなのだろうか。
しかし、そんな色はなかったはず。
ネーヴェは、ハートが探しているというその相手の名を、確かめるように繰り返した。
「バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン」