盾パの話



「へいそこの美人ウサギちゃん。私と一緒にカレーパしない〜?」
「ナンパしないで地図見てね」
「つれない男だね〜ねーリィリルちゃん」
「お姉様、お昼はさっき食べましてよ?」
「マジレスつらみ…じゃあ、ここがどこか分かるまでお茶会でもしよ!」

スマホロトムと共に頭をひねるカロンを尻目に、コアラはバッグの中からキャンプ道具を引っ張り出してリィリルと共に設営の準備を始めていた。

ジムチャレンジに挑戦中のコアラたちは、光るキノコで照らされたルミナスメイズの森の中で、所謂迷子になっていた。
光るキノコで遊んだり、ベロバーというポケモンに脅かされたり、見たことの無いポケモンを追いかけたりと、幼い子供のように森の中を駆け回っていると、いつの間にか森の奥深くに来ていたようだ。

「お茶会、素敵だね!リーゼも混ぜて欲しいなぁ!」
「うぉ〜〜〜わ!あら!可愛らしいお嬢さん、一体どこから?」

突如現れた愛らしい少女。水の入った水筒をがっつり落としながらコアラは謎の少女に問いかける。水筒はコアラの足に落ちる前に、リィリルのエスパーパワーにて無事回収された。

「えぇ〜気になる〜?」
「えー超気になる〜〜こんな森の中で出会うなんて運命感じちゃう〜どこ住み?ポケスタやってる?ID交換しない?」
「ナンパしないの!」
「フィルル……」

パコンッとカロンに叩かれ、引きずられるようにしてコアラは謎の少女から引き離される。
リィリルは擬人化を解き、コアラを守るように前へ出る。リィリルはこの森の出身であり、このような森の奥深くに人間がいる事はほとんど無いと知っていた。
迷っているコアラ達を道案内しなかったのは、旅を楽しんでいたからである。

「そんなに警戒しなくても、危害を与えるつもりは無いよ〜」
「それを信じろって?ふざけているのかな?」
「ふふっ迷っていたようだから、手を貸してあげようかな〜っと思って近づいただけだよ」

謎の少女はくすくすと笑みを零し、長く伸びた髪を細い陶器のような指に巻き付ける。

「え〜めっちゃいい子じゃん」
「フィルフォウ!」

楽観的なコアラに素早くリィリルからの手刀が入る。しかし威力はほぼ無く、ブリムオンの頭から生えた大きな手が、コアラの金色に染まった頭をふわふわと撫でるだけだった。

「リィリル…あまり甘やかさないで」
「フィール」
「いや、それは…そうだけど」

短い鳴き声とニコリと笑顔を見せるだけのリィリルにカロンは頭を抱え重いため息をつく。人の姿をしているとはいえ、ポケモンはポケモン、擬人化した状態であっても原型のポケモンとも話が出来るようだ。
頭上で繰り広げられた中身の分からない会話に小さく感心していたコアラは、その隙にカロンに引き寄せられた腕を解き、謎の少女へと手を振った。

「ヘイ!そこのかわい子ちゃん。私と一緒にお茶しない〜?」
「するする〜!」

「ナンパするな!!」

キャッキャと楽しげに笑い合う後ろで、カロンの声が虚しくも暗い森の中に響いていった。





「ねえ!もう遅いから、リーゼのお家にお泊まりしようよ!」
「は!?」

相棒たちの抵抗も虚しく、謎の少女との優雅なお茶会が繰り広げられ、そろそろ日も沈むはずの時間帯。ルミナスメイズの森は常に薄暗く、時間の概念がないようにも見えるが、スマホロトムはしっかりと日の入り時刻を表していた。
そんな時、リーゼと自称する少女の突飛な提案に、カロンの素っ頓狂な声が森の中に響く。

「朝になったら町への道を教えてあげるしさ!」
「いいね!」
「お断りします!」
「こういうノリのお姉様は止められないわ…」

危機感の無いコアラに変わり、カロンは全力で拒否を訴えるが、もう既に諦めた様子のリィリルに肩を叩かれ、重いため息を吐いた。

「コアラちゃ、」
「お姉様。一つだけ、覚えていて。この森の者を信じすぎないで」

コアラに声をかけようとしたカロンを押しのけ、リィリルはコアラに語りかける。パチリと瞬きをしたコアラは、少し考え納得したように鼻歌を歌いながらスマホロトムと戯れる少女を見る。そして、ふっと笑みを零す。

「ほっとけないんだよ」
「「?」」

要領を得ないコアラの言葉に2人は揃って首を傾げたが、コアラは気にせず2人の頭を撫でた。

「悪い子じゃないし、大丈夫でしょ」

なんの根拠もない自信。手放しで信じられるものでは無いが、自らの主の言うことに、2人はそれ以上何も言えず、少女に駆け寄って行ったコアラの後ろを大人しく着いていくのだった。




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