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「俺のどこが好き?」
 初めてそう聞かれた時、私は面食らったものだ。何しろ私と玲王は、数度話したことがあるだけのクラスメイトに過ぎなかった。それを一方的に好かれていると決めつけられるということは、余程自分に自信があるのだろうと思った。私はクラスメイトとして玲王が好きだから、あながち間違いではない。なんとなく試されているような気持ちになりながら、私は思いつく限り並べた。

「勉強もスポーツもできるところ、人当たりがいいところ、友達が多いところ……」

 一通り述べると、玲王は「ありがとな!」と言ってどこかへ行ってしまった。今のは、何だったのだろう。クラスメイトからの人気を測る抜き打ちテストのようなものだろうか。きっと私が何も言わなくても気にしないだろうに、単なる暇つぶしにすぎないのだろう。

 それから玲王に同じ質問をされたのは、秋が深まってからだった。

「俺のどこが好き?」

 言葉こそ同じであるが、玲王はやつれていた。ブルーロックという施設に行ってから、玲王の身に何かあったのだと思った。先日放送された試合で、玲王はベンチスタートだった。

「どうして」

 私が聞くと、玲王は弱々しく笑った。

「前に聞いた時いいこと言ってくれたからさ」

 今、玲王は自信を喪失していて、私でそれを補おうとしているのだ。私が選ばれたことに嬉しくなったけれど、今はそんなことを言っている場合ではなかった。

「いろんなことができるところも好きだけど、私は玲王だから好きなんだよ」

 何かができるから好きなのではない。何もできなくなったって、玲王自身を好きでいる人もいる。

 玲王はきょとんとした後、「ありがとな」と笑った。玲王らしい快活さが垣間見えた笑みだった。私は自分の好きの意味が二重になっていることに気付いたけれど、今は言わないでおいた。言ったらきっと、玲王を困らせてしまうから。今の玲王はいつものように女の子を対処する強さがあるように見えなかった。ましてや、私は弱っているところを助けた人間なのだ。弱みに付け込むようなことはしたくない。玲王も気付いていたかもしれないが、知らないふりを貫いていた。私は御影玲王のこれほど不器用な姿を初めて見た。弱みを見せてくれるところが、愛おしいと思った。