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第七師団の団員の日々の過ごし方といえば、食べる、寝る、遊ぶ、飲む、戦うであるが下っ端の私は違う。食べる、飲む、訓練である。翌日私は背中を丸めながらトレーニングルームへと向かった。団長が誰かに言いふらすとは思えないが、今まで誰にもバレずにやってきただけにその衝撃は大きい。しかも痛い一言まで貰ってしまったのだ。

「俺、お前のこと本当に嫌いだよ」

それは第七師団の団長としてではなく、一人の人間としての言葉でもあったのだろう。つまり私は、戦闘ができないから疎まれているのではなく人間として嫌われている。そんな相手とこれからやっていかなければいけないのだ。思うだけでため息が出た。異動願いを出そうにも夜兎は問答無用で第七師団と決まっているし、今更他の就職先もないだろう。職歴が宇宙海賊しかない女を誰が雇いたいというのだ。

そもそも、と考えて私は一瞬立ち止まる。夜兎は宇宙中で迫害されているではないか。ここにいると忘れてしまいそうになるが、私達は忌み嫌われた一族だ。私がどうやって春雨の第七師団まで辿り着いたのか忘れたわけではない。つまるところ、私はここでやっていくしかない。
私は気持ちを新たにトレーニングルームの扉を開けた。


それから戦闘の任務が少なくなったのには何か理由があるのだろうか。あの戦闘狂の団長は面白そうな戦闘ならば次々に任務を入れる。私のような体力がない雑魚はすぐにへばってしまうほどに。

団長も春雨上層部との会議があったりして暇ではないだろうし、私には有難い休みだ。「つまんねェな」と言いながら酒を飲む団員の後ろを忍び足で通りながらトレーニングルームに通うという日々が続いた。強くなれている実感はないけれど、塵も積もれば山となるだ。

汗をかいてトレーニングルームから戻ってきたある日、船の共同スペースが歓声に満ちていることに気付いた。

「次の任務が決まったってよ! それもかなり強い相手らしい」
「やっとかよ! 俺は団長は何をやってるんだと思ってたね」
「早く戦いてえって今から体が疼くぜ」

その盛り上がりに、私の安寧の日々は終わったことを知る。いや、トレーニングルームに通っていることを団長に知られてあんなことを言われた時点で安寧の日々などないのだが、それでも戦闘があるのとないのでは私の心の持ちようは大きく変わる。戦闘が始まれば、私はまたこの団のお荷物だ。そして無様な姿を晒して、団長にさらに嫌われるのがオチなのだ。