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玲王と歩いているところを、週刊誌に撮られた。その日は凪や他のメンバーもいたし、私達は決してそういう仲ではなかったのだが、結果としてそれは玲王を奮い立たせてしまった。サッカーでも名を馳せた万能の御曹司が、一般女性を選んだ。私の写真映りは幸運にと言うべきか、あまり洒落た女性に見えるものではなかった。まるでハーレクイン小説のような展開に世間は湧き上がった。玲王は御影コーポレーションの株が上がったことが何より嬉しいようだった。玲王が見ているのは私より株のチャート画面なのではないか、と思ってしまうくらいに。
「次は映画館デートだ! また撮られるぞ!」
玲王じゃ嬉々として私を連れまわした。そのたびに写真を撮られ、私達は順調なカップルとして世間に見られていた。すべて玲王の計画通りだ。私なんぞと付き合っている、ということを除いて。
「株のためって言っても、付き合うのが私でよかったの?」
自虐や卑下は玲王の好むところではない。そう知りつつも、私は尋ねずにはいられなかった。玲王はようやくタブレットの画面から顔を上げる。そこにはやはり、株のチャート画面が映っていた。
「別にいーよ。名前のこと元から好きだし」
歯がゆいような、くすぐったいような思いがする。玲王の言っている好きは、多分友達としての好きだろう。けれど目的のためなら、それを恋愛の好きへ変えられてしまうくらい玲王は器用なのだ。
「キスとかできるの?」
精一杯の勇気を出して私は尋ねた。私だって、玲王に何も思っていなければ毎回のデートに付き合ったりしない。玲王は目を丸くし、「していいのか?」と言った。
「名前が俺のこと本当に好きになるまではしねぇって思ってたけど、していいならする」
玲王は私に手を伸ばした。玲王は多分、本気で私を好きなわけではない。私もまた、百パーセント恋愛の好きだとは言いづらい。だけど私達は付き合っていて、そういうことをしている。まだ若葉のような私達の想いは、その内育っていくのだろう。照れくさいような違和感を抱えつつ、私達はキスをした。
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