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 昼休みは弁当を食べる生徒で和気あいあいとしている。中には購買で昼食を購入する生徒もおり、クラスの誰よりも食い意地が張っている治に関しては弁当を食べた後購買でパンを食べるという徹底ぶりだ。今日の治は何のパンを買っているか、ということが私達の小さな話題になりつつある。今日はどうだろうと治を見れば、治は狛犬のように微動だにしないまま自席に座っていた。

「何あれ、つまらんな」

 私達のグループはそれ以上治に言及することなく昼食を終えた。

 本鈴五分前、私は後ろの席の治に話しかける。

「今日の昼休み、どしたん?」

 多分、私達のグループで一番治と仲が良いのは私だと思う。私の友達は治が何のパンを食べているかを今日の運試しくらいにしか思っていないけれど、何も食べていなければ私は心配になる。

 治は真剣なのか何も考えていいないのか、無表情を貫いていた。

「彼女とデートするために金貯めてんねん。俺はもう購買行かん」
「だからって昼ごはんまで抜くことないと思うけど……」
「弁当は一限終わったら食ったで?」

 一応、一般的な食事量はとっているらしい。それにしても、部活生である治が彼女のためにお昼を削ってまでもお金を貯める姿に感動した。

「同情するなら飯をくれ」

 そう言われてしまい、私は後で食べようと思っていた弁当のデザートをあげた。その瞬間に治の表情が輝くのを見たら、胸がしめつけられる思いがした。この人には彼女がいるのに。

「本当に彼女には秘密にしてよね! 彼女のためだからね!」

 私は一体、何をしているのだろう。弁当を作っているのは自分だからと、治の分まで弁当を作って寄越しているのだ。数日後から明らかに手作りと思われる弁当を食べている治を見て、私のグループの友達は興味をなくした。あれ絶対彼女だよ、という言葉を残して。私はそれを聞きながら。消え入りたい気持ちになっていた。彼女がいる人に、一体どうして彼女まがいのことをしているのだろう。それでも、「ありがとさん」と笑顔を見せる治の姿に私はとても弱いのだ。

 私がこれほど思案している一方で、治は何も考えてなどいなかった。私が弁当を作って数日経つ頃には、治は彼女と別れていたのだ。私の心配は杞憂なのだが、この時の私はまだそのことを知らない。まったく、不平等なものである。