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 選手と関係者が招かれるパーティー会場に着くと、カイザーの分だけウェルカムドリンクがなかった。何かの手違いだろうかと思うが、カイザーもその他の選手も平然としている。とりあえずカイザーの分を貰ってこようと歩き出した時、散歩中の犬を止めるがごとくカイザーに首根っこを掴まれた。

「やめておけ。俺は方々から恨みを買ってるからな」
「恨みを買うのをやめたらいいと思うんだけど」

 カイザーの分だけドリンクがなかった理由は、大体理解した。チームメイトが平気でいる理由も。要するに、カイザーはその身勝手な振る舞いからチーム内外を問わず嫌われているのだろう。それでもパスが来るのは、カイザーのサッカーの能力が信頼されている証だ。ある意味凄いと思うが、そもそも嫌われないように人間と付き合えばいい話だ。私は至って普通のことを言ったつもりだったが、カイザーは一笑にふした。

「それは無理だ。だが安心しろ。お前には手を出させない」
「何でカイザーの恨みが私に……?」

 何故、そこで私が出てくるのだろう。聞いてみてもカイザーは綺麗な顔をして笑っているのみだ。カイザーから答えを聞くのは無理だと判断して、パーティー会場の中に入り込む。そのパーティーにて、私は知ってしまった。カイザーが私を恋人であると吹聴していること。私に許可なくやるなという話だし、嬉しさより慄く感覚の方が強い。それは嫌われ者のカイザーの恋人になっているからではなく、カイザーが私をそんなふうに捉えていたと知ったからだ。カイザーはどういうつもりで私を恋人だと言ったのだろう。

 聞いてみたいけれど、そういう話をしたら男女の雰囲気になりそうで聞けない。私はカイザーの美しい顔に滅法弱かった。それを計算してやっているのだとしたら、随分上手だ。