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 聖臣と恋人として迎える二回目の誕生日。決してネタ切れしたわけではなく、私は世間のテンプレートにあやかりたいと思った。

「誕生日おめでとう聖臣! プレゼントは私だよ」

 登場早々、赤のリボンで結んだ両手首を差し出す。今日は学校のある平日だが、部活までの間時間を貰って二人で会っている。流石に空き教室で致すわけにはいかないが、これは予約分ということだ。

 案の定と言うべきか、聖臣は私のプレゼントにいい顔をしなかった。

「待て、そのリボンは誰に巻いてもらった」
「古森くんだけど」

 てっきり「そういうプレゼントに頼るな」と言われるものと思いきや、準備が気になるらしい。プレゼント自体はいいのか、と思いつつ聖臣の話を聞く。聖臣は彼らしいとも言えるしかめっ面で私を見下ろした。

「何で人の誕生日に浮気してんだよ」
「浮気に入らないでしょ!」
「拘束プレイだぞ?」

 私はこのリボンを巻いた時のことを思い出してみる。私から頼んだわけではなく、古森くんが面白がってやってくれたのだ。古森くんがいなければ、リボンは首にでも巻かれていたかもしれない。いずれにせよ肌に触れたのはほんの数度で、聖臣が触れる面積に比べればわずかなものだ。

「結んだ後のプレイは聖臣がやるんだからいいでしょ」

 私が唇を尖らせると、「言ったな?」と聖臣が眼光を鋭くさせた。自分でやっておいてなんだが、聖臣は誕生日プレゼントに彼女を貰うとか、拘束プレイだとかそういうことに興味があると思わなかった。これは言わば聖臣をからかうためのネタなのだ。

「聖臣ってそういうの興味あったんだ」

 私は聖臣をからかい続けているのか、それとも聖臣が醸し出す不穏な空気から逃げたいのか。聖臣はその大きな手で私の頭を掴み言った。

「俺はお前に興味があるんだ」

 頭に手を載せるならせめて撫でればいいものを、掴んでいるから余計怖さが増す。聖臣は私という彼女ができて、自分が女子に恐れられる巨人だということを忘れていると思う。でもまあ、私だからいいのだけど。私は結ばれた両手を、聖臣の胸板に置いた。