▼ ▲ ▼

※捏造あり、謎時空
※夢主は冴の彼女

 ミヒャエル・カイザーの趣味は新星潰しだ。流星のごとくスターダムを駆け上ってきた冴も、その対象なのだろうと思った。事実、カイザーは冴に宣戦布告していた。その時、一緒にいた私に向けてちらりと視線を寄越した。まるで私も宣戦布告の対象に入っているかのように。

 後からカイザーの性格を知って、カイザーの性格が悪いのは何もサッカーに関することだけではないとわかった。カイザーは恋愛面でも素行が悪い。気持ちが伴っていない以上、「恋愛」と呼ぶべきではないかもしれないが。

 冴は私を守ろうとはしなかった。決着はサッカーでつける、そう言いたげにサッカーに専念した。その間私は冴を信じることしかできなかった。カイザーと顔を合わせることもあったが、意味ありげな視線を寄越すのみでちょっかいを出されることはなかった。それは、冴とカイザーの間にひと悶着があった後でも同じだった。

「冴を潰すって言ってたから私に何かしてくるのかと思ってた」

 これはカイザーが意外に紳士だということへの誉め言葉である。だから不興を買って手を出されることはないだろうと判断し、私はカイザーに話しかけた。カイザーはスタジアムの通路で立ち止まった。まだ試合モードが抜けていないように鋭い目をしていたが、私を見ると薄ら笑いを浮かべた。

「糸師冴にとってお前がサッカー以上の存在ならそうしただろうな。だがあいつをサッカー選手として再起不能にするにはサッカーで潰した方がいい。だからお前に手を出すなら俺がお前に本気で惚れた時だ」

 私は冴にとって大きな存在ではないと、けなされているのだろうか。それにしては、なんだか口説かれているようにも感じる。以前のは冴に対しての宣戦布告だったが、これはまるで私への宣戦布告だ。

「俺は安くないぞ」

 カイザーは最後に流し目を残して、通路を奥へと進んで行った。カイザーに口説かれたい、と思っているわけではない。でもカイザーが恋愛にもそれなりに誠実であると知ってしまったことに、小さな高揚があった。第一印象が最悪だっただけにギャップ萌えというやつだろう。このことは冴に言えないな、と思いながら私もスタジアムを後にした。